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- 4月スタート「こども誰でも通園制度」が“名ばかり”になりかねない理由。国の補助では不十分、現場の工夫が映し出す課題

親が就労していなくても保育施設を利用できる「こども誰でも通園制度」が、2026年4月から全国で本格的にスタートした。岸田政権が異次元の少子化対策「こども未来戦略」の目玉として導入した制度で、育児不安や虐待につながる“孤立育児“を解消するカギになると期待される。
しかし、その船出は決して順風満帆とはいえない。制度設計や受け入れ体制の不備から、保育現場の混乱が予想されることは以前に指摘したが、実際、多くの自治体で受け皿となる実施園が不足し、三重県四日市市のように制度開始を遅らせるケースも出ている。全国一斉にスタートしたことで見えてきたのは、「誰でも通園できる制度」が看板倒れになる懸念だ。
一方で、現場の工夫によって制度の穴を埋め、円滑な運用を実現している自治体も存在する。
本稿では、そうしたモデルケースを手がかりに「こども誰でも通園制度」はどこが“名ばかり”になっているのかを紐解くとともに、日本の保育が抱える構造的な課題を考える。
「誰でも通園」は画期的な転換

「誰でも通園制度」は、親の就労状況にかかわらず、保育施設や幼稚園に通っていない生後6カ月~3歳未満のすべての未就園児に、低額で保育施設を利用できるとする新たな仕組みだ。
従来の公的な保育サービスは、利用できる家庭を児童福祉法などに基づいて規定した福祉施策で、「働く必要がある困難家庭への就労支援」と位置付けられてきた。つまり、「子どもが誰でも通園できるわけではない制度」であり、利用には「保育の必要性認定」を自治体から受け、利用可能な施設を見つけなければならない。
そのため、待機児童が長年の課題とされ、匿名ブログ「保育園落ちた 日本死ね!!!」をきっかけに大きな抗議運動が起きたこともあった。
そうしたなかスタートした「誰でも通園」は、「困窮家庭のための福祉」とされてきた従来の“保育”の考えに変化をもたらす画期的な意味がある。保育を「誰もが利用できる“育ちの応援”の仕組み」としてユニバーサル化し広げようとしているのだ。
そのため、国は利用のハードルを下げる工夫もしている。
利用料は一時間300円と低額に抑え、施設側には0歳児で1時間1700円、1~2歳児で1400円の運営費を補助する。
子ども1人の利用時間は「月10時間」までで時間数は短いが、全ての未就園児に利用の権利があると明確になるよう、自治体への補助事業ではなく個人への給付制度とした。
多摩市は未就園児の過半数が「利用資格」を取得
この制度を2024年度から試験的に導入し、利用者も実施施設も順調に増えて好評となっている自治体もある。国が「モデル自治体」と呼ぶ東京都多摩市や福岡市だ。
「使ってよかったという声が多い。利用していて個別の支援が必要なことが見つかったケースもあった」
そう話すのは多摩市幼児教育・保育担当課の西達也課長だ。
多摩市は東京都郊外にあるベッドタウン。子育て施策に熱心に取り組んできた。「誰でも通園制度」は2年前に4施設(幼稚園2、保育所2)で実施し、翌2025年度は13施設へ拡大。さらに今年度は19施設(幼稚園6、認定こども園1、保育所11、子ども家庭センター1)へと広げて市内全域で展開を進めている。
人口14.8万人で若い子育て世帯が多く、0~2歳児は2200人。子育て世帯の7割が共働きで保育を利用する一方、保育施設に通わない0~2歳の未就園児が800人いる。その半数以上にあたる450人が2025年度に「誰でも通園」の「利用資格者証」を取得し、利用が広がった。
親子にも、園にもメリット

2024年からこの制度に取り組む同市の緑ケ丘幼稚園では、一階の保育室の一つを使い、1日12人の枠内で午前8時30分~午後4時30分に受け入れている。幼稚園バスで出かけたり、園児のクラスで朝の会やダンスに参加したり、園庭で遊んだりと、幼稚園ならではの体験も提供する。
3~5歳の通園児にも、「きょうだいが少ない時代に小さな赤ちゃんが身近にいることが刺激になっている」と有馬篤樹園長はいう。
上の子を同園に通わせてきた、5人の子の母親(42)は、年中児の兄弟とともに1歳の末っ子が週に一回、この制度で通園している。
「上の子たちの時にもこの制度を使いたかった。通院や妊婦健診など子連れで行くのは大変な時がある。自分の時間ももてるようになり助かっている」
と話す。
全国の幼稚園で初めて同制度を始めた有馬園長は、園側にもメリットがあると言う。共働きが増えた結果、育休後すぐに保育所やこども園に入園するパターンが増えた。この制度は、幼稚園のよさを早く体験してもらう機会になる。安定的な利用者の獲得ができれば、経営改善にもつながる。
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