














合同研究チームが、量子コンピューターでシミュレーションされたものとして最大規模となる12,635原子のタンパク質をモデル化
量子手法と古典手法の連携によって実現したこの成果は、ライフサイエンス研究における量子中心のスーパーコンピューティングの可能性を拡大
2026年09月9日

【米国オハイオ州クリーブランド、日本・和光市、米国ニューヨーク州ヨークタウンハイツ - 2026年9月9日(現地時間)発】
クリーブランド・クリニック、理化学研究所(理研)、IBMの多分野にわたるチームは、量子コンピューターでモデル化されたものとして過去最大となる、生物学的に重要な12,635原子規模の分子シミュレーションにより、Association for Computing Machinery(ACM)の「Gordon Bell Prize 2026」の最終候補に選出されました。この成果を達成するため、チームは、量子中心のスーパーコンピューティングと呼ばれる枠組みのもと、量子コンピューティングと古典コンピューティングそれぞれの手法の強みを組み合わせました。
ACM Gordon Bell Prizeは、ハイパフォーマンス・コンピューティングにおける優れた成果を表彰するもので、同分野で最も権威ある賞の1つです。2026年の受賞者は、2026年11月15日から20日までシカゴで開催される「International Conference for High-Performance Computing, Networking, Storage, and Analysis」(SC26)で発表されます。
本プロジェクトは、創薬における計算の改善方法を探るチームの研究を起点としています。その実現には、2つの基本的な課題があります。第1に、生物学的過程が進行する中での原子の動きをモデル化すること、第2に、それらのエネルギーを正確に計算することです。特に第2の課題は、量子力学の法則に基づいて動作する量子コンピューターに適しています。
2026年5月に発表された研究で、チームは、米国のクリーブランド・クリニックと日本の理研に設置されたIBM Quantum Heronプロセッサーを搭載した量子コンピューターを使用し、2つの大型タンパク質複合体の電子構造を計算しました。計算は、世界有数のスーパーコンピューターである理研の「富岳」および東京大学と筑波大学が運用する「Miyabi-G」と連携して実行されました。量子コンピューターは、問題の一部で最大94量子ビットを使用し、約6,000回の量子演算を実行しました。これは、計算の精度と成功に不可欠でした。「富岳」と「Miyabi-G」は、計算結果を統合し、各分子の全体像を再構築するために活用されました。
この成果は、チームの革新的なアプローチと、量子コンピューティングの急速な成熟を示しています。IBMと理研が開発し、「Science Advances」の表紙にも掲載されたサンプルベース量子対角化法と、クリーブランド・クリニックが今回の課題に合わせて適用した埋め込み波動関数法を組み合わせることで、チームは、量子コンピューターを用いたものとして初めて知られる303原子のタンパク質のシミュレーションを報告しました。それから1年足らずで、チームは手法の規模を約40倍に拡張するとともに、精度を210倍向上させました。9月に新たに発表された最新の成果では、この研究をさらに進展させました。特に、分子系がどの程度強く結合しているかを示し、他の系とどのように相互作用するかを予測するために使用できる結合エネルギーの計算精度を、さらに向上させました。
さらにチームは、理研の最新システムであるJHPC-quantum GPUスーパーコンピューター「ROQUO(ろっこう)」において、複雑な手作業やデータ転送を必要としない方法でワークフローを検証しました。これは、より迅速で利用しやすい研究につながるものです。CPU、GPU、QPUを統合して連携させることで、チームは手作業による処理を最小限に抑え、エラーをさらに削減しました。これは、複雑な科学的課題に対して古典コンピューティングと量子コンピューティングが連携して機能する方法を示す初期の実証です。
これらの最新成果は、先の成果と合わせて、自動化されたワークフローによって、結合エネルギーの計算精度と、解を得るまでの時間の双方で進展が続いていることを示しています。
チームが開発した量子・古典技術は、分子系の化学的特性を高い精度で直接表現するために必要な計算負荷を引き続き軽減し、この分野における量子中心のスーパーコンピューティングの可能性を広げています。本研究は、分子系の計算精度をさらに向上させる道筋を示すとともに、医薬品がタンパク質標的とどのように相互作用するかを研究者がより的確に予測できるよう支援するための一歩となります。
