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- 社会保障改革は本当に現役世代の負担減につながるのか。OTC類似薬、高齢者窓口負担増…制度改正の論点

社会保障改革が本格的に動き出そうとしている。
2025年10月、自由民主党と日本維新の会による連立政権合意書が結ばれ、両党による社会保障制度改革協議体が発足した。この合意書では、まず過去の三党合意等を引き継いだ「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し」などの具体化が掲げられ、次に、さらなる抜本改革に向けた13の施策が提示されている。政府は2026年夏頃から制度設計を開始し、順次実行する見通しだ。
これら一連の合意内容は一見すると詳細が見えにくい。ただし、読み解いてみると今後の医療政策の輪郭が浮かび上がってくる。私たちの日々の「医療費」や「現役世代の保険料負担」にも、直接関係してくる問題だ。
あなたの生活に関わるこの記事のポイント
- 花粉症薬、胃腸薬などのOTC類似薬で追加負担が増える
- 軽症で重症化の懸念がない場合は、病院受診ではなく薬局でOTC医薬品の購入を推奨
- 窓口負担1〜2割で経済力のある高齢者は、窓口負担が増える可能性あり
- 現行制度のままだと、高齢者の窓口負担が増えても現役世代の保険料が上がる
OTC類似薬の購入に追加負担

まず、「OTC類似薬」についてだ。
2026年5月成立の健康保険法改正を受けて、2027年3月からOTC類似薬の一部に患者の追加負担が求められる見通しだ。
薬は、大きく分けて処方箋に基づいて調剤される「医療用医薬品」と、ドラッグストアなどでも購入できるいわゆる「OTC医薬品」に分けられる。ただ、日本では医療用医薬品の中に、副作用などのリスクが高く法律上処方箋(医師による判断)が必須とされる「処方箋医薬品」と、処方箋医薬品ではない、つまり相対的にリスクが低いもののメーカーの申請によって医療用医薬品として承認されている薬が混在している。
政府はOTC類似薬の定義を示していないが、この「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」を「OTC類似薬」と考えると今回の制度改正の本質を理解しやすい。
医療用医薬品は、公的医療保険の対象だ。つまり、今回の法改正は、本来リスクが異なる処方箋医薬品とOTC類似薬が共に公的医療保険の対象となっている状態が、医療負担を高める要因の一つとして問題視された結果だと言える。
処方箋医薬品以外の医療用医薬品(OTC類似薬)は約7000品目にのぼり(図表2)、このうち成分と一日最大容量が同じOTC医薬品が存在する77成分、約1100品目が今回の制度改正の対象となる。例えば、花粉症薬、胃腸薬、湿布薬などが挙げられる。

現状、現役世代はOTC類似薬を処方された場合3割の自己負担で購入できる。ただ、制度改正後、対象の品目では、患者は「特別の料金」として薬剤費全体の4分の1の負担が求められ、その上で残りの4分の3に対して3割が自己負担となる。薬剤費全体の47.5%が自己負担になる計算だ。従来の制度に比べて、約17ポイント負担額が上がることになる。
こうした制度改正の主目的は、薬の入手を目的としたいわゆる「お薬受診」など必要性の低い受診を減らし、医療費を削減することにある。
わが国は外来受診回数が極めて多い【以下、図表2】。

政府としても、風邪や花粉症などの軽症で薬を使いたい場合、患者が薬局で薬剤師と相談して薬を購入するセルフメディケーションを推進している。適切にOTC医薬品を購入できれば、医療費は減る見込みだ。
政府は、本制度改正による医療費削減効果を年間約900億円と見込んでいる。なお、患者の自己負担分については、薬代だけで見れば確かにOTC医薬品の方が高いものの、診察料や調剤技術料なども踏まえるとケースバイケースとなる。
わが国は人口当たりの薬剤師数が世界的に突出しているうえ【以下、図表3】、薬学部は6年制で薬剤師の能力も高い。受診が必要な症状と判断される場合、薬剤師が患者に医療機関の受診を勧奨することで、自己判断により必要な受診が遅れ重症化する事態を防ぐ想定だ。

患者へのしわ寄せ防ぐには
患者への追加負担による最大の懸念は、経済的な理由で患者が治療に必要な薬を入手しにくくなることだ。一般的にOTC類似薬は1錠10円程度と安価なものが多いものの、なかには比較的高価で、慢性疾患で継続的に用いれば負担が大きい場合もある。このため、一定の慢性疾患患者などへは追加負担の対象外とするなどの配慮が必要であり、2026年夏ごろに、詳細な制度設計が決定される見通しである。
2027年度以降に向けて、自民党と日本維新の会の合意書では、「特別の料金」の割合の引き上げや対象品目の拡大を検討する旨が記載されている。
もっとも、患者の負担を抑制しつつセルフメディケーションを推進するには、これだけでは足りない。筆者としては、OTC類似薬の処方箋を不要とする必要があると考える。
同じ成分であっても、OTC医薬品は小規模生産であったり、多額の広告宣伝費をかけたりするために、OTC類似薬より割高な場合が多い。さらに、成分によっては、OTC医薬品はOTC類似薬より成分量が少なく切れ味に劣る場合も多い。安価で切れ味のよいOTC類似薬を、処方箋なしで薬剤師から購入できるようになれば、患者の利便性が高く、経済的負担も軽減される。そもそも、処方箋医薬品以外の医療用医薬品に、原則として処方箋が必要とされるというわが国に特異のダブルスタンダードな規制こそが、OTC類似薬を巡る問題の根源にある。


























