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- 「AIで効率化」は幻想か…深夜残業・休日出勤が増えていることが「現代版ペンタゴン・ピザ理論」で判明

- ある法人向けフードデリバリーサービスで、深夜や週末の注文が急増している。その伸びはユーザー数全体の増加を上回るペースで増えている。
- この調査結果は、AIが効率性を高めると主張する企業がある一方で、実際には従業員の労働時間がかえって長くなっていることを示唆している。
- またこの現象は、地政学的な出来事の直前に、政府機関に対するピザの配達が急増するという有名な理論にも通じるものだ。
テクノロジー推進派は、人工知能(AI)がホワイトカラーの仕事をより効率的にすると主張する。しかし、従業員の食生活は、別の現実を物語っているかもしれない。
AI時代の「ペンタゴン・ピザ理論」現象
アトラシアン(Atlassian)、ブロック(Block)、スナップ(Snap)といった企業が今年に入って大規模なレイオフ(人員削減)を発表した際、彼らはその共通の要因としてAIを挙げた。AIの導入によって、人員構成の見直しが必要になったからだ、と。
しかし、2015年創業の企業向け食事福利厚生・デリバリープラットフォームのシェアバイト(Sharebite)のデータは、AIが一部の従業員の労働時間を減らすどころか、むしろ長時間の労働を強いている可能性を示している。同社によれば、2026年第1四半期の土曜日に、顧客の企業から入った注文数は、前年同期と比べて2倍以上に増加した。平日と週末の午後6時以降の注文は同期間で57%増加し、ユーザー数全体の伸び率36%を大きく上回った。
この差は、通常の勤務時間以外の仕事が不釣り合いなほど増加していることを示している。これはまさに「ペンタゴン・ピザ理論」の現代版とも言える現象だ。この理論は、国防総省やCIA近くのピザの注文数が急増した直後に国際的な危機が発生するというもので、深夜の注文急増が、重大な出来事を控えた政府職員の残業のサインであるという考え方だ。
マルチタスクが増え、責任範囲も拡大…
この調査結果は、多くの企業が従業員に対しAIの活用を強く迫っている中で明らかになった。中には、AIの利用状況を人事評価に組み込み、昇給や昇進に反映させる企業すら出てきている。
シェアバイトのCEOで、かつてウォール街の投資銀行家だったディリップ・ラオ(Dilip Rao)氏はBusiness Insiderの取材に対し、テック業界や金融業界を中心とする大小数百社もの顧客企業で就業時間外の注文が急増していることと、最近のAIブームとの間には関連性があると語った。
「過去12〜18カ月にわたる当社の法人顧客全体のデータを見る限り、従業員の労働時間が短くなっている兆候は見られない。むしろ、業務は夜遅くや週末にまで及んでいる」と彼は指摘する。
AIがホワイトカラーの仕事量をかえって増やしているというラオ氏の見解は、近年増え続けている数多くの研究結果とも一致している。例えば、『ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)』が2月に掲載した研究では、AIを活用する従業員はそうでない従業員に比べてより幅広い業務を抱え、結果として労働時間が長くなっていることが明らかになった。
カリフォルニア大学バークレー校の研究者らが今年発表した別のレポートでも、同様の結論に達している。アメリカの小規模テック企業の従業員を対象に、8カ月間にわたって行われた調査では、従業員の同時並行作業(マルチタスク)が増え、担当する業務の責任範囲が広がり、労働時間が長くなっていることがわかった。しかも多くの場合、それは誰かに指示されたわけではないにもかかわらず行われていた。
同様に、全米経済研究所(NBER)が2025年に発表した報告書でも、AIに触れる機会が増えれば増えるほど労働時間が長くなり、余暇の時間が減少するという相関性が指摘されている。著者らは、その主な原因として、AIが人間の労働を代替するのではなく、補完する存在だからだと述べている。
仕事が増えれば食事の注文も増える
ペンタゴン・ピザ理論は、1990年代初頭にあるピザ店のオーナーが提唱したとされる。連邦政府職員が突然大量のピザを注文し始めたら、それは何か重要な事態に備えて残業しているに違いないというものだ。
ラオCEOはシェアバイトのフードデリバリーに関するデータも、AIが労働者に及ぼす影響について、それと同様の洞察を与えてくれるかもしれないと述べ、夜間の注文急増と企業のAI導入との間に関連があると指摘した。
「これは仕事量の増減というより、仕事のやり方が変化しているということでしょう」とラオ氏は述べ、このデータは企業がAIを導入するうえで人の力がいかに不可欠かを裏づけていると主張した。
なぜ労働時間が増えているのか
もちろん、従業員の労働時間が長くなっている理由はAIだけではなく、それ以外の要因が重なっているのかもしれない。
近年、企業は会社への忠誠心より「測定可能な成果」を重視するようになり、従業員のパフォーマンスに対する期待値も引き上げている。そうした変化は、従業員特典の削減(場合によっては福利厚生の削減)と相まって、従業員側が企業からの残業要請を突っぱねる交渉力が弱まっている現在の労働市場を反映している。
AIが従業員の労働時間を増やしている理由はいくつか考えられる。
1つは、AIが「ハルシネーション(事実に基づかない情報の生成)」を引き起こし、回答に誤りが混じるリスクがあるからだ。文章やコードの作成、画像生成にAIを使用したあとは、人間がその結果が正しいかどうか確認する必要がある。そして、誤りを修正するには当然ながら追加の時間と手間がかかるというわけだ。
また、AIを自分たちの業務フローにどう組み込めばいいのか、従業員たちがまだ試行錯誤している段階にあることも、労働時間が延びている一因になっている可能性があると指摘するのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)コンピュータサイエンス・人工知能研究所(CSAIL)のイノベーション研究者、ニール・トンプソン(Neil Thompson)氏だ。
「通常、組織の既存の業務プロセスを再構築しなければならない『移行期間』というものがある 」とトンプソン氏は語る。「最初のうちはかえって効率が落ちてしまうものだ」。
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