研究チームは、クリーブランド・クリニックのケネス・マーツ・ジュニア(Kenneth Merz Jr)、アキル・シャジャン(Akhil Shajan)、ダニル・カリアキン(Danil Kaliakin)、ファンチュン・リャン(Fangchun Liang)、理化学研究所 計算科学研究センターの大塚雄一、白川知功、ルーカス・ブロアーズ(Lukas Broers)、ハン・シュ(Han Xu)、辻美和子、佐藤三久、柚木清司、IBMの脇坂遼、川島雪生、土井淳、高橋ひとみ、井床利生、堀井洋、サディアス・ペレグリーニ(Thaddeus Pellegrini)、ハビエル・ロブレド・モレノ(Javier Robledo Moreno)、ケビン・J・ソン(Kevin J. Sung)、エラ・フェジェール(Ella Fejer)、ロバート・ウォークアップ(Robert Walkup)、シータラミ・シーラム(Seetharami Seelam)、マリオ・モッタ(Mario Motta)で構成されています。
研究論文の全文はこちらをご覧ください:https://arxiv.org/abs/2605.01138
研究支援
本研究は、日本の経済産業省所管のNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業(JPNP20017)」の委託事業「計算可能領域の開拓のための量子・スパコン連携プラットフォームの研究開発(研究代表者:佐藤三久)」によって行われています。
クリーブランド・クリニックについて
クリーブランド・クリニックは、診療および病院でのケアと、研究、教育を統合する非営利の複合専門分野型学術医療センターです。協力、思いやり、イノベーションの原則に基づき、優れた患者ケアを提供するという理念のもと、4人の著名な医師によって1921年に設立されました。クリーブランド・クリニックは、冠動脈バイパス手術や米国初の顔面移植など、多くの医療上の画期的成果を切り開いてきました。その専門性とケアは、米国および世界各地で常に高く評価されています。
世界各地の従業員83,000人には、給与制の医師および研究者6,600人以上、正看護師および高度実践医療提供者21,900人が含まれ、140の診療科および専門分野を代表しています。クリーブランド・クリニックは6,725床を擁する医療システムで、クリーブランド中心部近郊の173エーカーのメイン・キャンパス、23の病院、300の外来診療施設で構成されています。施設は、オハイオ州北東部、フロリダ州、ネバダ州ラスベガス、カナダのトロント、アラブ首長国連邦のアブダビ、英国ロンドンなどにあります。2025年には、クリーブランド・クリニックの医療システム全体で、1,590万件の外来受診、34万3,000件の入院および経過観察、33万6,000件の手術および処置が行われました。
詳しくは、clevelandclinic.org をご覧ください。Xではx.com/CleClinicNewsをフォローしてください。ニュースおよび関連資料はnewsroom.clevelandclinic.orgでご覧いただけます。
理化学研究所について
理化学研究所は、最先端の科学技術をリードする日本の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、数理・情報科学、計算科学、生物学、医科学などに及ぶ広い分野で研究を進めています。理研計算科学研究センター(R-CCS)は、世界トップクラスの性能を有するスーパーコンピューター「富岳」を運用して大学や研究機関、産業界等の幅広い利用者に計算資源を提供するとともに、計算科学・計算機科学の発展に寄与する「計算の、計算による、計算のための科学」の研究開発を行っています。
詳しくは、https://www.riken.jp/ をご覧ください。
IBMについて
IBMは、世界をリードするハイブリッドクラウドとAI、およびコンサルティング・サービスを提供しています。世界175カ国以上のお客様の、データからの洞察の活用、ビジネス・プロセス効率化、コスト削減、そして業界における競争力向上を支援しています。金融サービス、通信、ヘルスケアなどの重要な社会インフラ領域における数千の政府機関や企業が、IBMのハイブリッドクラウド・プラットフォームとRed Hat OpenShiftによって、迅速に、効率良く、かつセキュアにデジタル変革を推進しています。 IBMは、AI、量子コンピューティング、業界別のクラウド・ソリューションおよびコンサルティングなどの画期的なイノベーションを通じて、オープンで柔軟な選択肢をお客様に提供します。これらはすべて、信頼性、透明性、責任、包括性、ならびにサービスに対するIBMのコミットメントに裏付けられています。
当報道資料は、2026年9月9日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳をもとにしています。原文はこちらを参照ください。
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