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- 自作AIアプリで介護が変わった…「脱・介護地獄」目指す「初心者バイブコーダー」が増えている

ニュージャージー州ローゼルパークにあるプラティク・デサイ(Pratik Desai)氏の実家には、亡き母スムルティ(Smruti)さんを偲ばせるものがあふれている。母が小腸がんのステージ4と診断されたとき、彼は一日でも長く母に生きていてほしいと、あらゆる手を尽くした。
34歳のスタートアップ創業者であるデサイ氏は、AIプラットフォームのNotebookLMとClaudeを駆使し、膨大な医療情報を統合・分析するツールを自作した。
あるとき、そのツールは彼に、スムルティさんが肺塞栓症(決戦が肺の血管を塞ぐ症状)の合併症を起こしている可能性を知らせてきた。デサイ氏はその仮説を医師である従兄弟に伝え、すぐさま母を病院に連れて行った。そのツールは、母の診療記録の中にあった誤りや誤診まで検出し、診察時に医師に何を尋ねるべきかも助言してくれたという。あまりの的確さに、担当医たちは彼に医学生ではないかと尋ねたほどだった。

デサイ氏は、チャットボットに簡単なプロンプト(指示テキスト)を入力するだけでアプリを作った経験を語ってくれた「バイブコーダー」の1人だ。Business Insiderはここ数カ月の間、数十人のバイブコーダーに取材してきた。

テック系のアーリーアダプター(初期ユーザー)の多くはたいてい、ある程度の技術的知識を備えているものだ。しかし、大規模言語モデル(LLM)や、Cursor、LovableといったAIツールは、専門知識がなくても自然言語のプロンプトだけでコードを生成できる手段を提供している。
高齢の親を抱え、その介護負担を少しでも軽くしたいと考える人々にとって、バイブコーディングは“夢のツール”を実現する手段となっている——たとえ完璧ではないとしても。
自作ツールが母親の命を3回も救った
ハンナ・ミラー(Hanna Miller)氏は、認知症で同じ商品を何度もネットで注文してしまう父親の購入履歴を確認するため、ノーコードのChrome拡張機能を自作した。29歳のビル・アティエンザ(Bill Atienza)氏は、自身の両親を含む高齢のアメリカ人がテクノロジーをうまく使いこなせるよう、バイブコーディングでテクニカルサポートツールを開発した。ある女性はそのツールの助けを借りて、亡き夫の音声をAIチャットサービスのPerplexityにアップロードし、夫と「会話」できるアプリを作り上げたという。

デサイ氏が当初構築したノーコードツールは、1600ページにも及ぶ母親の医療記録に対応しきれなくなった。そのため、彼は持ち前の技術的素養を活かし、より複雑なシステムを開発した。彼は、この自作ワークフローが母の命を3度救ったと信じている。彼女はステージ4の診断から76日間を生き抜き、67歳でこの世を去った。
「私の最大の関心事は、いかにして母に少しでも長く、質の高い時間を過ごしてもらうかでした」
実家のリビングルームで、デサイ氏は父スバシュ(Subhash)さんの隣に立ってそう振り返った。「感情的な面に向き合う余裕すらなかった。ただひたすら、その日のうちに何かをバイブコーディングして形にしなければならないという焦燥感に駆られていたんです」。
「ニーズがいかに切実で千差万別か」の証左
バイブコーディングは、複雑で個人差の大きい介護プロセスの負担を和らげるためのツールに、家族がアクセスできる手段を提供している。メリーランド大学のヘルス・エイジング・アンド・テクノロジー・ラボ(Health, Aging, and Technology Lab)の所長、アマンダ・ラザー(Amanda Lazar)氏はそう指摘する。
「この種のシステムには常に問題があり、万能な解決策というものは存在しません。それでも、このバイブコーディングをめぐる動きは、人々が本当に必要としているものがいかに切実で、かつ個別化・パーソナライズされたツールであるかをはっきりと示しています」とラザー氏は語った。

