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- 富士通が自社AIに取り組む理由。「ネットにはない日本のビジネス文書」を活かす発想【日本企業のLLM】

AIの世界では、アメリカや中国のテック企業が大規模な予算を使い、他国の先を走る状況が続いている。
ただ、企業が実際にAIを業務へ組み込む局面では、話は少し変わる。最近は「ソブリン(主権)性」を重視する声も強まり、海外大手の汎用モデルをそのまま業務に使うことに慎重な企業も少なくない。機密性や運用の主導権、企業固有の文書や業務への適合といった課題があるためだ。
そうしたニーズに応えるべく、日本でも独自のAIを作って運用する動きは複数存在する。それは、国の支援を得て最先端AIレベルのものを開発する動きだけでなく、「日本独自のAI」を模索する企業の姿も目立つ。
そこで今回から3回に分け、AIや大規模言語モデル(LLM)に関する国内企業の戦略を探る。
1回目は富士通だ。国内大手SIerでもある同社は、エンタープライズ特化型のLLM「Takane(高嶺)」を提供している。Takaneは特に日本企業での文書利用に視野を置き、パートナーと開発したAIを提供しているという。
なぜ富士通は独自AIを展開するのか? 取材を進めると、それは「日本のビジネス文書の特殊性」にあった。
業務特化AIをカナダのパートナーと共に開発

富士通は複数のAIを活用して顧客の課題に対応している。そこでは大手プラットフォーマーの提供する汎用的なAIも組み合わせているが、それだけでは対応できない部分がある、という。
富士通・技術戦略本部 シニアディレクターの菅田純登氏は、状況を以下のように分析する。
「海外製AIの多くはクラウド型で、まずはコンシューマーの顧客を対象にするところからスタートした。そこから企業向けへと広げていると理解している。
一方で、我々が開発するTakaneはエンタープライズ市場向けに特化している」(菅田氏)

菅田氏のいう「エンタープライズ特化」とは主に2つの意味合いを持つ。
1つは「ソブリン(主権)性」。富士通が提供するAIとして、企業側が他の国や組織、サービサーに対して過度に依存せず、独自に運用できることだ。
そして2つ目が「業務特化」だ。
導入した企業の業務に特化し、導入企業以外の事情にあまり影響されることなく使えるAIとして提供。汎用業務向けのクラウド型AIとは別のものとして使うことを前提としているわけだ。
汎用的なクラウド型AIの場合、業務によっては「機密データを社外に出せない」というセキュリティの壁と、「企業固有の専門知識や業務フォーマットを正確に理解しきれない」という精度の壁に直面する。
そうした領域ではTakaneを使う形で棲み分けを進めている、ということになる。

なおTakaneは、正確に言えば完全な「国内独自開発AI」ではない。
富士通はカナダのAIスタートアップであるCohere(コヒア)社とパートナーシップを結んでいる。CohereのAIモデルを核にして、富士通側で日本市場の企業向けに特化した追加学習と開発を行って開発したのが「Takane」だ。
ネット空間にはない「日本のビジネス文書」の壁

Takaneを活用する結果として得られるのは、「日本のビジネス環境に合わせた文書の学習と正確性の強化」だ。
富士通研究所・シニアプロジェクトディレクターの白幡晃一氏は、追加学習が必要となる理由を、「学習データの非公開性にある」と説明する。
「一般的に、グローバルなプラットフォーマーが提供する大規模なAIモデルは、インターネット上から膨大なデータをかき集めて事前学習を行う。相対的に日本のデータは少なくなり、日本特有の事情への対応は弱くなる。
加えて、インターネットには、必ずしも企業が使っているデータそのものが存在するわけではない」(白幡氏)

これはどういうことか?
ポイントは、テキストとしての文書ではなく、フォーマットやレイアウトを含んだ部分までを加味した「文書としての体裁」にある。
ネットには多数の文書が公開されているが、その多くは国際文書である。
だが企業にはそれぞれの企業が持つ文化もあり、特別なフォーマットも存在する。複雑な図表が配置され、罫線などを使ってフォーマットされた文書には、その企業なりのルールが存在する。日本企業内でAIが文書を扱うなら、そんな「暗黙の文脈」を読み取れるようにする必要がある。
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