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商社でいま何が起きているのか
なぜ三菱商事は返り咲けるのか。伊藤忠との決算比較で見る“商社力”【専門家分析】

総合商社各社の2025年度決算(2026年3月期決算)が出そろいました。いわゆる「トランプ関税」など不透明な事業環境のなかでも、各社は堅調な業績を維持しています。なかでも注目されるのが、ここ数年トップ争いを続ける伊藤忠商事と三菱商事です。
伊藤忠商事は2026年度に純利益9500億円を見込む一方、三菱商事は2025年度に一度減益となりながらも、2026年度には1兆1000億円へ回復し、再び首位に立つ見通しです。
ただ、両社の違いは単なる利益規模ではありません。 本稿では、両社の決算を要素分解することで、総合商社2強の「利益の作り方」の違いを読み解いていきます。
「三つの戦略」を見ると、各社の強さが見える

伊藤忠商事と三菱商事の競争を決算数値から読み解くと、そこから見えてくるのは「全社戦略」「事業戦略」「財務戦略」を一体で捉える重要性です。
普段、「経営戦略」や単に「戦略」と一括りにされがちな言葉ですが、まずはこの3つの「戦略」を整理しておきましょう。
全社戦略とは、複数の事業をどう組み合わせ、最適な事業ポートフォリオをつくるかを考える戦略です。どの事業に経営資源を配分するのか、どこに進出し、どこから撤退するのかを決める。つまり、「何をやり、何をやらないか」を定める戦略です。
事業戦略とは、それぞれの事業で競争優位をどう築き、維持するかを考える戦略です。たとえば高級車市場でいえば、レクサスがベンツやBMWとどう戦うか、という話になります。このため、事業戦略は「競争戦略」とも呼ばれます。
財務戦略とは、資金の調達・運用・配分を通じて、全社戦略と事業戦略を実行に移していくための戦略です。近年のCFOは、従来の資金調達や投資だけでなく、無形資産や人的資本への投資まで視野に入れ、定量データをもとにCEOの意思決定を広く支える役割を担っています。
事業で稼ぐ伊藤忠、再編で稼ぐ三菱

上記のチャートは、伊藤忠商事、三菱商事の純利益の内訳を基礎収益、一過性損益の別で捉えたものです。
伊藤忠商事は基礎収益が2024年度の7700億円から2025年度の7815億円に増加しました。一過性損益は900-1200億円の水準で安定的に推移しています(チャートでは2026年度予測に一義的な一過性損益900億円にバッファとしての▲400億円をネットした500億円を表示)。つまり、事業そのものの稼ぐ力で利益を積み上げていく色合いが強いといえます。
対照的に、三菱商事はポートフォリオの組み替えを通じて利益を生み出す色合いが強くなっています。基礎収益にあたる巡航利益は、2024年度の6819億円から2025年度には7037億円へ増加し、2026年度には8200億円まで伸びる見通しです。
ただ、同社の利益構造を特徴づけているのは、一過性損益の大きさです。2025年度はリサイクル・特殊要因などによる一過性損益が968億円まで縮小したことで、純利益が伸び悩みました。しかしその前後の2024年度は2688億円、2026年度予想では2800億円と、純利益に占める比率が高い。
つまり三菱商事は、資産売却や事業再編を通じてポートフォリオを絶えず入れ替え、その過程で利益を創出している側面が大きいということです。2025年度はむしろ例外的な年で、毎年2000億円台後半のリサイクル益計上が実力値だとみれば、2026年度に総合商社トップに返り咲くことは自然な流れだと理解することができます。
伊藤忠商事と三菱商事の純利益の内訳を比較してみると、伊藤忠商事は基礎収益の収益力に強みがある、言い換えると稼ぎ方として事業戦略の領域で強みがあり、三菱商事は伊藤忠商事との比較において一過性損益、言い換えると全社戦略の領域で強みがあると言えるでしょう。
来期計画ににじむ戦略思想

これを踏まえて、両社の2026年度の業績予想を詳しくみていきましょう。
伊藤忠商事の2026年度(2027年3月期)の連結純利益は、3年連続で過去最高となる9500億円を見込んでいます。日立建機や伊藤忠食品からの取込利益増加など、新規の投資から650億円の利益貢献を見込むほか、デサントやCTC(伊藤忠テクノソリューションズ)といった主力事業のオーガニック成長で400億円、原料炭事業の立て直しで250億円を稼ぎ出し、基礎収益を確実に底上げする計画です。
三菱商事は2026年度、巡航利益が前年比1163億円増、一過性損益(リサイクル・特殊要因)が同1832億円増と、ともに大きく増加します。これは米国シェールガス事業の新規連結、事業再編関連損益の効果が最も大きいようです。このほか海外食品原料事業で傘下事業の売却が予定されています。事業の成長による収益力の強化と積極的な資産の入れ替えを組み合わせることで力強い増益を果たし、企業価値の向上を目指す構えです。
三菱商事を支える強みは

三菱商事は、2024年度時点で豪州原料炭事業の売却を行うなど、かなり本格的な事業ポートフォリオの見直しを進めており、2026年度に向けて新たな投資先が注目される状況でした。
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