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佐藤優のお悩み哲学相談
【佐藤優】若者よ、地方はチャンスに溢れている。正社員を狙うなら東京を離れるべき理由
佐藤優[作家・研究者](構成・本間大樹、イラスト・iziz、編集・野田翔)

シマオ:皆さん、こんにちは! 「佐藤優のお悩み哲学相談」のお時間がやってまいりました。読者の方にこちらの応募フォームからお寄せいただいたお悩みについて、佐藤優さんに答えていただきます。さっそくお便りを読んでいきましょう。
最近あまり自分に自信が持てなくなっています。派遣元の営業マネジャーから厳重注意を受け、あなたには他の派遣先を紹介するつもりはないし、契約更新も危ういだろうと言われました。
このままでは八方塞がりになってしまうので転職活動を始めました。未経験からのエンジニア職への挑戦です。ITパスポートを取得し、準備は万全です。しかし誰に言われたわけではないのに「お前にできるわけがない。今の環境に有り難く留まっていろ」という内なる声を払拭することができず自分に自信が持てません。
職場の同僚は自分のことは棚に上げて他者の失敗や弱みを見つけては役職者に嬉々として報告をします。離職の際に同僚から新たな批判を受けるかもしれないと思うと恐怖感に駆られます。私は再び健全な自己肯定感を得ることはできるでしょうか?
(もち、30代後半、女性、会社員)
『闇金ウシジマくん』を見るべし
シマオ:もちさん、お便りありがとうございます! 職場環境があまり良くないようで、健全な自己肯定感が持てず転職を考えているとのこと。ただ、我慢して留まるべきか迷いもあるとか。ぜひアドバイスがほしいということです。
佐藤さん:前回の相談のご返事と同じになりますが、まずはハローワークに行かれることをお勧めします。
シマオ:そうなんですね。今回も自分の市場価値を知って、いまの環境がいかに恵まれているかを確認するということでしょうか?
佐藤さん:いえ、今回は全く逆です。確かに実際にハローワークで仕事を探し、転職して職場を変えることをお勧めします。
シマオ:今回はそちらのパターンなんですね! やはり今の職場環境はよろしくないということでしょうか?
佐藤さん:相談の文面を読む限り、あまりいい環境とは言えませんね。同僚が他人の失敗や弱みを役職者に報告するわけでしょう? 恐らくですが1人2人そういう人がいるというのではなく、組織全体にチクリ文化が蔓延している職場だと思います。
シマオ:だとしたら怖いですね。どこかの国の恐怖政治みたいに、みんなが監視し合っているという……。
佐藤さん:そういう環境からは可能であれば他に移る方がいいと思います。これが正社員で働いているというならば、安易に転職することは勧めません。安定した立場は大きいですし、正社員であれば頑張って職場の空気を換えることも可能かもしれません。ですが派遣の場合は会社に居続けるメリットも少ないし、職場の雰囲気を変えることもまず不可能でしょう。
シマオ:いまの職場で頑張っても報われることは少ない……むしろすり減ってしまう危険があるということですね?
佐藤さん:そう思います。もちさんにはぜひ『ブラック企業戦記 トンデモ経営者・上司との争い方と解決法 』(角川新書・ ブラック企業被害対策弁護団)の一読をお勧めします。この本には全国のブラック企業の実態が生々しく描かれています。もちさんの会社が果たしてどれくらいのブラック度かが客観的に分かるはずです。
シマオ:自分の置かれている環境を評価する尺度が必要なんですね! ただ、もちさん自身は「八方塞がり」の状態だと言っていますが……。
佐藤さん:それに関しては、ドラマ『闇金ウシジマくん』や、その外伝である『闇金サイハラさん』を見てほしいと思います。どちらもNetflixなどで配信されています。この作品には借金地獄に陥ってそれこそ本当に八方塞がりになった人達がたくさん登場します。かなりの部分が実話に基づいて作られているそうですが、それを見るとご自身はまだまだ追い詰められてはいないと感じるのではないでしょうか。
シマオ:『闇金ウシジマくん』の登場人物たちに比べたら、間違いなくそうですよね! 僕も見ましたが、自分がこうなったらと思うと震え上がるというか……視聴してもらえればまだ救いがある方だと感じられると思います。とはいえ、自己肯定感がどんどん削られる職場というのはきついでしょうね……。
自己肯定感を仕事に求めてはいけない
佐藤さん:ただ、その自己肯定感という言葉に関して、ちょっと話しておきたいことがあります。
シマオ:何でしょうか?
佐藤さん:そもそも資本主義社会において仕事をする、働くということの本質は「労働力の商品化」です。つまり会社に雇われるというのは、自分の労働力を資本家に「売る」ということ。資本家はそれによって利潤を上げることが目的で、従業員の自己実現や自己肯定感を高めることが目的ではありません。
シマオ:前にもお話がありましたね! 本来、会社の仕事は自己実現や自己肯定感を求める場所ではないと……。
佐藤さん:逆に言えば労働者にとって仕事の最大の目的とは食べていくためであるということです。会社で自己実現や自己肯定感が得られているという人は、たまたま仕事の内容や職場環境が自分に合っていた、ラッキーだったくらいに考えるべきでしょう。
シマオ:そう捉え直せば、会社の仕事に過度な期待を抱くこともなくなるし、いたずらに落胆したり悲観したりすることもなくなるということですね。
佐藤さん:その通りです。ただ、同時に私たちは社会で働くことで税金を納めているでしょう? それから物やサービスを購入することで消費税を納めています。その税が社会への再分配の原資となっている。
シマオ:子育て支援だったり、働きたくても働けない人たちをサポートするお金になっているわけですね。
佐藤さん:つまり私たちは普通に仕事をして生活しているだけで、十分に社会の役に立っているし、意義や価値があるわけです。自己肯定感はそういうところから感じることだってできるはずです。
シマオ:ふだん意識はしないですが、もっと自分に自信を持っていいんですね!
若者こそ地方に目を向けよ
佐藤さん:それらを大前提にした上で、ぜひハローワークで正社員採用を第一の目標にしてほしいと思います。
シマオ:この際、派遣から足を洗って、なんとか正社員を目指すべきだと。
佐藤さん:そう思います。もちさんにとっていま一番必要なのは生活の安定です。給与の額はもちろんですが、さまざまな保障、福利厚生を考えるとやはり正社員を目指すべきでしょう。
シマオ:ご本人はITエンジニアを目指してITパスポートを取られたようです。やはりIT関連の会社を狙うということでしょうか?
佐藤さん:望みの業種や職種で採用されるに越したことはありませんが、この際どんな仕事であれ正社員採用を目標にした方がいいでしょう。事務職でもいいし、接客でも、受付、清掃でも、何でもいいと思います。
シマオ:でも、未経験の仕事に飛び込むのはハードルが高いですよね? はたしてうまくいくかどうか……。
佐藤さん:それを言うなら、ITエンジニアも初めての職種でしょう? 初めての仕事に就く覚悟があるなら、ほかの職種にも間口を広げてもいいはずです。正社員で採用してもらえる条件なら、飛び込んでみる価値はあると思います。
シマオ:ただ、正直な話30代後半で正社員採用はなかなか難しいのではないでしょうか?
佐藤さん:それは東京を中心に首都圏の会社しか見ていないからそう思うのです。若い世代こそ、地方に目を向けるべきです。
シマオ:どうしてでしょうか?


























