- BUSINESS INSIDER
- 国際
- イーロン・マスクはAIによる雇用喪失への「最善の対策」は政府給付金だと述べているが、そうではないと考える専門家も多い

- イーロン・マスクは、AIによる雇用減少への対応として、政府による給付金が「最も有効な方法」だと述べている。
- テスラとスペースXのCEOであるマスクはXへの投稿で、AIやロボット技術によって実現するユニバーサル・ハイインカムを提唱している。
- 一方で専門家は、これまでの経済成長でも貧困は解消されておらず、人々に必要なのは給付ではなく再教育だと指摘している。
イーロン・マスク(Elon Musk)は、AI(人工知能)による雇用の減少に対する解決策として、政府が国民全員に十分な生活を送れるだけの資金を支給する仕組みが必要だと考えている。
「連邦政府が小切手の形で支給するユニバーサル・ハイインカム(Universal High Income:UHI)こそが、AIによって生じる失業に対処する最も有効な方法だ」とテスラ(Tesla)とスペースX(SpaceX)のCEOは2026年4月16日にXに投稿している。
「AIやロボット技術は、世の中に出回るマネーサプライの増加をはるかに上回る商品やサービスを生み出すため、インフレは起こらないだろう」と彼は付け加えた。
— Elon Musk (@elonmusk) April 17, 2026Universal HIGH INCOME via checks issued by the Federal government is the best way to deal with unemployment caused by AI.
AI/robotics will produce goods & services far in excess of the increase in the money supply, so there will not be inflation.
AIは今後数年で、アメリカの労働力のうち相当な割合の雇用を失わせると広く予測されている。BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)は2026年4月、今後5年間でアメリカの雇用の10%から15%が失われる可能性があると予測しており、約1700万人から2500万人に影響が及ぶとしている。ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)が2025年に公表した分析では、アメリカの労働者の2.5%が職を失うリスクに直面する可能性があるとされている。
ユニバーサル・ハイインカム(UHI)は、ユニバーサル・ベーシックインカム(Universal Basic Income:UBI)をより手厚くした仕組みだ。資産状況に関わらずすべての市民に対して定期的に現金を支給する制度であり、使い道に制限はなく、返済の必要もないと定義されている。
UBIが住宅費や食費、光熱費といった基本的な生活費を賄うことを目的としているのに対し、UHIはより余裕のある生活を送れるだけの資金を人々に支給する。
技術革新の専門家であり起業家のピーター・ディアマンディス(Peter Diamandis)は、「UHIは単に支給額を増やすことで実現するのではなく、食料やエネルギー、医療、教育に至るまであらゆるコストを引き下げることで実現可能になる」と述べている。
2026年3月、ディアマンディスはサブスタック(Substack)に、「AIやロボットによって、生活費を構成する5つの主要分野のコストが半分以上に下がれば、現在はかろうじて最低限の生活費を賄う程度にすぎない月3000ドル(約48万円)の給付でも、実際にはかなり豊かな暮らしが成り立つようになる」と投稿している。
「支給額が増えるわけではない。世界のほうが安くなるのだ。それによってUBIがUHIへと変わる」と、ディアマンディスは付け加えている。
ジョージタウン大学カタール校(Georgetown University-Qatar)の哲学教授で、UBIに関する著者を持つカール・ワイダークイスト(Karl Widerquist)は、UBIが基本的な生活費以上をカバーし得るという点で、「マスクの指摘は正しい」とBusiness Insiderに語った。また、「自動化やコンピューター化、AIなどの影響よって、GDPに対するベーシックインカムの支給コストは低下している」とも彼は指摘している。
ただし、問題の本質は失業ではなく「賃金の低さや給与の伸び悩み」にあるとして、そこに焦点を当てるマスクの見方は誤っているとも付け加えている。
「インフレについては、マスクの予測が現実になる可能性はあるが、それをあてにするべきではない」とワイダークイストは述べている。その上で、過去50年間でGDPは何倍にも増えたにも関わらず、その恩恵の大半は富裕層にわたり、貧困は解消されないままであることを強調している。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London)のリサーチ・フェローであるジェームズ・ランサム(James Ransom)は、「仮に手厚いユニバーサル・ハイインカムを支給する余裕があるのなら、人々の再教育やリスキリングにも十分に資金を回せるはずだ。実際にエビデンスが示しているのは、大多数の人々が実際に必要としているのは後者だ」とBusiness Insiderに語っている。
ランサムによると、彼の研究では、今後数年間で「多くの労働者に生産性のボーナス(棚ぼた的な利益)」がもたらされることを示唆しているが、それを得るために労働者自身が求めているのは、「小切手(給付金)ではなく、スキルアップだ」という。
さらに彼は、「実際に職を失う人にとっても、適切に行われた再教育は、ベーシックインカムでは得られない主体性や自尊心を保つことにつながる」と付け加えている。


























