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Business Insider Japan

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軽井沢からマレーシアへ教育移住。決め手となった「英語、治安、費用」以外の理由
山本裕介 · 2026-04-17 · via Business Insider Japan
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軽井沢からマレーシアへ教育移住。決め手となった「英語、治安、費用」以外の理由

東京から軽井沢への家族での移住を経て、現在はマレーシアでの子育てにチャレンジしている山本裕介さん。

軽井沢への教育移住の話に続き、マレーシアへの移住を決断した背景について、前回に続き寄稿してもらいました。

安定した環境だからこそ生まれた次の問い

軽井沢での暮らしは、私たち家族にとって非常に充実したものでした。子どもたちは自然の中で日々新しい発見をし、学校では教科書だけでは得られない学びを重ねていく。家族の時間も増え、生活そのものの質が変わった実感がありました。

したがって、「現状への不満」があって海外を目指したわけではありません。むしろ、「この環境で十分に満たされている」と感じていたからこそ、次の問いが浮かび上がってきました。

それは、「このまま日本の中だけで子どもたちの世界を閉じてよいのか」という問いです。

人は環境に慣れきると、そこからの学びが急速に減衰します。環境を変え、新たな学びを始めなくてはという危機感がマクロとミクロとの両方の文脈で大きくなっていきました。

軽井沢で得たものは大きい。それは環境を変えたからこそ生まれたものである。であるならば、もう一度、家族として未知の環境に身を置くことに意味があるのではないかと思うようになりました。

家族の喪失感が、決断を後押しした

実は、この移住の決断を下す背景には、家族にとってパーソナルでかつ切実な出来事がありました。

2023年の前半、我が家は非常にタフな時期を過ごしていました。子どもたちを幼い頃から見守り、誰よりもかわいがってくれた義母が、長い闘病の末に他界したのです。妻や子どもたちのショックは計り知れず、私自身も仕事で大きな転換期を迎えていた時期でした。

このような大きな「喪失」があったとき、人は往々にして立ち止まってしまいます。しかし、私たちはあえて前に進むことを選びました。これまでも人生の節目で、困難や喪失を経験するたびに、それを凌駕するほどの「新しい希望」を自分たちでつくりだすことで乗り越えてきたからです。

後ろに下がるのではなく、新しい世界への一歩を踏み出す。それが、家族全員で喪失を乗り越え、新しい絆を編み直すための「冒険」になると信じたのです。

家具などは全て備え付けで、かつ家族での移動に慣れているためスーツケースとリュックのみで出発。
家具などは全て備え付けで、かつ家族での移動に慣れているためスーツケースとリュックのみで出発。
撮影:山本裕介

なぜマレーシアなのか

本格的に検討を始める前から視察した場所を含めると、イギリス、オランダ、フィンランド、シンガポール、タイなど複数の候補がありました。

マレーシアについてよく言われるのは「英語が使える」「費用が比較的抑えられる」「治安や生活環境が安定している」といった理由でしたが、それらは当然の条件として最終的な決め手は別にありました。

1. 経済的側面: マレーシアは、実は歴史上特異的に成功した国になる可能性が高い

マレーシアは経済的に優秀な国で、長期にわたって安定した経済成長を続けていて、歴史上、イスラム教徒が多数を占める国の中で初めていわゆる中所得国の罠に陥らず、低〜中所得国から高所得国になれる可能性が高くなっています。

「中所得国の罠」とは、人件費の安さをレバレッジして低所得国から抜け出したあとで、産業の高度化に成功せず、付加価値が高い産業に移行できずに所得が頭打ちになる状態を指します。

歴史的に見てこの状態になってしまうと抜け出せない可能性が高いのですが、マレーシアはもともと民族問題と都市と地方の格差などが重なっていたため、早めに格差解消に手を打ち、教育の平準的な提供も含めて人材の高度化がうまく進んだのが特徴的です。具体的には地方から出てくる人に無償で住居を与えるなどをしました。

産油国の場合、資源の切り売りによって短期的には高所得国の水準に達することは容易です。しかし、それは人材の高度化や工業化に結びつかず、資源価格のボラティリティが経済を直撃するリスクが常にあります。そのため、統計上の数値が高くとも、実質的な経済先進国とは見なされないケースも少なくありません。

「資源に頼らず下から高所得国に上がる」というのを達成した国は世界史的に見ても、東アジアの奇跡と呼ばれた日本・韓国・台湾、地理的に恵まれているヨーロッパ近辺に限られます。

※ASEANではシンガポールとブルネイが高所得国ですが、どちらも人口が少なすぎて都市国家レベルのため、少し軸が異なります

参考文献: マレーシアに学ぶ経済発展戦略: 「中所得国の罠」を克服するヒント
参考文献: マレーシアに学ぶ経済発展戦略: 「中所得国の罠」を克服するヒント
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2. 社会的側面: 民族・文化 : ムスリム・中華・インド系の文化が共存している

ASEANでまず留学候補に挙がるのはシンガポールだと思うのですが、実はシンガポールはASEANの中での多様性スコアは低く、中華系が7割を占め、中華系の影響が強い国という印象です。国際的によく使われる Fearon Ethnic Fractionalization Index(= 民族的・文化的多様性指数)でも、シンガポールよりマレーシアの方が高くなっています。

それに加えてもう一つ大きな特徴は、ムスリム国家であるということです。

イスラム教は長期的にはキリスト教を抜いて世界最大の宗教になる可能性があり、ここでイスラム教の文化に触れておくことは、なかなか馴染みがない日本人にとっては重要だなと。

