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- 中国だけでファン層1億人。空前のウルトラマンブームが円谷にもたらした光と影
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浦上早苗の インサイド・チャイナ
ウルトラマンシリーズを手掛ける円谷プロダクションの中国ビジネスが踊り場を迎えている。2019年以降に起きた空前のブームを追い風に、中国のライセンス収入だけで日本の事業収入全体を上回る規模に成長したが、ブームの反動減で2026年3月期は中国ビジネスが半減した。
ジェットコースターのような業績の変化はLABUBU(ラブブ)とも共通し、中国市場の機会の大きさと難しさの両面を浮き彫りにしている。
中国人のファン層1億人

円谷プロダクションの事業収入は、2025年3月期が国内47.0億円、海外68.5億円に対し、2026年3月期は国内50.0億円、海外43.4億円だった。
より詳しく見ていくと、2025年3月期は事業収入のうち中国でのライセンス収入が52.8億円に達し、日本国内の事業収入全体(47.0億円)を上回るほどだった。しかし、中国のライセンス収入が2026年3月期に25.5億円と前期比51.6%も減少、親会社である円谷フィールズホールディングスのコンテンツ&デジタル事業セグメントの減収・減益を招いた。
円谷フィールズホールディングスが5月に公表した2026~2028年度の中期経営計画によると、ウルトラマンシリーズを軸とする円谷作品のファンベースは、日本が400万人(人口の3%)なのに対し 、中国は1億人(人口の7%)に上る 。中国のファンだけで日本の人口に匹敵する圧倒的なマーケットが形成されていることがわかる。

日本のIPは海外で総じて高い人気を集めているが、ウルトラマンの中国市場への依存度はその中でも突出している。実はこの現象は、比較的新しい動きでもある。
中国でウルトラマンシリーズの番組が初めてテレビ放送されたのは1993年。この頃の中国は子ども向けコンテンツが非常に少なかったため、ウルトラマンや『ドラえもん』(1991年に中国で放送開始)といった日本のコンテンツは広範な認知を獲得した。ウルトラマンは以降も新作の放映が断続的に続けられ、現在では親子2代にわたるファン層を形成している。
大人になったファンがグッズ購入

もともと根強いファンを抱えていたウルトラマンの人気がさらに沸騰し、社会現象化したのは2019年から2020年にかけてのことだ。
1990年代から2000年代にウルトラマンに熱中した子どもたちが成人し、フィギュアやカードなどへ自由に投じる購買力を得たことで、関連消費が爆発的に伸び始めた。
アリババグループのECサイト「タオバオ(淘宝)」は、2020年に「ウルトラマン」の検索回数が年間2億7000万回に達したと発表。中国版TikTokの「抖音(Douyin)」や写真共有SNS「小紅書(RED)」にもウルトラマン関連のコンテンツがあふれ、中国国営テレビ(CCTV)が選ぶ2020年の「話題の人物(流行語・カルチャー部門)」にウルトラマンが選出された。
この時期は、20〜30代の若者によるフィギュアやカードの「大人買い」が一大消費トレンドとして注目を集め、ラブブで知られる「POP MART(泡泡瑪特)」なども躍進した。
ウルトラマンは、いわゆる「80後(1980年代生まれ)」や「90後(1990年代生まれ)」による「ノスタルジー消費」の恩恵も強く受けた。また、そのストーリーが単なる勧善懲悪にとどまらず怪獣側の背景や事情まで深く掘り下げる独自の哲学を持っていたことも、現代の中国の若者の共感を呼んだと言われている。
2022年から2024年にかけて、ショップやレストランからなるウルトラマンの「テーマ館」が中国各地に相次いでオープンし、ウルトラマンをテーマにした世界初のホテルも開業。ウルトラマンのリアルイベントは大盛況を極め、歴代の主役を演じた日本人俳優たちはゲストとして引っ張りだこになった。
円谷の知財戦略も奏功

円谷プロダクションが2010年代から知財戦略の強化に本格的に取り組み、中国企業へのライセンス供与を進めていたタイミングでこのブームが到来したことも、大きな追い風となった。
ブームの勝ち組として知られるのが、トレーディングカード(トレカ)大手の「卡遊(Kayou)」と、「中国版レゴ」と評される玩具メーカー「布魯可集団(Blokees)」の2社だ。
卡遊はそれまで強力な自社IPを持たず、中国でトレカ市場自体が未成熟だったことから苦戦を強いられていたが、2018年にウルトラマンのライセンスを取得した直後にブームが起き、一気に波に乗った。ウルトラマンのトレカシリーズ(『宇宙英雄奥特曼X档案系列』や『奥特曼英雄対決系列』など)が大ヒットを記録。2021年に22億9800万元(1元=23円で計算、約530億円)だった同社の売上高は、2024年には100億5700万元(約2300億円)にまで膨張した。
布魯可集団は2021年にウルトラマンのIPを取得し、プラモデルやフィギュアビジネスを展開。レゴよりも手頃な価格帯でありながら、ガンダムのプラモデルよりも組み立てのハードルが低いという絶妙なポジショニングによって小学生を中心に支持を集め、2025年1月に香港市場への上場を果たした。
卡遊、布魯可の爆発的な成長は、円谷プロダクションの収益を短期間で押し上げた。
トレカ過熱で規制リスク直面

円谷フィールズホールディングスの資料によると、ウルトラマンの市場規模は2016年まで「母国」日本の方が大きかったが、前述の中国ブームによって勢力図は激変した。2025年には中国の市場規模が1500億円に達したのに対し、日本は150億円にとどまり、10倍の開きが生まれている。
では、なぜ2026年3月期に中国のライセンス収入がど急失速したのか。






























