- BUSINESS INSIDER
- 国内
- 巨大半導体企業の買収劇…真山仁が『ハゲタカ』で描いた日本の停滞
Close up
現代の作家たちが語る「日本」
巨大半導体企業の買収劇…真山仁が『ハゲタカ』で描いた日本の停滞

天才的な手腕で企業買収を成功に導いてきた鷲津政彦。その鷲津が2026年に挑んだのは、時価総額130兆円を超える台湾の半導体メーカーの買収だった──。
2026年2月に発売された『チップス ハゲタカ6』は、世界的半導体メーカーの買収をめぐる攻防が描かれ、半導体の生産競争、米中対立、そして日本の停滞をも浮かび上がらせる小説だ。
2004年の『ハゲタカ』以降、20年以上にわたり同シリーズを書き続けてきた真山仁さんは、日本の現状をどう見ているのか。
『チップス ハゲタカ6』に込めた問題意識と、これからの日本に必要な視点を聞いた。

小説家
真山仁
1962年大阪府生まれ。1987年に同志社大学法学部政治学科を卒業後、新聞記者、フリーライターを経て、2004年に企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』でデビュー。2007年、『ハゲタカ』『ハゲタカ2』を原作としたNHK土曜ドラマが話題を呼んだ。近著に『アラート』『玉三郎の「風を得て」』『ここにいるよ』『ウイルス』。
前作から8年の時間が空いた理由

──『チップス ハゲタカ6』は、2023年11月から『日経ビジネス』で連載された作品です。『ハゲタカ』シリーズとしては8年ぶりですが、執筆まで時間が空いた理由は?
2004年の『ハゲタカ』の後、『バイアウト』(『ハゲタカⅡ』に改題/2006年)、『レッドゾーン』(2009年)、そして、リーマンショックを描いた『グリード』(2015年)、東日本大震災と電力会社のM&Aをテーマにした『シンドローム』(2018年)と、『ハゲタカ』シリーズを書いてきましたが、今作まで時間が空いてしまったのは、書きたいと思える大きな経済事件がなかったからです。
『ハゲタカ』シリーズは全て、各節の冒頭に「何年何月何日」を明示しています。シリーズの読者の感想を聞いてみると、小説に出てくる日時と、ご自身の当時の生活を重ねて読んでいる方がすごく多いんです。
まるで歴史小説のように、『ハゲタカ』を読んでいる読者が多いと知ってからは、小説的な切り口で「歴史を振り返る」という意識が強まりました。国内外の経済的な事件にフォーカスするのは同じでも、新聞記事やニュース番組が伝えるのとは違う形で、物語を楽しんでもらいたいと。
──半導体をテーマにしようと思ったきっかけは?
1冊の本との出合いです。親しくしている日経新聞編集委員の太田泰彦さんが書かれた『2030 半導体の地政学 戦略物資を支配するのは誰か』という本を読んだことがきっかけになりました。
それまでは半導体のニュースを特に追いかけてはいなかったのですが、最初の数ページを読んで止まらなくなってしまって。この本は、「先端半導体を握る者が世界の覇権を握る」という現実を書いたノンフィクションです。だったら私は、小説でこのテーマを書こうと決めました。
現実と「小説の世界」を戦わせる

──『チップス ハゲタカ6』にはリアルタイムで起きていた事件も小説に盛り込まれています。どのように執筆したのでしょうか?
週刊誌連載の小説なので、時代と競争しようと思って書き始めました。今まさに起きているさまざまな社会事象を横目に見ながら書くわけですが、書いているうちに現実はもっと先まで、しかも思わぬ方向にいってしまいます。連載を始めたころは、トランプ大統領が再選するとは全く思っていなかったし、台湾では蔡政権から頼政権に政権交代しました。
途中まではニュースを意識して現実の世界とリンクしたフィクションを書いていましたが、途中から小説内は、完全に現実の世界から切り離しました。小説には、このようにリアルから飛び立つ瞬間があります。
現実で見ている世界と、小説の世界を並び見せて、「もしかしたら本当に起きるかもしれない」という未来の可能性を提示しました。
あなたの常識は「すでに古いかもしれない」
──『チップス ハゲタカ6』では、先端半導体開発をめぐる台湾・中国・アメリカの苛烈な競争が描かれます。国際社会において日本はどうあるべきか、小説を読んで改めて考えさせられました。
今なお「半導体生産と言えば日本じゃないの?」と思う日本人は少なくないと思います。そこがこの小説の大事な部分でもあって、「あなたが知っている常識は、実はとっくに古くなっているかもしれないよ」と気づいてほしい。
あわせて読みたい
Special Feature


























