























毎年5月、鳥取県三朝町に重さ2トンの大綱が引き出される。
国の重要無形民俗文化財にも指定された伝統行事『三朝の陣所』だ。
しかし今、150年以上にわたって地域を支えてきたこの祭りが、静かな危機を迎えている。
「自分の代で終わらせたくない」…そう語る三朝区の藤井博美区長の言葉に、地域の苦悩がにじむ。
『三朝の陣所』は、毎年5月3日と4日に三朝温泉街で行われる大綱引きの行事だ。
住民が東西に分かれ、長さ約80メートル、重さ2トンの大綱を引き合い、その年の豊作や商売繁盛を占う。
1873年(明治6年)に始まったとされ、150年以上の歴史を持つ。
国の重要無形民俗文化財にも指定されており、地域の誇りとして受け継がれてきた。
行事を主催してきたのは、三朝温泉街の集落「三朝区」だ。
かつて2003年には250戸以上が加盟していたが、現在は187戸にまで減少。
住民の平均年齢は60歳と、高齢化が著しく進んでいる。

三朝区の藤井博美区長は「人がいない。このままでは将来的に維持が難しい」と、行事の存続に強い危機感を抱く一人だ。
大綱を運ぶだけでも約80人の人手が必要だが、近年は集落内だけでは足りず、ほかの集落に応援を頼みながら何とか行事を続けてきた。
それでも存続への限界はじわじわと迫っている。
「ずっと今まで集落でやってきた。我々の誇りでもあったが、もうそういうことを願う部分はもう無理なのかな」と藤井博美区長。
集落が自力で守り続けてきたからこそ感じる誇り。
そして、その誇りを手放さざるを得ない葛藤が、藤井区長の言葉から伝わってくる。

ついに限界を感じた藤井区長は、2026年4月、三朝町に対して「来年から運営の主体を町に移したい」と申し入れた。
150年以上、地域住民が自らの手で守り続けてきた行事を、行政に委ねる決断だ。
しかし、町の対応は現時点では保留となっている。
「正式な手続きが行われていない」というのがその理由だ。
申し入れから解決への道筋は、まだ見えていない。

それでも藤井区長は「自分の代で終わらせたくない。陣所はこれからも残りますよと、こういう形で残るという部分を形作って、次お願いしますっていうふうに引き継いでいきたい」と、あきらめる姿を見せない。
運営の主体が変わっても、大綱を引く光景そのものは残してほしい…その思いが、藤井区長を動かし続けている。
2026年の綱引きが、集落主体で開かれる最後の陣所になるかもしれない。
重さ2トンの大綱に込められた150年分の歴史を、地域はどう次の世代へ渡すのか。
三朝町の苦悩は続く。

TSKさんいん中央テレビ
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