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- 世界No.1シェアの理由は“見えない技術”にある。最新テクノロジーを支える「ソルダーレジスト」とは
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AIサーバー、自動運転車、次世代ロボット――。こうした新たなテクノロジー機器に欠かせないのが“半導体チップ”だが、それを電子機器として成立させるには、プリント基板や半導体パッケージ基板といった土台のほか、その基板に使われる「ソルダーレジスト」のような機能性材料が必要不可欠だ。
太陽ホールディングス(以下、太陽HD)は、このソルダーレジスト分野で世界トップシェアを持つ。機器の裏側を支える素材メーカーとして、消費者の目に触れにくい存在でありながら、テクノロジーの進化に深く関わっている。
今回は、次世代のテクノロジー機器を支える基板と材料の重要性、そして世界No.1シェアを維持する同社の役割を開発責任者に聞いた。
テクノロジーの裏側に、多種多様な基板あり
スマートフォンやPC、家電、車載機器。これらは一見すると完成品として認識されがちだが、内部では半導体チップをはじめとした多くの電子部品が電子回路によって複雑につながり合い、はじめて機能している。その接続の土台となるのがプリント基板だ。
加えて、近年AIサーバーや高性能半導体の普及によって、そのプリント基板に載る「半導体パッケージ基板」の重要性も高まっている。太陽HDでソルダーレジストをはじめとするパッケージ基板材料の開発を担う岡本大地氏は、こうした基板の進化をこう説明する。
「スマートフォンのようなスペースの限られる機器では、より薄く、より小さくすることが求められます。一方で、AIサーバー等で使われる基板ではむしろ大型化が進んでいる。すべてが同じ方向に進むわけではなく、用途ごとに求められる性能が異なり、基板種類によって多様なソルダーレジストのニーズがあります」(太陽HD開発責任者・岡本氏)
つまり、基板は単なる“半導体をつなぐ台”ではない。機器の進化に合わせて、薄型化・高密度化・大型化など、異なる要請に応え続ける必要がある。その変化に連動して、基板を構成する材料にも高度な対応が求められている。

ソルダーレジストは、基板性能の信頼性を左右する
そのなかでも、基板の性能を陰で支える材料がソルダーレジストだ。一般にはあまり知られていないが、基板表面にある緑色の膜がそれにあたる。
ソルダーレジストの役割は大きく二つある。ひとつは、はんだをつけるべき部分と、つけてはならない部分を分け、電子部品の実装精度を支えること。もうひとつは、ほこりや湿気、熱といった外部要因から回路パターンを守り、ショートや故障を防ぎながら、機器が安定して動き続ける状態を支えることだ。岡本氏はこう話す。
「ソルダーレジストは、さまざまな電子部品を搭載した基板の表面を覆い、回路パターンを保護する絶縁膜となる材料です。見えにくい存在ですが、基板機能の信頼性を支える重要な役割を担っています」(岡本氏)

しかも、ソルダーレジストは一種類ではない。プリント基板用とパッケージ基板用という大きな分類だけでなく、顧客ごとの要求に応じて数百種類が存在する。微細な開口に対応するもの、膜厚制御に優れたもの、耐熱性を高めたものなど、それぞれが特定の用途や要件に最適化されている。
「基板と同様に、たとえばより小さい開口に特化したものなど、顧客の要望に応じたバリエーションが多様にある」と岡本氏は言う。

製品の見た目やブランドでは差が見えにくくても、安定動作や耐久性は、こうした材料の違いに大きく左右される。とりわけ電子機器の高性能化が進むほど、材料のわずかな差が、製品の品質や信頼性に直結するようになっている。
材料メーカーとしての太陽HDの役割
太陽HDの特徴は、単に材料を供給するだけではない点にある。原材料メーカーから樹脂や顔料、フィラー(材料に混ぜ込む充填材)などを調達し、自社で液状品やドライフィルム品へと加工し、基板メーカーへ提供する。その位置づけは、バリューチェーンの上流にありながら、下流の要求を強く受け取る“要”のような存在だ。
岡本氏によれば、同社の強みは大きく三つある。ひとつ目が配合技術、二つ目が分散技術、三つ目が塗工技術だ。
配合技術では、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂、光重合開始剤、触媒、無機フィラー、顔料などを組み合わせ、顧客が求める機能を引き出す。分散技術では、それらの材料を均一かつ微細に分散させることで、狙った性能を安定して発揮させる。そして塗工技術では、特にドライフィルム型の製品において、1ミクロン単位で膜厚を制御する。
「ソルダーレジストの性能を決めるうえで、やはり肝になるのは配合です。ただ、それだけではダメで、配合した成分を細かく均一に分散できなければ期待した性能が出ませんし、膜厚のコントロールができなければ顧客の要望にも応えられません。この三つがバランスよく成り立って、いいものができると考えています」(岡本氏)
配合の領域では、顧客要求に応じて原材料メーカーと共同開発を行うことも少なくない。太陽HDは、出来上がった原材料を受け取って組み合わせてソルダーレジストを製造するだけではなく、必要に応じて原材料の段階から最適化に踏み込んでいる。

