




















近年、いわゆる“墓じまい”や“墓の引っ越し”が増える中、寺離れの動きに歯止めをかけると共に地域の活性化につなげていこうと、藤枝市の由緒ある寺が境内に貸別荘を造った。
~松に花 咲く藤枝の 一王子 宮居ゆたかに 幾千代を経ん~
平安時代、源義家が詠んだ和歌が地名の起源とも言われる藤枝。
市のほぼ中央に位置する蓮華寺池公園は東海道随一の藤の名所として知られ、毎年4月から5月にかけて行われる藤まつりには約12万人が訪れるほか、市章は藤の花弁がモチーフとなっている。

ただ、かつては東海道沿いに40軒前後の旅籠が立ち並んだ宿場町も今は昔…。
現在は観光客をターゲットとしたホテルやゲストハウスがない、いわば“宿のない元宿場町”となっていて、市民も「“通り過ぎる”人が多いのではないか」と自嘲気味に話す。

そこで、藤枝の地をより満喫してもらおうと貸別荘をつくる取り組みが進められていて、 その舞台となるのは由緒ある寺だ。
蓮華寺池公園から歩いておよそ10分。
今から770年ほど前に建立された大慶寺。

大場唯央 住職によれば、江戸時代は藤枝宿のランドマーク的存在だったという。
境内にそびえ立つ“久遠の松”は、日蓮宗の開祖・日蓮によって植えられたと言われ、日本の名松100選にも選ばれている県の天然記念物だ。

研修や体験学習の一環として寺に宿泊すること自体は珍しくないが、今回始めるのは個人客を対象とした一棟貸しで、大場住職は「藤枝には朝ラーメンという文化があるし、旧東海道には昔ながらの飲食店もある。観光の側面からいろいろ効果があるのではないかと思った」と話す。
一方、背景には大慶寺が抱える特有の事情もある。
現在、檀家のおよそ15%が県外在住。

全国的に増えている、いわゆる“墓じまい”や“墓の引っ越し”の波がやってこないとも言い切れない。
そこで観光客にとっては藤枝を堪能するための拠点に、檀家にとっては家族と共に故人の在りし日をゆっくり偲ぶ場所にとクラウドファンディングを実施すると約350万円もの支援が寄せられ、大場住職は「寺の存続と地域の存続はニアリーイコールだと思う。寺こそ地域に関わる必要がある」との認識を示した上で、「私のところには地域の情報があるので有能なコンシェルジュになれる自信がある」と言い切る。
貸別荘として新設したのは“観松蔵”で、その名の通り建物2階の正面には“久遠の松”が見える。
また、宿泊客には写経や瞑想、夜の供養など仏教に関わる様々な体験を用意していて、大場住職は「この寺で大切にしているのは“心かえる寺”。心が故郷に戻ってきたような“帰る”という意味とマインドチェンジにより心を“変える”という意味があるので、自分の原点に立ち返ると同時に『あすからも頑張ろう』というマインドチェンジができる寺になっていきたい」と意気込む。
4月末には宿泊客の本格的な受け入れ開始を前にプレイベントを開催すると、来場者からは「きれいで泊まりたくなった。東京などから友達にも来てもらいたい」「この地域が活性化すればいい」といった声が聞かれた。
長きにわたり街の歴史を見つめて来た大慶寺。
地域の活性化に向けて、いま新たな一歩を踏み出した。
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