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- キリン「晴れ風」はなぜ伸びる? リニューアル発表後初動で前年比売上150%の伸長のワケ
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キリンビールが2026年春にリニューアルした「キリンビール 晴れ風(以下、晴れ風)」の売れ行きは、前年比約150%*と好調な滑り出しだ。
*タイトルの「売上150%」および原稿内の「前年比約150%」とは、リニューアルコミュニケーション開始日から 3週間(2026年3月23日~4月12日)におけるキリンビール出荷実績と前年同時期の実績を比較した数値です。
2年前、「ビールとしてのうまみ・飲みごたえ」と「飲みやすさ」の両立を売り物に登場した晴れ風は快進撃を続けてきた。好調な売れ行きが続くなか、なぜ今、あえてリニューアルしたのだろうか?
晴れ風の軌跡とリニューアルの狙いを、担当者に聞いた。
「晴れ風」、一番搾りに次ぐ第2の柱として広い層を狙う
晴れ風は2024年4月、同社としては17年ぶりに、標準的な価格帯で幅広い層を狙う新たな主力ブランドとして発売された(プレミアム・クラフト・販売先限定品・既存ブランド派生品を除く)。

原材料は、麦芽とホップのみ。麦芽100%ビールであることが特長で、いわゆる副原料は一切使っていない。ホップは、柑橘系の爽やかな香りを特長に持つ国産の希少ホップ「IBUKI」を採用。厳選した麦のうまみを雑味なく引き出し、国産希少ホップの香りが穏やかに香るよう仕上げたビールだ。
同社は、晴れ風を看板商品である「キリン 一番搾り生ビール」に続く第2の柱に育てることをめざし、販売してきた。
晴れ風のブランドマネージャーである野際陽介氏(同社マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当)はターゲット層について、こう話す。
「普段ビールを手に取ることが少ない若い方に加えて、『最近ビールが重く感じるようになった』と、いったんは他のお酒へ離れていった方を再びビールへ引きつけたかったのです」(野際氏)

晴れ風は、2024年の新発売から約1カ月間の売上で見ると、キリンの過去15年間のビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)新商品の中で最大を記録。発売から2026年2月までの売上は350ミリリットル換算で4億本を突破した。
2025年4月からは飲食店向けにも、中びんと、次世代ビールサーバー「TAPPY(タッピ―)」の3リットルペットボトルを提供しており、約2万店*が導入済みだ。
*2026年2月時点
また、発売初年の2024年には日本食糧新聞社「第43回食品ヒット大賞」を受賞したほか、複数のビアコンペティションでも評価されている。

原材料は、麦とホップのみ。限られた原料で、おいしさをどう進化させるか
発売から2年。順調な売上を見せていたが、同社では「ビールづくりに、完成はあっても完璧はない」という考えの下、成長を加速するべく、リニューアルを決断した。ビールに限らず、定番商品は市場変化や技術、原材料の改良に伴う不断のリニューアルが欠かせない。
リニューアルのタイミングは、市場や生産環境に左右され、商品ごとに異なる。晴れ風の発売2年でのリニューアルは、少し早いタイミングとも言える。
とはいえ、その前提にあったのは、今まで愛飲してきた人にも引き続き支持されること。従来の魅力を損なわずに進化させられるかを慎重に見極めたうえで、刷新に踏み切った。

晴れ風のリニューアルの難しさの原因は、原材料のシンプルさにある。先述の通り、原料は麦芽とホップのみ。一部の原料や配合を変えるだけで全体のバランスが崩れる。
この難条件で、「飲みごたえ」と「飲みやすさ」のさらなる両立を追求した、「もう一杯飲みたくなるようなおいしさ」を目指し、中味開発に挑んだ。飲みやすさは維持しながら、より満足感のある味わいにするためのバランス調整を徹底したという。

マーケティングと開発、双方のチームが数十回の試飲を重ね、3つの進化ポイントにたどり着いた。いずれも、飲みやすさを守りながら満足感を高めるための工夫だ。
1つ目は、より麦のきれいなうまみが感じられるよう、より低温で時間をかけた仕込みへ変更としたことだ。
2つ目は清涼感のあるアロマホップを採用したこと。これら2つのポイントによりすっきりした飲み口を実現した。
そして3つ目のポイントは、発酵条件の見直しによって、後味の「締まり」が向上したことだという。晴れ風の中味開発を担当した醸造家、亀岡峻作氏(同社マーケティング部商品開発研究所)もこう語る。
「開発でもっとも難しかったのはバランス調整。特長的な素材で個性を立てる「足し算」ではなく、あえて「引き算」の発想で必要な要素のみを残し、シンプルな素材の良さをとことん引き出すことを大事にして設計しました」(亀岡氏)

