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- アフターAI時代にコンサルは何を提供するのか?バルビオンが示す“構造の再設計”
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AIの進化によって、コンサルティング業界の前提が揺らぎ始めている。
情報の非対称性を武器にしてきた戦略コンサルティングは、AIによってコモディティ化が進み、「人数×時間」で価値を生む従来型の労働集約モデルも転換を迫られている。
2026年1月に設立されたバルビオン・コンサルティングは、AIバリューチェーンに特化した戦略コンサルティングを掲げる新興ファームだ。AIエージェントを活用した新たな支援モデルを展開する一方で、自らも「コンサルの再設計」に挑んでいる。
メンバーは、ボストン コンサルティング グループ(BCG)やデロイト、EY、アクセンチュアなど、大手コンサルティングファーム出身者で構成。従来型モデルを内側から経験してきたからこそ、戦略立案にとどまらず、自らAIエージェントを駆使しながら、業界構造そのものの変化に向き合える。
AIバリューチェーンに対して「統合的専門性を有する唯一のファーム」を標榜するハイブリッドタレント集団は、コンサルティングのあり方をどのように変革するのか。代表取締役の野村友成氏、ディレクター 鳥光厚志氏、マネージャー 濵野悠氏に話を聞いた。
AIによる変化はリスクではなくチャンス
「レガシーを引きずらない新しい組織、新しい仕事の仕方、新しいタイプの人材で、AIによる変化をチャンスに変えたい」
そう語る野村氏は、長年在籍した大手コンサルティングファームを離れ、2026年1月にバルビオン・コンサルティングを立ち上げた。
背景にあったのは、AIによって急速に変化するコンサルティング業界への危機感だ。野村氏は、その変化による仕事の進め方が「馬車からクルマへ」どころか、一気に「馬車からF1へ」変わったくらいのインパクト」と表現する。
特に戦略コンサルティング領域では、これまで優位性の源泉だった「情報の非対称性」が急速に失われつつあるという。加えて、少数のシニアメンバーが多数のジュニアメンバーを管理する「ピラミッド型の組織構造」や、投入人数・稼働時間に比例して売上が伸びる「労働集約型モデル」など、コンサルティング業界の前提そのものが揺らぎ始めている。
「新卒2年目くらいまでのジュニア業務は、多くの部分でAIに代替できるようになると思っています。すると、これまで複数名で行っていた仕事を1人でもできるようになり、稼働時間と人数が減れば、当然売上は減る。だからこそ、従来型のモデルから、成果や価値を基準としたアウトカムベースへ移行しないと、コンサルティングファームは成長できなくなるでしょう」(野村氏)

実際、米国では大手コンサルティングファームによる大型解雇も相次いでいる。背景には、AIによる生産性向上によって、従来と同じ人数構成を維持する必要性が薄れつつあることがある。
一方、日本では雇用制度や法的制約もあり、急激なAIシフトを進めにくい。野村氏は、「日本のほうがむしろ深刻なジレンマを抱えている」と見る。
こうした状況を目の当たりにするなかで、野村氏は「既存組織の延長線上では、AI時代の変化に十分対応できない」と感じ、独立を決意。鳥光氏や濵野氏らも、野村氏の洞察力や、若手以上のスピードでAIをキャッチアップし続ける姿勢に、「このチームであれば成長できる」と感じ、参画を決めた。
AI時代には「統合的専門性」が求められる
バルビオン・コンサルティングが主軸事業として掲げるのが、「AIバリューチェーンに特化した戦略コンサルティング」だ。
AIバリューチェーンとは、AIを起点に広がる産業構造全体を指す。上流には電力や半導体、サーバーなどがあり、中流にはデータセンターやクラウド、下流には自動車や金融、小売といったAIを活用する産業が広がる。

同社は、このバリューチェーン全体のなかで、AIによってビジネス構造が大きく変化し、新たな成長機会が生まれる領域にフォーカス。市場分析や事業戦略、M&A戦略、ビジネスデューデリジェンスといった戦略コンサルティングを提供している。
「AI市場が急成長する今、上流の電力や材料、半導体・電子部品といった企業も、その下流のトレンドセッターであるハイパースケーラーやAI企業の戦略・事業を理解していなければ、経営のかじ取りができない時代になっています。コンサルティングファームでは、特定の業界に長年携わり、それに対する深い知見を持っている人は数多くいます。一方で、バリューチェーンの上流について検討する際、直接対面する顧客から距離の遠い、最下流に位置するAmazonやMicrosoft、Googleといったハイパースケーラーの動向までを含めて、一気通貫で深い洞察を出せる人はなかなかいない。我々は、AIバリューチェーン全体を横断する知見を持っているところが特徴であり、我々が『統合的専門性を有する唯一のファーム』である所以です」(野村氏)
「事業を理解するコンサルタント」が自らAIエージェントを作る
バルビオン・コンサルティングのもう1つの柱が、「AIエージェント・トランスフォーメーション」だ。
2026年に入りAIは数段進化し、自社でのAIエージェント活用を進めるクライアントが増えてきた。同社が担うのは、単なる業務効率化ではない。戦略コンサルタントによる「企業価値を高めるAI活用の航海図」の策定から、クライアントの現場に入り込み、伴走しながらその場でAIエージェントを構築する実装支援までを、一貫して行う点が特徴だ。今後はメンバーの増強に加え、AI実装に強みを持つ企業と提携しながら、クライアントニーズに対応していく。
こうしたアプローチを支えているのが、コンサルティングの知見と、AIエージェントを開発・チューニングする力を兼ね備えた「ハイブリッドタレント集団」の組織体制だ。
大手ファームでもAIエージェントの開発は進められているが、野村氏は「AIを使いこなすためには、適用する業務を深く理解していることが重要」と話す。実際の業務フローや意思決定プロセスを理解していなければ、現場で本当に使われるAIにはならないという考えだ。
同社では、コンサルタント自身がAIエージェントの開発・チューニングも担う。元エンジニアで現在ディレクターを務める鳥光氏を中心に、複数のLLMを組み合わせたAIエージェント環境を内製で構築しているという。
「メイン画面でクライアント向け資料を作成しながら、横に置いたオーケストレーター役のAIエージェントから、5〜6体のAIエージェントに同時に指示を出して調査を行います。それと並行してAIエージェント自体の改善や開発も進める、“マルチエージェントでの調査体制”を構築しています」(濵野氏)

