- CAREER INSIDER
- キャリア
- 令和ロマン・松井ケムリ「吉本に入ったこと」が最大の転機だった。“指示待ち人間”こそ環境選びが大事
令和ロマン・松井ケムリ「吉本に入ったこと」が最大の転機だった。“指示待ち人間”こそ環境選びが大事

「やりたいことがない」「自分は指示待ち人間」──漫才日本一を決める『M-1グランプリ』で、大会史上初の二連覇を成し遂げた令和ロマン・松井ケムリさんの口から飛び出したのは、意外なほど控えめな言葉だ。
多くのビジネスパーソンが「自分軸」や「主体性」を求められるいま、松井さんは自らの弱さを認め、あえて「吉本」という巨大な仕組みに身を委ねることで結果を出してきた。
「忙しい毎日が、自分をどこかに連れて行ってくれると信じている」
そう語るキャリア観には、無理をせず、それでいて結果を出し続けるための“生存戦略”がにじむ。初のエッセイ『ナマケモノの朝は、午後からはじまる。』(2026年4⽉23⽇発売)に込めた思いとともに、仕事への向き合い方を聞いた。
芸能人を目指したのは、ちやほやされたかったから

——本日はよろしくお願いします。Business Insider Japanは経済メディアで、主な読者は松井さんと同世代のビジネスパーソンです。ちなみにこのメディアのことはご存知でしたか?
マジで知らなかったです、ごめんなさい(笑)。(大和証券 副会長の)父なら知ってると思います(笑)。
——これを機にぜひ(笑)。早速ですが、松井さんのこれまでの人生やキャリアについて伺います。幼少期はどんなお子さんでしたか?
子どもの頃は昆虫学者になるのが夢でした。それで中学受験をして、中高一貫の桐朋中学・高校に進学しました。東大の農学部に入れば昆虫の研究ができるらしいというのと、桐朋の生物部は有名だったので、この学校に行けば夢が実現できると思ったんです。鳥の鳴き声を研究している動物言語学者の鈴木俊貴先生も、桐朋の生物部出身なんですよ。
──それで実際に生物部に?
いや、なぜか卓球部に入っちゃいました。でも昆虫や動物はずっと好きでしたね。昆虫学者になるのをやめたのは、数学が嫌いだったからです。苦手じゃないけど数学嫌いはどうにもならなく、理系には進めないなと。あと中学の頃から漠然と「芸能人になりたい」と思っていて。理由はちやほやされたいからです(笑)。
──ちやほやされたいから芸能人になりたかった?
マジでそうです。それだけ。お笑い芸人じゃなくても、なれるなら俳優でも歌手でも何でもよかったんです。でもなれなそうだから芸人を目指しました。
──お笑い一筋ではなかったんですね。意外です。
中高の頃はそうですね。スターダストのホームページとか見てましたもん。でもタレント一覧の写真を見て「入れるわけないじゃん」って現実を知りました(笑)。
やりたいことはないけど、なりたい自分はいた

──「芸能人になりたい」からお笑い芸人を目指すまでに何があったのでしょうか。
芸人以外で芸能人になれる可能性が低いことが分かって、芸人という職業がだんだんリアルになってきて。高校3年生の時の大学受験では一つも受からなくて、浪人するのが面倒くさかったので「NSC※に行きたい」って親に言ったんです。そうしたら「大学には行きなさい」って普通に怒られて、一浪して慶應大学に入りました。
※吉本興業が創設したタレント養成所。通称NSC。
──慶應大学のお笑いサークルで相方の髙比良くるまさんと出会いコンビを結成されていますが、当時「こんな芸人になりたい」と憧れていた人は?
伊集院光さんです。ラジオがね、とにかく面白いんです。でもそれは、伊集院さんになりたかったというより伊集院さんが好きなだけで。どんな芸人に憧れてたかって時々聞かれるんですけど、いないんですよね。ちやほやされたかっただけなんで。やりたいことはないけれど、なりたい自分はいたみたいな感じですかね。
転機は「吉本」という巨大なレールに乗ったこと

──「自分はゼロから切り開くタイプではない」と自覚しながら、それでも夢を形にできたのはなぜでしょうか?
吉本に入ったことが大きいと思います。吉本にはバトルライブというのがあって、そこで勝ったらもっと大きなライブに出ることができる。M-1も準決勝まで残ることができれば、全国にある吉本の劇場に呼ばれることが増えます。
僕は言われたことはちゃんとやるけど、自分からやることを見つけられないタイプ。いわゆる“指示待ち人間”なんですよね。だから、レールをきちんと走ればある程度世間から認知してもらえる、芸人として活躍できる吉本の仕組みはすごく合っていました。
──環境が整っているところを選んで、「仕組み」を使い倒す。キャリアに悩むビジネスパーソンにとっても、一つの参考になりそうです。
本当に恥ずかしい話ですが、僕、頑張れない人間なんですよ(笑)。出された問題を解いてきた人生で、最低限の努力をして、それなりのところまでいけたというだけで。だから読者の皆さんに言えることがあるとすれば、僕みたいなタイプの人は、“自分が成長できるような環境を選ぶことが大事”ということです。

──M-1二連覇という実績から、“特別な才能の持ち主”というイメージをもたれることもあるかと思います。ご自身の実感との間にギャップはありますか?
うーん、今度初めて動物エッセイを出すんですが、この本には生きるための知恵や工夫がすごい動物たちと比べて、「やりたいことがない」「失敗したくない」とか自分のダメなところを結構書いちゃってますね(笑)。
──拝読しました。全編通して松井さんの飾らない魅力が伝わってきますが、これは松井さんなりの生存戦略ですか……?
あはははは(笑)。全然そんなことはないんですが、もし僕がすごい人とか思われているのなら、そういう人にこそぜひ読んでほしいですね。この本を通じてありのままの僕を知ってもらえたらうれしいです。
あわせて読みたい
Special Feature




