単なる「軽さ」ではない、「飲みやすさ」と「ぐっと締まる後味」。磨き上げた味のバランス
同社の事前調査では、リニューアル品は「飲みやすさ」のスコアが従来品比5%増、「麦のうまみが味わえる」のスコアが同13%増*となった。軽さに寄せればうまみが薄れやすく、うまみを強めれば重くなりがちななかで、両立が難しい2つの価値をそろって引き上げたことになる。
*キリンビール調べ N=127
この結果へたどり着くまでの試行錯誤について野際氏は、「単純に飲みやすさを追求すると、水のようにシャバシャバした飲みものになって、ビールとしての味わいがなくなる。ビールとしての味わいがありながらも飲みやすいという、今までになかったバランスを創りたかった」と語る。

一方で亀岡氏も、飲みやすさについてこう振り返る。
「晴れ風の「飲みやすさ」とは単なる味の軽さではなく、素材の味をきれいに引き出した、バランスの良い味わいだということ。もともと日本食や醤油など和食に合う設計でしたが、 今回はさらにぐっと締まる後味になったことで、食事との相性がより高まり、お客様の毎日に寄り添う味わいに磨き込めました」(亀岡氏)
リニューアル初速で前年比約150%*、進化した味はどう消費者に響いたか
*リニューアルコミュニケーション開始日から 3週間(2026年3月23日~4月12日)におけるキリンビール出荷実績
現代はビールの楽しみ方が多様化し、顧客一人ひとりの"おいしさの感じ方"も異なる。だからこそ晴れ風は、刺激や強さを前面に押し出すのではなく、素材の良さを生かしたプレーンでシンプルな味わいであることを大切にしている。それは、今回のリニューアル品でも同様だ。
マーケティング・開発の合同チームでは、試行錯誤を経て「この味ならば、晴れ風のコンセプトに合致しているし、進化していると言える。お客様にもきっと受け入れられるはずだ」と判断し、踏み切った。量産体制を整えて、リニューアル品を1月末から順次出荷し、従来品から置き換えていった。
3月末には全国でリニューアル品が量販店の店頭に並び、リニューアルコミュニケーション開始日から 3週間の売上(2026年3月23日〜4月12日)は前年比約150%*に上った。
*キリンビール出荷実績

同社のX(旧ツイッター)に寄せられた消費者からの反応は、「爽やかな香りで飲み口すっきり」「キリッとした淡麗(原文ママ)さとコク・旨みがさらに進化」といった好評価が多い。一方で、「前の方が良かった」「なぜ変えるのか せっかく気に入って飲んでいたのに」といった否定的評価も一部だがあった。同社は、そうした意見も受け止めながら今後のビール開発に反映する方針だ。
市場拡大の担い手となるか。晴れ風が担う独自のポジション
2026年10月には、ビール類の酒税一本化という、ビール市場の拡大が見込まれる商機も訪れる。ビール類の酒税は350ミリリットル缶あたりが54.25円に統一され、価格を意識して発泡酒や新ジャンルを購入していた消費者がビールにシフトしてくることが予想される。
こうした市場環境も踏まえて同社が設定した2026年の晴れ風の販売目標は、前年比118%に当たる約580万ケース(大びん換算)だ。
ビール業界は、ロングセラー除き、新商品が出ては消えて行った歴史がある。 キリンの旗艦ブランドである一番搾りに続く定番になるには、何が必要か。
野際氏はこう展望を描く。
「一番搾りにも晴れ風にも、ビール市場を拡大する役割がありますが、アプローチが異なります。晴れ風は、ビールにおける新しいおいしさ・味と、桜や花火大会など日本の風物詩を守る活動に売上の一部を寄付する『晴れ風ACTION』という独自の価値を持つのです。ビールから距離を置いているお客様が、 晴れ風を手に取ることで『ビールって魅力的だよね』と感じ、ひいてはキリンビール全体で市場を活性化できれば嬉しいです」(野際氏)




























