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一生に一度は見たい東京美術案内
一生に一度は見たい「絵画を超えた版画」(町田市立国際版画美術館)

美術評論家・ノンフィクション作家の野地秩嘉が、社会人の教養として「一生に一度は見たい美術品」をご紹介。今回はデューラーの名を世に知らしめた『ヨハネの黙示録』より《四人の騎者》を取り上げます。
デューラーと北方ルネサンス
この木版画が発表された1500年頃といえば日本は戦国時代が始まった頃だ。デューラーがいたドイツではマルティン・ルターが宗教改革(1517年)を始める前になる。
アルブレヒト・デューラー(1471-1528年)は、北方ルネサンスを代表する画家、版画家、デザイナーとして活躍した。油彩画ではキリスト教の主題や精密な肖像画を描いた。木版画、銅版画では極端に細い線と複雑な絵柄を組み合わせた。また、デューラーは自分自身を正面から見つめる自画像を描いている。芸術家が「個性を持つ人格」として社会に登場するきっかけをつくった人物でもあるとされている。イタリアで学んだ遠近法や人体の比例理論をドイツにもたらした北方ルネサンスの重要な芸術家だ。
北方ルネサンスとは文字通り、北ヨーロッパでのルネサンス運動をいう。イタリアから始まったルネサンスの運動は15世紀後半以降、フランス、ドイツ、ネーデルランド、ポーランドに伝わった。デューラーのよく知られる絵画作品には《自画像》《東方三博士の礼拝》《四人の使徒》、水彩画の傑作に《野うさぎ》《芝草》、そして、版画には《メレンコリアⅠ》がある。
『ヨハネの黙示録』をデューラーが解釈
町田市立国際版画美術館が所蔵するのは、『ヨハネの黙示録』の中の一枚、《四人の騎者》だ。ホームページには次のような作品解説がある。
手に弓や剣、天秤などをもち、馬にまたがった四人の人物が、人々を蹴散らしながら猛スピードで走り抜けていきます。彼らは地上の人々を滅ぼすよう神に命じられたのです。『黙示録』と呼ばれる聖書の一説をデューラーは迫力ある木版画であらわしました。
(町田市立国際版画美術館公式サイトより引用)
続いて、こう書いてある。
『黙示録』は全部で15枚、表紙を入れると16枚からなります。木版画が刷られた紙面の裏には聖書の黙示録の文章が印刷されており、綴じあわせて書物のかたちで世に出されました。デューラーは黙示録の文章と版画とを、見開きで眺めることができるようにしたのです。ただ、描かれた場面は向かい合わせの黙示録の文章と必ずしも一致していません。デューラーの画像は文章を忠実に追ってはいないからです。
描かれた場面は大胆な省略や複合が施されています。活版印刷術が登場してかれこれ半世紀。多くの木版挿絵が入った聖書も多くみられるようになったこの時代にデューラーが作り出したのは、木版画と聖書の言葉が独立しつつ響きあう、そんな作品だったのです。本作の驚異的な木版画の力強い表現力は、まだ20代後半だった作者の名前を一躍有名にしました。
(町田市立国際版画美術館公式サイトより引用)
『ヨハネの黙示録』は『新約聖書』の最後に配された聖典。『新約聖書』の中で唯一預言書的性格を持つとされる。
「四人の“騎者”」は騎士ではない

この版画のタイトルは日本語では《四人の騎士》とされていることが多い。だが、英語ではFour Horsemenだ。四人の馬に乗る者という意味なので、騎馬で戦う騎士のことではない。
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