マレーシアはイスラム教を国教としており、それゆえに政治に宗教が介入するというデメリットがあるものの、生活面でのイスラム教の一般的な縛りは緩い。

例えば、自分たちが行くスーパーにも普通に隔離されずにお酒が売っています(ちなみにマレーシアよりもイスラム教徒の割合が大きいインドネシアは国教としては設定していません。この辺の逆転現象も面白いです)。

一方で、やはりノンハラルの豚肉コーナーはスーパー内でも隔離されていたり、イスラム教的に不浄の存在である犬を飼うときは気をつけないといけない(我が家はネコと一緒に住むのでペット可のエリアにしたのですが、土日の公園は犬パラダイスです。逆に言えばそれくらい犬がOKの場所に集住していると思われます)など、日々の生活の中で感じる特徴もあります。

子どもたちの学校では、イスラム教の生徒への配慮から本人がイスラム教徒かどうかにかかわらず学校への持ち込みを禁止しており、そのルールを知らずに豚肉を入れたお弁当を持ってきて没収される子もいるそうです。

他方でヒンズー教のディパバリという光のお祭りもお祝いしますし、旧正月はド派手です。宗教的な寛容さがあり、多民族が共生していて、かつ日本人にも差別がなくむしろ親日であるというのは、子どもたちが多様な文化に触れる上でとても良いと思います。

撮影:山本裕介
撮影:山本裕介
旧正月はたくさんの人が集まって連日深夜まで花火があがりお祭り騒ぎ。
旧正月はたくさんの人が集まって連日深夜まで花火があがりお祭り騒ぎ。
撮影:山本裕介

3. バランスのとれた国家運営: 自分たちの国は自分たちで変えられることを知ってほしい

マレーシアは、実は商売上手で立ち振る舞いのバランスが良い印象があります。

例えば東南アジアで誰もがお世話になる配車アプリのGRABは、今はシンガポールがヘッドクオーターですがもともとマレーシアで生まれた企業です。

現在のトレンドとしては、地政学リスクを避ける目的でデータセンターや半導体系の産業がマレーシアに移動しています。

また、国際的に流通しているハラル認証のうち、最も流通面で成功しているのはマレーシア政府が公認で出しているもの。これによって国際的なハラルマーケットでの自国の商品の流通を後押ししています(マレーシア政府の出している認証が法解釈から品質審査までワンストップで、中東とASEAN両方で流通させられるため輸出企業としてはこの認証を取ることのROIが高い)。

外交面でも、例えばガザ侵攻ではムスリム国家として極めて強い態度でアメリカを非難していますし、実際にイスラエルからの物品の輸入を止めたりしています。

一方で極端にイスラムに寄りすぎることもなく、自国内の民族のバランスも踏まえて中国・インドとも一定の関係を保っていて、人口が3000万人強の国としてどのようにバランスを保って国際社会の中で振る舞うかをよく考えている印象があります。

民族問題が大きく、もともと同じ国だったシンガポールが別の国として分離されるほどのことが起きた国にもかかわらず、その後は民族融和に一応成功しています(もちろん問題はまだたくさんありそうですが)。

「ルックイースト政策(日本や韓国の勤勉な労働倫理、技術、経営手法を学んで経済発展を目指す政策)」などを通じて結果的に稀有な経済成長をしていることを考えると、「国の未来や行く末は人が考えて変化を実行することでちゃんと変えることができる」という、ある種当たり前の希望を感じることができます。

いろいろな人種が混ざっているので、どんな見た目であっても浮くことがなく、最初からリラックスして過ごすことができた。写真はツインタワーに初めて行ってなぜか踊る兄弟。実際マイノリティであることを実感することはほとんどありませんでした。
いろいろな人種が混ざっているので、どんな見た目であっても浮くことがなく、最初からリラックスして過ごすことができた。写真はツインタワーに初めて行ってなぜか踊る兄弟。実際マイノリティであることを実感することはほとんどありませんでした。
撮影:山本裕介

軽井沢とクアラルンプールの二拠点生活へ

2024年夏、妻と子どもたちはクアラルンプールへと旅立ち、私は引き続き軽井沢と東京、そしてマレーシアを行き来する生活となりました。

家族が離れて暮らすことへの葛藤がなかったわけではもちろんありません。時差が1時間しかないため、前日の深夜便で日本からマレーシアに飛んで、翌朝のミーティングに出るというライフスタイルが可能なのも決断を後押ししました。週末と平日数日を家族と一緒に過ごすことができ、家族が変わっていく様子を見られたのは大きな喜びでした。

軽井沢との気候の差が身体にこたえますが、余裕がある時は子どもたちが学校に出かけたらコンドミニアムのプールサイドでパソコンを持って仕事をするような楽しい時間も。
軽井沢との気候の差が身体にこたえますが、余裕がある時は子どもたちが学校に出かけたらコンドミニアムのプールサイドでパソコンを持って仕事をするような楽しい時間も。
撮影:山本裕介
コンドミニアムのベランダから見た引っ越し翌日の朝陽。
コンドミニアムのベランダから見た引っ越し翌日の朝陽。
撮影:山本裕介

次回は、実際に渡航までにした準備、現地での生活のリアリティ、気になる英語や学習面、親として考えておくべきことなど、具体的な部分について語ります。

「本人確認を繰り返す社会」はもう終わる——FPoSが実現する“人とモノ”“リアルとデジタル”がつながる社会

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