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- 一生に一度は一緒に海を眺めたい。心に「安寧」を感じるヘンリー・ムーアの彫刻(MOA美術館)
連載
一生に一度は見たい東京美術案内

美術評論家・ノンフィクション作家の野地秩嘉が、社会人の教養として「一生に一度は見たい美術品」をご紹介。今回はMOA美術館に佇む彫像、ヘンリー・ムーアの《王と王妃》を取り上げます。
相模灘を眺める彫像《王と王妃》
MOA美術館のメインロビーを抜けた中庭をムア広場という。そこに展示してある彫刻がヘンリー・ムーア(ヘンリー・ムア)作の《王と王妃》だ。
同館ホームページにはこうある。
「20世紀彫刻の第一人者、ヘンリー・ムアのブロンズ像 《キング・アンド・クイーン(王と王妃)》が展示されています。ここからは、相模灘の雄大な景観を眺めることができ、フォトスポットとしてもお楽しみいただけます」
(MOA美術館公式サイトより引用)
ここにあるようにムア広場は絶景のスポットだ。晴れていれば前面に広がる相模灘の波が太陽の光に反射してきらきらと光る。相模灘の沖には初島が見える。広場から向かって右手は伊豆半島、左手には三浦半島がある。王と王妃と肩を並べて相模灘と初島を見られる場所がムア広場だ。
そして、この彫刻作品を「この場所に設置したい」と言ったのはムーアの娘で、ヘンリー・ムーア財団をマネジメントしていたメアリー・ムーアである。
娘との時間から生まれた彫刻
ヘンリー・ムーアはイギリス生まれの抽象彫刻家だ。炭鉱夫の息子としてヨークシャーのカッスルフォードで生まれ、大理石、ブロンズを使った大型の抽象彫刻で知られる。ムーアの作品はパブリック・アートとして世界の美術館、公園などに数多く展示されている。作品には抽象化された人体像が多く、穴が開いているか、もしくは空洞を含んでいるものが大半である。
《王と王妃》を作ったきっかけは娘のメアリーだったという。ムーアは6歳だった娘メアリーに毎晩、王様や王女様が登場するおとぎ話を読み聞かせていた。おとぎ話の世界観から着想し、《王と王妃》という形の彫刻作品になっていった。父ムーアと娘メアリーにとって、この作品は特別に愛着があるのだろう。《王と王妃》は世界にいくつかのエディションがある。そのうち、MOA美術館にあるものは「作家保存用(アーティスト・プルーフ)」だ。メアリーが展示する場所に気を遣ったのも、本作品が希少なものだからだ。
他のムーア作品は肉の厚い立体彫刻が多いが、《王と王妃》の身体は紙のように薄い。頭部にある目の部分は丸く空いている。これまた他のムーア作品の穴は大きなものが多いのだけれど、《王と王妃》の穴は小さい。

