36歳のダネシュ・ダバール(Danesh Davar)氏は2019年、母が複数回の出血に見舞われ、タイピングを含む運動機能の一部を失っていく姿を目の当たりにした。母のニーズに合う音声入力(ディクテーション)ツールで、年間500ドル(8万円、1ドル=160円)以下で使えるものは見つからなかった。そこで、彼は2時間半のバイブコーディングのチュートリアルを受講し、IT管理職の仕事を辞め、のちに「Talkativ」と名づけることになるアプリを自作した。
ロンドンを拠点とするダバール氏は、バイブコーディング・プラットフォームのCursor(カーソル)で小規模なプロジェクトを試したあと、約200ドル(約3万2000円)で開発した自身のプラットフォームに、より高度な機能を実装していった。最初の2バージョンはうまく動かなかった。しかし、最終的にはあらゆるテキストボックスやアプリ上での音声入力、50以上の言語の音声認識、自動句読点や書式整形といった機能を備えたデスクトップ・アプリを完成させた。
広告費ゼロにもかかわらず、このTalkativは最初の3カ月で200人の登録者を獲得し、1万2000件を超える音声入力処理を成功させた。何より重要なのは、数カ月前に退職した彼の母親がこのシステムを毎日使っているということだ。
「母はロックスターのようにタフで、一度やると決めたら必ずやり遂げる。本当に粘り強い人です」と、ダバール氏は誇らしげに語った。
バイブコーディングにもリスクはある
もっとも、バイブコーディングは失敗することも少なくない。技術的な知見がなければ、コードの誤りを発見することも、ソフトウェアの変更に合わせた定期的なアップデートが必要となるメンテナンスを行うことも難しい。多くのバイブコーダーがその壁に直面する。また、セキュリティ上の脆弱性をもたらすリスクもあり、実際に個人情報が外部に漏えいしたケースも存在する。
Business Insiderに対し、専門的な開発者の関与なしに自分の作品が大規模に展開された場合、思わぬしっぺ返しを食らいかねないと心配するバイブコーダーもいた。
Nature Medicine誌に2026年2月に掲載された研究では、チャットボットが提供する健康関連のアドバイスには不正確な情報が蔓延していることが明らかになっている。極端なケースでは、医師よりもAIを信用した結果、命を落としたケースすら報告されている。だからこそ、バイブコーダーの多くは、人間による判断との併用を前提にアプリを設計しているわけだ。

「数年前、私の母が認知症の真っ只中にあり、姉が介護で疲弊しきっていた頃、私には2人を助けるツールのアイデアは頭の中にいくつもあった。でもそれを実現するためのハードルが高すぎたんです」
そう語るのは、全米退職者協会(AARP)傘下のAgeTech Collaborativeで副社長兼ゼネラルマネージャーを務めるリック・ロビンソン(Rick Robinson)氏だ。
「ところが現在、AIを活用したバイブコーディング・プラットフォームのおかげで、技術に詳しくない一般の人にとっても、アイデアを動くプロダクトに素早く変えることがはるかに簡単になっています」
あるテック企業でデザイン責任者を務める、37歳のリカルド・モタ(Ricardo Mota)氏は、母親が診断されたアルツハイマー病と向き合いながら、自身のプラットフォーム「Eterna」を構築し始めた。彼が作ったのは、WhatsAppのボイスメモや過去のチャット履歴、その他の思い出を家族が振り返ることができる「memory vault(記憶の保管庫)」だ。
「母はもうあまり反応しなくなりました。それでもふと反応する瞬間があって、その記憶を残しておきたかった」と、モタ氏は打ち明けた。
Eternaは現在、150人のユーザーを対象としたベータテストを進めており、モタ氏は機能とプライバシー保護のさらなる強化に取り組んでいる。いまはただ、母と分かち合う思い出を大切にし、かつて若く元気だった頃の自分を思い出させるような曲を母親に聴かせている。






























