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山中将司のカー・インサイト
日産、巨額赤字から平常運転への帰還。新型キックス投入は逆襲の狼煙なのか

ここ数カ月、クルマのニュースを最も賑わせているメーカーは日産自動車(以下、日産)だ。
新型キックスの発表、夏のエルグランド全面刷新、スカイライン復活のティザー、次世代e-POWER――新車の話題が途切れずに流れてくる。去年の今ごろ、聞こえてきたのは「売る車がない」「魅力的なラインナップがない」「このままでは潰れる」という声ばかりだった。
2025年3月期の6708億円の最終赤字、7工場の閉鎖と2万人の人員削減。解体に向かう会社としてこの一年半の日産は語られてきた。
その日産が、新車を当たり前に出すメーカーへと、いったん平常運転に戻りつつある。その帰還を象徴するのが、6月17日に発表された新型キックスだ。
最も数の出るコンパクトSUVを6年ぶりに全面刷新し、翌18日に発売、価格は299万9700円から424万8200円。続く夏には新型エルグランドの発売が控える。逆襲の口火を切ったのは名車でも花形でもなく、毎月の販売台数を稼ぐ実用車だった。
なぜ「キックス」だったのか。最も大きな穴から塞ぐ

現行キックスの国内販売は、率直に言って惨憺たるものだった。
国内で最も売れているカテゴリーであるコンパクトSUVでありながら、販売台数はホンダ・ヴェゼルの約14%にとどまるという指摘もある。市場が最も大きい場所に、最も弱い商品を置いている。これが日産の国内ラインナップに長く空いていた穴だった。
新型キックスは、その穴を正面から塞ぎにくる。ボディサイズは全長4365mm×全幅1800mm×全高1615mm、ホイールベース2655mmと一回り拡大し、トヨタのヤリスクロスより大きくホンダのヴェゼルに迫る、激戦区のど真ん中の体格になった。フロントまわりはアメリカンフットボールのヘルメットから着想を得たという、押し出しの強い水平基調のデザインに改められている。
そして最大の眼目がパワートレインだ。新型キックスには、夏に控える新型エルグランドに先がけて、第3世代e-POWERが日本市場で初搭載された。モーター・発電機・インバーター・減速機・増速機を一体化した「5-in-1」ユニットに1.4リッターの発電専用エンジン(HR14DDe)を組み合わせた新世代システムで、現行比で燃費を10%以上、発電時の騒音を4.5dB改善し、WLTCモード燃費は最良で25.7km/Lに達した。さらにキックスとして初めて電動駆動4輪制御「e-4ORCE」を採用している。「街乗りでは良いが高速で伸びない」と言われ続けたe-POWERの弱点を克服した心臓を、国内ではまず量販SUVに載せる。順番として正しい。
2WDのXで325万9300円、e-4ORCEの最上級Gで424万8200円。装備を絞った「Xシンプルパッケージ」を299万9700円で用意し、税込300万円割れの入口も残した。先代モデルから大きく上がった価格帯だが、装備と電動化の水準を考えれば競合と同じ土俵の値付けだ。安売りで台数を拾うのではなく、商品力で定価販売を狙う。
新型車を出せる会社に戻った――数字が作った時間

そもそも一年前の日産に、こうした商品攻勢の気配はなかった。2024年度は6708億円の最終赤字。再建計画「Re:Nissan」は7工場の閉鎖と2万人の人員削減を打ち出し、報道は解体の文脈一色だった。
この間、日産はまず企業としての「数字」から整えていった。
























