



























宮崎県日南市飫肥の城下町に、築100年の洋館を再生したベーカリー「おびにたすき」がオープン。歴史的な建物を次の100年につなぐことを目的としたプロジェクトは、地元の設計デザイン会社が主導。初夏の風が吹く飫肥の街並みに、焼き立てのパンの香りが新しい活気を吹き込む。
九州の小京都として知られる日南市飫肥。

情緒あふれる城下町が広がる。

その街角に佇む、築100年の洋館「旧梅村邸」。5月30日、旧梅村邸をリノベーションしたベーカリー「おびにたすき」のプレオープンセレモニーが開催された。

ベーカリーの完成を祝うテープカットでは、紅白のテープではなく「フランスパン」を使用。

店内には、クロワッサンやシナモンロールといったヨーロッパの伝統的な製法を取り入れたパンが常時30種類並ぶ。
訪れた人からは「すごくおしゃれで素敵な場所だなと。なかなかないですね。日南には」「朝早くに開いているということなので、うれしい」との声が聞かれた。
洋館を再生し、ベーカリーをオープンさせたのは、飫肥に事務所を構える設計デザイン会社「PAAK DESIGN(パークデザイン)」だ。

構想から3年を費やし、クラウドファンディングや国からの補助金も活用。総事業費1億3000万円を投じたこの大規模なプロジェクトは、会社にとって「挑戦」だった。
PAAK DESIGN 鬼束準三社長:
通常、建設プロジェクトだと1年ぐらいでオープンさせることが多いと思うんですが、倍以上の時間がかかってしまいまして。僕の気持ちとしては、やっとという気持ちが強いですけど、オープンできたことにはホッとしております。

再生にあたっては、扉や柱、欄間などは当時のものを可能な限り活用。薄いピンクと青みがかった白で装飾された外観は、軒下にわずかに残っていた当時の塗料を基に忠実に再現された。
店名の「おびにたすき」は、ことわざの 「帯に短し襷に長し」に由来する。和洋折衷の建築様式を持つ洋館から着想を得たものだ。

PAAK DESIGN 鬼束準三社長:
帯にも襷にもならない中途半端で役に立たないものを指す慣用句なんですけど、建物がちょうど大正時代に建った和洋折衷の建物でその中途半端さがすごい魅力。それを使って「おびにたすき」と名付けました。

日南市飫肥は県内有数の観光地だが、2015年の約22万8000人をピークに観光客が減少。コロナ禍を経て、かつての賑わいを完全には取り戻せていない。
鬼束社長は、ベーカリーを「観光の新たな目的地」にしたいと考えている。

PAAK DESIGN 鬼束準三社長:
高速道路は通ったんですけど消費が外に流出している中、地域の皆さまをターゲットとしたお店もつくりながら、観光地・飫肥ということなので、観光客の方にたくさん来ていただければ、我々も稼ぐことができますので、末永くこの場所を守っていけるんじゃないかなというふうに思っています。
かつてこの場所を彩った人々の営みは、形を変えて、今度は焼き立てのパンの香りと共に未来へと受け継がれていくことだろう。静かな城下町に灯った新しい明かりは、観光客と地元の人々が共に過ごす、かけがえのない時間を作っていく。100年後の未来へ、この美しい洋館が「おびにたすき」としてどのような物語を紡いでいくのか。飫肥の街を訪れた際は、ぜひその歴史の証人となってほしい。
(テレビ宮崎)
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