- MASHING UP
- DEI×社会
- 女子サッカー界で加速する“白パン廃止”。「そういうものだから」を変えたSOMPOのアクションの舞台裏
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「白いユニフォームが透けるのが困る」「安心して着替えられる更衣室がない」——。
女子高校生の74.1%がスポーツを「やめたい」と思った経験があり、白ユニフォーム着用者の48.7%が「困ったことがある」と回答。それでも「そういうものだから」と声を上げられずにいた10代女子たちの本音に、社会が耳を傾け始めた。
日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」のタイトルパートナーであるSOMPOグループは2025年3月に共創型プロジェクト「OUR STORIES」を始動。アスリートたちの声にならなかった違和感をすくい上げ、社会のアクションへとつなげる取り組みが今、確かな変化を生み出している。
Mashing Up(マッシングアップ)×WEリーグによる連載、第2回目のテーマは、OUR STORIESが生み出す共感と変革の輪。「10代で女子がスポーツをやめてしまう問題」に真正面から向き合う中で気づいたこと、具体的にどのような変化が生まれているのかを追った。
「スポーツをやめたいと思ったことがある」74%の衝撃

「こんなに多くの女子高校生がスポーツをやめたいと思ったことがあるとは想像もしていませんでした」(田中さん)
SOMPOホールディングス広報部でOUR STORIESプロジェクトをリードする田中翔さんは、同社が実施した「女子スポーツ特有の悩みに関する意識調査」(2025年11月)の結果を「衝撃的だった」と振り返る。
この調査は、スポーツをしている女子高校生とその保護者、指導者、高校時代にスポーツをしていた20~60代の女性、2,000名以上を対象に実施。次のような実態が明らかとなった。
- 女子高校生の74.1%がスポーツを「やめたい」と思ったことがある
- 白ユニフォームを着用する女子高校生の48.7%が「困ったことがある」と回答。「下着の透けが気になる」「汗や体型が目立つのが恥ずかしい」などの声が上位に
- 白ユニフォームに不満があっても相談しない理由は「そういうものだと思い、疑問に思わなかった」が最多
- スポーツの活動場所に更衣室が「ない(「時々ないことがある」を含む)」と回答した女子高校生は47.5%

「何より衝撃だったのは、モヤモヤを抱えながらも『そういうもの』とあきらめてしまっていることです。そもそも違和感にすら気づいていないケースも多い。
『何かあったら言ってね』と言われても、簡単に言えるものではありません。一筋縄ではいかないことにこそ目を背けず、根気強く取り組む必要があると感じています」(田中さん)
「白いユニフォームは透けるから本当はイヤ」選手たちの本音
UN Women(国連女性機関)によれば、14歳までに女子は男子の2倍の割合でスポーツから離れてしまうという。なぜスポーツをやめてしまうのか。やめずに続けられる環境はつくれないのか。
OUR STORIESが最初のテーマとして掲げたのが、「10代で女子がスポーツをやめてしまう問題」だ。現状を変えるにはまず「当事者の声」を聞く必要がある。そう考えた田中さんが声をかけたのが、WEリーグにも多くの選手を輩出している高校女子サッカーの強豪、藤枝順心高校だった。
10代女子のスポーツ離れの背景には何があるのか。ヒアリングを重ねるとこんな声が聞こえてきた。
- 「そもそも中学校に女子サッカー部がない」
- 「更衣室がなくて着替えに困ったことがある」
- 「白いユニフォームが透けるのがイヤ」
- 「生理の時に経血が漏れていないか不安になる」
「選手たちと話すと、サッカーが好きでたまらないことが伝わってきました。
一方で、『サッカーを続けたい、でも……』と心の中に抱えてきたことがたくさんあるのだと気づかされました。ここにアプローチすることで、みんなが大好きなサッカーを続けられる社会をつくっていきたい。そう強く思ったんです」(田中さん)
一人ひとりの声を集めたら「私たち」の物語になった
藤枝順心高校の協力を受け、「声」を届けるための動画企画が始動した。
WEリーグの現役選手と元選手が聞き手となり、藤枝順心高校のサッカー部と藤枝順心サッカークラブ(ジュニアユース)に所属する中高生が、サッカーを続ける中で感じている思いや願いを語り合った。
「本音の発信はとても大きな一歩」と話すのは、元サッカー日本女子代表で、現在はWEリーグ特任理事を務める近賀ゆかりさんだ。
「小学3年生の時に兄の影響でサッカーを始めたのですが、中学に上がる時、地元では女子がサッカーを続ける環境がありませんでした。たまたま知り合いから隣の市にあるチームを紹介してもらい電車で通うことができたのですが、そういった場がなければ、サッカーをやめていたかもしれません。
女子がサッカーを続けることが難しい状況は今もたくさんあると聞きますし、地方はさらに厳しい環境のようです。
まずはそのような状況を変えていく必要があり、女子サッカーを取り巻く現状を知ってもらうことには大きな意味があると感じています」(近賀さん)