トップファーム出身のメンバーがAIエージェントを高度に使いこなすことで、調査分析にかかる期間は劇的に短縮。一方で、参照できる資料やファクト量は飛躍的に増え、意思決定の精度や分析の深さも変わり始めている。品質、スピード、コストに対するアプローチが評価され、早くも日本を代表する大企業から案件を受注。ほかにも複数社から相談が寄せられている。
AIは“丸投げ”では使えない
AIエージェントによって、戦略コンサルティングの調査スピードは飛躍的に向上する。一方で、そのままAIに調査を“丸投げ”すれば、ハルシネーションや誤引用といった問題も避けられない。だからこそ重要になるのが、「AIをどう制御するか」だ。
たとえば新規市場参入プロジェクトでは、まずクライアントの技術起点で対象となる市場をスクリーニングし、市場規模や成長性、主要プレイヤーなどをプロファイリングする。その後、幅広い候補の中から有望領域を絞り込み、参入戦略を検討していく。
「従来は、手を動かす人の工数による限界がありましたが、マルチエージェントでの調査体制ならこの限界を突破できます。調査期間が大幅に短縮され、対象市場の数が桁違いに増えるとともに、各調査の深さも圧倒的に増しています」(濵野氏)
ただし、問題はスピードではなく、集めた情報の信頼性だ。
調査をAIに“丸投げ”すれば、ハルシネーションを起こしたり、誤情報を生成したりすることもある。そのため同社では、思い込みや迎合といったバイアスを防ぐために、LLM自身に自らの回答のソースを確認させたり、ほかのLLMとの間で相互にレビューするといった「検証プロセス」を導入。さらに、制御しづらいLLMを安定的に活用すべく、全体環境そのものを設計する「ハーネスエンジニアリング」に力を入れている。
「ハーネスエンジニアリングによってある程度再現性の高い品質に引き上げることはできますが、確率論的なアプローチをとるLLMにはどうしても限界があります。そこでもう一つ重要になるのが、『何をLLMにやらせないか』を決めることです。全文参照や計算はもちろん、情報ソースの引用確認などもLLMに任せると捏造される可能性があるため、すべて別プログラムで存在をチェックする仕組みを導入しています。限界を熟知したうえでAIとプログラムを緻密に掛け合わせ、品質には深く向き合っています」(鳥光氏)
こうした技術的なアプローチに加え、組織としての運用体制も徹底している。社内ではLLMを動かす基本原則を定めてチーム全体に共有。日々のアップデート情報についてもGitHub上で管理・共有し、継続的な運用改善を進めている。

コンサル業界を変革する、AIエージェント開発へ
日々の業務を通じてAIエージェントを改善し、ノウハウを蓄積していくことは、将来的に「コンサルティング会社にとっての競争力そのものになる」と野村氏は考えている。
ただし、同社がベンチマークするのは、既存のトップファームではない。法律、税務、金融の専門業務に特化した生成AIプラットフォーム「Harvey AI(ハーベイAI)」だ。
「たとえば、弁護士とコンサルタントは、求められる仕事の精度が近いと感じています。LLMをプロフェッショナル向けに安定運用しているHarvey AIのまさに “ハーネス”力は、大きな参考になっています。彼らの技術文献やSNS発信なども参考にしながら開発を進め、“Harvey AIのコンサルティング版”のようなAIエージェントを提供できればと考えています」(野村氏)

このプロダクトが実用化されれば、簡易的な調査分析業務の多くをAIエージェントで代替できるようになり、調査期間やコストが大幅に削減できる可能性があるという。これまで十分な調査分析を行えなかった中小規模企業にとっても、新たな選択肢になり得る。
野村氏は、「5年後には、従来型のコンサルティングとAIエージェントサービスの売上が半々になるような、まったく新しい収益構造を作りたい」と意欲を示す。
アフターAI時代、コンサルティング会社のあり方は変わっても、本質や届ける価値は変わらない。野村氏は、「変わるのは、やり方です」と語る。
AIの最前線に立ちながら、バルビオン・コンサルティングが目指すのは、外部から提言するだけの存在ではなく、事業そのものの当事者として関わることだ。
「短期的には、業界で最もAIを深く正しく使える存在を目指したい。そして長期的には、クライアント企業とのジョイントベンチャー設立なども見据えています。外から来て資料を置いて帰るのではなく、同じ帽子をかぶって一緒に事業をやっていきたいという思いがあるんです」(野村氏)




















