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- 時価総額6300億円だったベンチャーが、たった61億円で身売り…人気スニーカーブランド「オールバーズ」がIPOの熱狂後にたどった転落
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グローバルインサイト

- オールバーズは2015年に創業し、ブランドの象徴となったウール製スニーカーで瞬く間にスターダムへと駆け上がった。
- 2021年11月に米ナスダックに上場。初日に株価が90%も急騰するという華々しいデビューを飾った。
- しかし、同社は2026年3月、ファッション雑貨中堅アメリカン・エクスチェンジ・グループによって、わずか3900万ドル(61億8150万円)で買収されることを発表した。
オールバーズ(Allbirds)は長年の赤字から抜け出すことができず、ついに身売りすることで合意した。
同社が3月30日に行った発表によると、ニューヨークに本社を置くファッション雑貨中堅のアメリカン・エクスチェンジ・グループ(American Exchange Group)に3900万ドル(61億8150万円、1ドル=158.5円)で買収されるという。
IPOの翌年から減収の連続
かつてシリコンバレーの「tech bros(テック界の意識高い系エリート)」やベンチャーキャピタリスト(VC)たちに愛され、彼らの「制服」とまで言われたウールスニーカー。しかし、ここ数年は売り上げ減少に歯止めがかからなくなっていた。
人気絶頂だった2021年のIPO(新規株式公開)初日、株価は一時、公開価格から116%も上昇。同社の企業価値は40億ドル(6340億円)にまで膨れ上がった。だが、その勢いは長くは続かず、2022年以降は四半期ごとに減収を報告し続けるという、右肩下がりの苦境に陥ったのだ。
直近の2025年11月の四半期決算では、純売上高が前年同期比23.3%減の3300万ドル(52億3050万円)にまで落ち込んでいた。2025年9月末時点の店舗数は世界23店舗(うち21店舗がアメリカ国内)。2022年末の50店舗超から大幅に縮小した。さらに今年に入ると、残るほぼすべての店舗も閉鎖する方針を明らかにしていた。
サステナブルなフットウェアブランドとして脚光を浴びた同社が、なぜ倒産寸前まで追い詰められたのか。オールバーズのこれまでの歴史を振り返ってみよう。
ティム・ブラウンとジョーイ・ズウィリンガーは2015年、サステナブルなフットウェア企業としてオールバーズを共同創業した

オールバーズがアメリカ証券取引委員会(SEC)に出した最初の提出書類によれば、同社のミッションは「自然を通じて、より良いものを、より良い方法でつくること」だった。
ズウィリンガー氏はもともと、バイオテクノロジー企業で工業製品担当のバイスプレジデントを務めていた

一方、ブラウン氏は、ニュージーランドのサッカー代表チームの副キャプテンを務めたという異色の経歴を持つ。
華々しいデビューを飾ったのは2016年。クラウドファンディングサイト「Kickstarter」でキャンペーンを開始すると、わずか5日間で目標額の3万ドル(475万5000円)を達成した

同社は最終的に12万ドル(1902万円)近く調達。従来のスポーツシューズより環境負荷を抑えるよう設計された、ウール製のランニングシューズの製造に乗り出した。
2016年「B Corp」認証を取得した。これは、環境・社会課題の改善に取り組むと同時に、ステークホルダーの利益にも配慮する企業に与えられる国際的な認証だ

オールバーズにとって、B Corp(ビーコープ)認証の取得は「自社の行動が環境、従業員、地域社会、消費者、そして投資家といったすべてのステークホルダーに与える影響を、いかに考慮しているか」を明文化するものだった。
創業わずか2年目にして、「世界で最も履き心地のいいシューズ」という称号を獲得した

アメリカのタイム(Time)誌は、オールバーズの主力製品「Wool Runner(ウール・ランナー)」を「世界で最も履き心地のいいシューズ」と評価した。
2017年までに、Warby Parker、Casperとともに、スニーカー、メガネ、マットレスの各業界に革命を起こす「D2Cの先駆者」と見なされるようになった

2018年になると、仲介業者を通さないこのD2C(商品を直接消費者に販売するビジネス)のビジネスモデルは爆発的に普及した。同年、アメリカのビジネス誌『インク(Inc.)』は、400社以上のスタートアップが「第2のウォービー・パーカー」の座を狙ってしのぎを削っていると報じた。
オールバーズのスニーカーは「シリコンバレー・ファッション」の代名詞となった

2017年8月、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)が同社のスニーカー「Wool Runner」を「シリコンバレーの制服」の一つと紹介したことで、オールバーズは全米規模で再び大きな注目を集めた。
その1か月後、初の実店舗をオープンした

ニューヨークのソーホー地区に構えた第1号店は、広さ1450平方フィート(約135平方メートル)だった。その後、店舗網は拡大を続け、2022年には58店舗を展開していた。
2020年には、同社の人気はシリコンバレーをはるかに超えて広まっていた。バラク・オバマ元大統領がWool Runnerを履いている姿も、たびたび目撃された

しかしこの頃から、オールバーズの靴は、流行に敏感な人々やメディアの間で廃れ始めた。男性ファッション誌『GQ』はオバマ元大統領がオールバーズを履いている姿を嘆き、「誰かジョーダン(ナイキの人気スニーカー)を一足贈ってやれないのか?」と皮肉混じりに指摘した。
2020年、新作「Dasher」を発売。「びっくりするほど素晴らしい」と高く評価された

Wool Runner人気に陰りが見え始めた2020年5月、オールバーズはブランド初となる本格的なパフォーマンス・ランニングシューズ「Dasher」を発売した。男性向けライフスタイルメディア『Gear Patrol』はこれを「びっくりするほど素晴らしい」と高く評価した。
同じ2020年、アディダスと提携して低炭素シューズの共同開発に乗り出した。これもまた、業界の常識を打ち破ろうとする同社の意欲の現れだった

大手フットウェアブランド同士が提携に踏み切ることは極めて珍しい。「Adizero x Allbirds 2.94 kg CO2e」と命名されたこのシューズは、アディダス(Adidas)とオールバーズ双方のスニーカーの中で最も低いカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量)を実現した。
新規株式公開(IPO)を控えた2021年8月、年間売上高が拡大している一方、赤字も膨らみ続けていることを公表した

オールバーズの売上高は、2019年の1億9370万ドル(307億145万円)から、2020年には2億1930万ドル(347億5905万円)に増加した。しかし損失もまた、2019年の1450万ドル(22億9825万円)から、2020年には2590万ドル(41億515万円)に拡大していた。
2021年、ナスダックに上場した

先述のKickstarterのキャンペーン開始からおよそ2100日後の2021年11月3日、オールバーズはついに新規株式公開(IPO)を果たした。同社に対するウォール街の強気な見通しを反映し、上場初日の株価は90%も急騰した。






























