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佐藤優のお悩み哲学相談
【佐藤優】優秀な友人が就職に失敗して安堵。醜い自分の心をどう扱えばいい?
佐藤優[作家・研究者](構成・本間大樹、イラスト・iziz、編集・小倉宏弥)

シマオ:皆さん、こんにちは! 「佐藤優のお悩み哲学相談」のお時間がやってまいりました。読者の方にこちらの応募フォームからお寄せいただいたお悩みについて、佐藤優さんに答えていただきます。さっそくお便りを読んでいきましょう。
佐藤さんにご相談があります。 他⼈の失敗に安堵する⾃分の醜悪な⼼とどう向き合えばいいのでしょうか。
⾼校の同級生(A君)と高校卒業以来初めて会ったときのことです。A君とは、中⾼⼀貫校で一緒だったのですが、A君は成績優秀者が国公⽴や医学部を⽬指すクラスに在籍し、私はそうではないクラスに在籍していました。⼤学は、お互いに同じ有名私⼤に進学しましたが、学部が違うこともあり、ほとんど関わることなく卒業の⽇を迎えました。
私は⾃分の希望した専⾨職としてのキャリアを歩めそうですが、A君は就活の早期化に対
応出来なかったことで就職に失敗したとのことでした。それを聞いた時に、彼ほど優秀で⼼根の優しい⼈でもしくじるのかと安堵する⾃分がいました。
A君とはこれから直接競争するわけでもないのに、その失敗に安堵してしまう⾃分の醜い
思考を改めるための⽅法を教えていただきたいです。
(れあ、20代前半、男性、学⽣(新社会⼈))
人の失敗を喜ぶ気持ちは本音
シマオ:れあさん、お便りありがとうございます! 正直、僕も近しい人の失敗を見て安心するなど、似たような経験があるからよく分かります……。
佐藤さん:そうですね。友人とか同期に対して親しい感情がある一方で、強いライバル心や競争心があるのは当然のことです。思い通りの就活ができなかった同期に対して安堵を覚えるのは、誰でもある心持ちだと思います。
シマオ:そう言ってもらえて、僕も少しほっとしました!
佐藤さん:夏目漱石の『こころ』という小説がありますね。親友Kの恋人を奪い結婚したことで、Kを自殺に追い込んでしまったと悩む主人公の心の葛藤を描いた作品です。
シマオ:はい、良心の呵責で主人公は最後には自殺してしまうという話でした。
佐藤さん:そうです。最初に主人公の先生がKから相談を受けたとき、「精神的向上心のないものはばかだ」とKの恋愛を否定します。それは自身がその女性に恋慕していたからで、その一方で自分は抜け駆けして彼女を獲得するのです。汚いやり方ではありますが、好きな相手が友人と被ってしまった時、主人公のような行動に出ることはあり得ないことではありません。
シマオ:友情を捨てても恋愛を取るか、それとも自分を抑えてでも譲るのか……。究極の選択のようで、どれが正解というものもないような気がします。
佐藤さん:そう思います。漱石の小説は近代自我の自由と良心、倫理の問題を扱ったものです。だからこそ普遍性を持ち、今でも多くの人に読まれている。近代社会になって人々が選択する自由が増えるほど、さまざまな葛藤が生じやすくなります。
「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」で、平等意識が生まれるのは良いのですが、一方で他者との競争意識や欲望が刺激され、他人の所有物を羨んだり、他人の成功に対する嫉妬も生まれやすくなるのです。
シマオ:人間は自由平等になるほど葛藤や衝突が生まれるということでしょうか?
佐藤さん:そう思います。キリスト教的な言葉で言えば人間には原罪があります。罪が形をとると悪になります。すなわち人間には悪が内在している。だから自由選択するほど人間は間違いを犯し、悪と罪を増やし続けるという解釈になります。仏教的に言えば人間には煩悩があるがゆえに間違いを犯し、その結果悩み苦しむということになるわけです。
シマオ:うーん、宗教では昔から人間の本質的な悪を見極めていたのですね。
佐藤さん:ですから、れあさんが同期の友人の躓きに、思わずほっとしてしまう気持ちは、多くの人が抱く本音です。その感情に突き動かされて実際に何かしら悪なる行為や言動を行うとなれば話は別ですが、心の中にそのような考えや感情が想起するのは致し方のないことだと考えるべきです。































