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- キャリアか家族か、の二択はもう古い。3児とシンガポールへ渡ったP&G女性リーダーが貫く「キャリアを止めないルール」
仲野聡子(編集:中島日和)
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「母親が主体となって海外に赴任する。そのとき、家族はどうするのか?」
「駐在妻」という言葉が象徴するように、日本で海外駐在は長らく男性中心で語られてきた。とくに育児期の女性にとって、海外拠点への転勤は「キャリアのために家族を犠牲にする」か「家族のためにチャンスを諦める」か——苦渋の選択を迫られるものになりがちだ。
しかし、P&Gの中野亜耶(なかの・あや)さんは、その問いに対し「第三の答え」を出した。
2024年8月、中野さんは別の企業で働いていた夫と、当時8歳・5歳・2歳の3人の子どもを連れ、自身2度目となるシンガポール赴任を実現した。夫は前職を退職し、現在はシンガポールのスタートアップでサステナビリティ関連の新たなキャリアを歩んでいる。
「家族の総合点として、赴任して本当によかった」そう語る中野さんの決断の背景には、夫婦で積み上げてきた“譲れないルール”と“下準備”があった。
海外駐在をためらった2つの壁

P&Gでは、アジア地域の本社機能をシンガポール拠点が担い、製品企画やマーケティング戦略の立案などを行っている。
中野さんは2008年の入社以来、マーケティングを中心にキャリアを重ね、現在はシンガポールのアジア本社で、シニアブランドディレクターとして日本・韓国市場のベビーケア(パンパース)事業を統括する。
20代の単身赴任でシンガポールへの駐在を経験し、その後日本でフェミニンケアの事業責任者などのリーダーシップポジションを経験した中野さんが、次のキャリアステップとして「アジア本社のリーダーシップポジション」を描くことは自然な流れだった。
「ここ数年、ずっとそのビジョンは持っていました。ただ、踏み込めない壁が2つあったんです」
1つは、IT・コンサルティング業界で働く夫のキャリア。もう1つは、日本で生まれ育った3人の子どもの教育環境だった。
「ひと夏の実験」が家族を変えた

ブレイクスルーとなったのは、第3子育児休暇中の出来事だ。
2022年、中野夫妻はともに1年間の育休を取得。その夏、家族でポルトガルに6週間ほど滞在し、上の2人の子どもを日本人がいない英語のサマーキャンプに参加させた。「日本以外の教育環境が子どもたちに合うのか」を、実際に試し、確かめようとしたのだ。
「言葉の壁をものともせず、友達を作り、世界を広げていく子どもたちの姿を見て、この年齢で海外に住むのは良い経験になるかもしれないと実感しました」
残る課題は、夫のキャリアをどうするかだった。
「よく、夫婦のどちらがリードキャリアを歩むかを決めて、一方があわせるという話を聞きます。でも私たちには、その発想がないんです」
中野夫妻には、長年かけて決めてきた2つのルールがある。
ひとつは「2人のキャリアを同時に形成できる選択肢を選ぶ」こと。もうひとつは「子どもが小さいうちは、別居(単身赴任)をしない」こと。
この2つを前提として、これまでも働き方や育休の取り方について、夫婦で話し合いを重ねてきたという。今回の赴任もその延長線上にあった。夫は「家族としてチャレンジし、新しいフェーズに行った方がみんなにとって良い」と同行を決意した。
「どうしてもうまくいかなかったら、帰ればいい──そういう気持ちがあったことも、決断を後押ししてくれたと思っています」
キャリアと子育ての「マラソン」を走り抜く3つのコツ
今回の赴任において、「社員が最大限の能力を発揮できる環境をサポートするP&Gの体制も支えになった」と中野さん。
赴任前の家族での下見や、語学力がなかった子どもたちへの事前英語チューターの手配、さらには夫に対するキャリアコンサルタントの提供など、本人だけでなく家族全体への支援が、スムーズな海外での新生活への移行を後押ししたという。

外から見ると華々しく映る中野さんのキャリアだが、その裏で「仕事と子育ての両立は本当に大変で、もう無理かもしれないと思う瞬間は一度や二度ではなかった」と明かす中野さん。数々の壁を乗り越えるために実践してきた、3つのマインドセットを教えてくれた。
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