例えば、女子更衣室がなくてトイレで着替えること。そうした環境を何度も経験しているうちに、はじめは疑問や違和感があっても、だんだと「そういうもの」とあえて深く考えないようになっていくのかもしれない。
しかしその「当たり前」は決して当たり前なんかじゃない、と近賀さんは語る。
「本当は更衣室が欲しいけれど、『男子は外で着替えているし、私たちだけ更衣室が欲しいなんて言っていいのかな……』と言葉を飲み込んできた選手は少なくないはずです。
もちろん女子選手の悩みにも幅があり、自分はすごく気になることが他の誰かにとっては大したことではないかもしれない。それでも、少しでも悩んだり何か変だなと感じたりすることがあるのなら、それをなかったことにせず、当たり前に声をあげられる環境をつくりたい。
動画の中の選手たちの声が、従来の『当たり前』を変える一つのきっかけになってほしいと願っています」(近賀さん)
2025年3月に動画が公開されると、共感の輪が広がり、想定以上に多くの反響があったという。「一人の “私”の物語が、周囲を巻き込み“私たち”の物語になっていくのを実感しました」と田中さん。
続いて2025年9月には静岡県藤枝市でアイデアセッションを開催。藤枝順心高校の選手、WEリーグ、地元企業、自治体、大学などさまざまなステークホルダーが集まり、白ユニフォームの変更を含む具体的なアクションを議論した。

白パンツが紺色に変更「これで思いきりプレーできる」
セッションでの議論を経て、藤枝順心高校の公式戦ユニフォームのパンツが白色から紺色に変わることが決定。「これで思いきりプレーできる」と、選手たちは笑顔を見せた。

2026年2月には、サッカー日本女子代表のユニフォームでも原則として白のパンツを着用しないことが報じられた。女性スポーツの世界では今、生理への配慮や体型の露出防止などに向け、各国の代表ユニフォームの形・色の変更や選択式への移行が進んでいる。
「日本にもようやく変化の波が訪れていることを実感します。
これまでは当たり前だと思って諦めていたこと、『こうだったらいいな』と思っていることはどんどん声に出していくべきです。
一つひとつの声は小さくても、その積み重ねで社会に変化をもたらせると信じています」(近賀さん)
なぜSOMPOが女子サッカー? その答えは……
そもそも、なぜSOMPOグループは女子サッカーを支援するのか。
「当グループは『“安心・安全・健康” であふれる未来へ』というパーパスのもと、多様な人々がありたい姿に向かって前向きに歩んでいける社会の実現を目指しています。
『女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する』というWEリーグの理念に共感し、より良い未来を一緒につくっていきたいという思いからタイトルパートナーに就任しました」(田中さん)
2024年7月からタイトルパートナーを務めるSOMPOグループは、WEリーグとともに社会連携事業「WE ACTION」に取り組み、子どもたちが選手と一緒に防災を学べるイベントや介護施設で実施するSOMPO流子ども食堂のコラボイベントなどさまざまな活動を展開してきた。

一方、OUR STORIESでは女子サッカーに関する課題にフォーカスし、解決に向けた具体的なアクションに取り組んでいる。「“人々の不安や悩みに寄り添い伴走支援する”という本業の強みをスポーツの分野でも活かしたい」そんな思いが原動力となっている。
「チャレンジしたい」を応援する社会へ

田中さんの娘さんはこの春、小学1年生になる。地域のサッカーチームに所属しているが女の子は一人だという。「小学校に上がってもサッカーを続ける?と聞いたら『続ける!』と宣言してくれました。娘がやりたいと思うことを応援し続けたいです」とほほ笑む田中さんに、近賀さんは大きくうなずく。
「保護者や大人の皆さんには、子どもがチャレンジしたいと言った時、できるかできないかではなく、まずはチャレンジさせてあげてほしいと思います。
大切に思うがゆえに『失敗してほしくない』『傷ついてほしくない』とストップをかけてしまうこともあると思いますが、一度やってみなければ本人が好きかどうか、向いているかどうかも分からないですよね。
続けることを考えるのはその後でもいいと思うんです。
女子サッカーも他のスポーツも、自由にチャレンジできる環境を社会全体でつくることが大切だと感じています」(近賀さん)
近賀さんの言葉に、田中さんも共感を示す。
「OUR STORIESは、課題をシリアスに語る場ではなく、『チャレンジしたい』と思う一人ひとりの背中を押してポジティブな応援の輪を広げるための活動です。
まだ道半ばですが、女子サッカーの枠を超え、あらゆる競技に変革の波を広げたい。より多くの人たちにOUR STORIESに参画いただけるよう活動を続けていきます」(田中さん)
日本代表として活躍した近賀さんは2025年に引退した後、現在は特任理事としてWEリーグの運営に携わるほか、指導者ライセンスの取得にも取り組んでいる。
「より多くの人にWEリーグの試合を見にきてほしい。そのために女子サッカーの価値を上げていくことがミッションです」と近賀さん。WEリーグの魅力を聞くと、「選手たちのオンオフのギャップに注目してほしい」と教えてくれた。

「プレー中の激しい動きと、ファンサービスやオフの時のギャップが魅力的な選手がたくさんいるので、選手一人ひとりの個性を見つけてもらえたら嬉しいですね。
女子サッカーを見たことのない方も、休日のリフレッシュや家族のお出かけ先としてぜひ気軽にスタジアムへ足を運んでほしい。気負わず楽しめて気づけば元気をもらえる、そんな時間を体感いただけたらと思います」(近賀さん)
スポーツが好き。ずっと続けたい——。そんなまっすぐな気持ちを誰もが持ち続けられる社会を目指して、小さな声から始まった変化は、少しずつ広がりを見せている。
[WE リーグ]
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