世界No.1の理由は、「最初に相談される」立ち位置にある
太陽HDは、ソルダーレジスト分野で世界シェア約60%を持つ。液状型では53%、ドライフィルム型では84%という高いシェアを持ち、世界トップの地位を築いている。
この数字だけでも圧倒的だが、同社の優位性は単純な規模にとどまらない。最大の強みは、「新しい課題が生まれたとき、まず相談される立場」にいることだ。
「顧客がソルダーレジストに新しい要望を持った時に、まず当社にご相談いただけるという流れがあります。最初に顧客の要望をいただけるため、開発のスタートを他社より早く切れる。それは当社にとって大きなアドバンテージです」(岡本氏)
機能性材料の領域は日本企業が世界を圧倒
シェアの高さが情報の集積を呼び、その情報がさらに開発の先行優位につながる。こうした循環が、世界No.1のポジションを支えている。
興味深いのは、この領域で日本企業の存在感が依然として大きいことだ。エンドメーカーの市場では海外ブランドの製品の存在感が目立つ一方で、こうした機能性材料では日本企業が強い。岡本氏も「エンド製品になると海外品も多いですが、それを構成する元の材料は、まだまだ日本が強い」と語る。
一般消費者からは見えにくいが、半導体関連材料や周辺材料では、「日系素材が強い」という認識は業界内では広く共有されている。太陽HDは、そうした日本の機能性材料の強さを象徴する企業のひとつと言える。
AI時代に求められる新たな課題
テクノロジーの進化が進むなかで、素材メーカーの価値はむしろ高まっている。
特にAIサーバーでは、大電流や高発熱、より複雑な実装構造に対応する必要があり、材料側にもこれまで以上に厳しい要件が課される。薄型化が求められるスマートフォン向け基板とは異なり、大型化・高密度化・高信頼性が同時に求められるのだ。
また、車載向けに関してはその典型例と言える。車載半導体パッケージ向けのドライフィルムソルダーレジストは現在、太陽HDが現在力を入れる開発テーマの一つだ。
一般的な基板が0〜85℃程度の環境を前提にするのに対し、車載用途ではマイナス40℃から150℃までという、はるかに過酷な温度領域での使用が想定される。しかも、振動や急激な温度変化にも耐えなければならない。故障した場合の影響も、スマートフォンの不具合とは比べものにならない。たとえば自動運転のような文脈では、人命に関わる可能性すらある。
太陽HDは、こうした要求に対応するため、車載向けの高耐熱材料も開発してきた。-40℃〜150℃の厳しい温度サイクル試験では、従来品ではひび割れが起きてしまう条件でも、直近の開発品では、そうしたひび割れが確認されず、より耐久性の優れた機能性材料が出来上がったという。
「光硬化性樹脂を樹脂メーカーと共同で一から設計し、さらに熱による衝撃を吸収する材料も組み合わせました。その結果、耐熱性が非常に高い材料ができたのです」(岡本氏)

こうした地道な改良の積み重ねが、次世代のテクノロジーを下支えしている。
“見えない会社”だからこそ、最先端に深く関われる
エンドメーカーは消費者の目に触れやすく、華やかに映る。一方、素材メーカーはどうしても“縁の下の力持ち”に見えがちだ。だが、その見えない領域にいるからこそ、特定の製品に閉じず、幅広い最先端技術に関わることができる。
「携帯電話には、おそらくほぼすべてに我々の主力製品であるソルダーレジストが入っています。この素材がないと我々の生活を楽しく豊かにする様々な機器が動かなくなる――。少し言い過ぎかもしれませんが、そのような気持ちで日々の開発を行っています」(岡本氏)
実際、太陽HDの材料は、スマートフォン、PC、AIサーバー、自動車、さらには宇宙関連まで、多様な用途に広がっている。ひとつのエンドメーカーに属するのではなく、あらゆるデバイスの進化に並走できる。そこに、この仕事ならではの醍醐味がある。岡本氏は、開発の面白さについてこう話す。
「顧客の要求というのは、まだ世の中に正解がないからこそ来るものです。誰も達成してできていない特性をどうクリアできるか仮説を立てる。その仮説がぴたっとはまって、新たなテクノロジーの誕生に貢献できたとき、大きな達成感があります」(岡本氏)
太陽HDの仕事は、テクノロジーの最先端が次にどこへ向かうのか、その変化をもっとも早く感じ取れる場所のひとつでもある。

























