- MASHING UP
- DEI×ビジネス
- DEI推進に葛藤や抵抗を感じる人は約5割。パーソルはどんな施策で人を動かしたのか
女性管理職比率29.4%、男性育休取得率93.6%のパーソルホールディングス。
Mashing Upの賛助会員であるパーソルホールディングスが、ジェンダーダイバーシティの推進戦略と取り組みを紹介するブリーフィングを、2026年6月2日に開催。ジェンダーダイバーシティを経営戦略に組み込んだパーソルグループが、その方針と進捗を公開する場となった。
登壇したのは、パーソルホールディングス執行役員CGDO兼パーソルキャリア取締役副社長執行役員の喜多恭子さんと、パーソルキャリア人事本部カルチャー&コミュニケーションデザイン部 DEI推進グループ マネージャーの孫美世さん。喜多さんがグループ全体の戦略・KPI・推進体制とAI活用事例を説明。続いて孫さんが現場に根ざした具体策を紹介した。
単発の施策は逆効果? 抵抗を和らげる鍵は「関係構築」

まず喜多さんが紹介したのは、社会におけるDEI推進の現状だ。
パーソル総合研究所の調査によれば、ダイバーシティに「総論では賛成、でも実践には抵抗がある」という「葛藤層」が国内の労働者の中でなお多数の39.4%を占め、明確な「抵抗派」も10.5%存在する。両者を合算すると約5割に達する。
さらに喜多さんが問題として指摘するのが、逆効果になりかねない施策だ。「単発・小出しの取り組みはむしろ葛藤と抵抗を増幅させる可能性がある。1on1や情報共有会といった関係構築の施策とセットで進めることが、葛藤・抵抗の緩和に有効」だと喜多さんは話す。
2025年には、労働市場へ出る若手の人口が明確な減少局面に入っている。多様な人材を活かせない組織は採用・定着の両面で競争力を失っていくだろう。
AIの活用で管理職の業務負担軽減

では企業はどう動くべきか。喜多さんは「施策と経営がよりつながること」が重要だと話す。
パーソルホールディングスでは、中期経営計画においてジェンダーダイバーシティが経営にどう貢献するかを明確に設計。女性管理職比率37%・男性育休取得率(1ヶ月以上)85%を定量目標に掲げ、グループ代表直下にジェンダーダイバーシティ委員会を設置している。昇格候補の男女比・ノミネーション理由・意向の変化といったパイプライン全体を半期ごとに可視化し、役員評価の非財務指標にも女性管理職比率の向上を組み込んだ。
現在の実績は、女性管理職比率29.4%(2019年18.6%)、男性育休取得率93.6%(2019年は11.1%)。1ヶ月以上の男性育休取得も約7割に迫る。
加えて喜多さんが強調したのが、AIを活用した管理職の業務負担軽減の有用性だ。日本の管理職は「何でも屋」化しやすく、多様な働き方の実現を難しくしてきた。管理職によるメンバーの目標支援業務をAIエージェントが代行する仕組みを約450名に試験導入したところ、約8割が「有用」と回答。また、社内AIプラットフォーム「CHASSU」は月間アクティブユーザー約1万2,000人・累計30万時間超の削減を実現していると添えた。

現場に根ざした3つの施策
次に孫さんが紹介した3つの施策は、いずれも体験と継続を軸に設計されている。
制限のあるはたらき方理解研修
管理職全員必須のこの研修は、「育児中の社員のドキュメンタリー映像の視聴」「時短社員へのヒアリング」「1週間のノー残業生活体験」「グループでの振り返りの実施」などで構成される。なかでも「ノー残業生活」パートには、突然「お迎え連絡」が入り早退を余儀なくされる疑似体験も組み込まれている。社長・上級管理職から順に研修を受け、年間約100名が参加する。時間的制約のある働き方への理解が「人ごと」から「自分ごと」へ変わる設計だ。この研修を含む複数の施策を5年間継続した結果、パーソルキャリアの男性育休1ヶ月以上取得率は5%未満から67%(平均2.5ヶ月)まで伸びた(※参考リンク)。
育休ウェルカムバック制度
2021年10月開始。育休中の就労希望者を社内の短時間業務にマッチングする制度で、5年間で累計128名・22部門で成立。「リフレッシュになった」「元部署以外の新しい学びがあった」という声が続く。
スポンサーシッププログラム
女性上級管理職(スポンシー)と執行役員以上(スポンサー)がペアを組み、1年間伴走する制度。相談役にとどまるメンタリングとは異なり、スポンサーが社内外のキーパーソンを紹介したり、異動や業務アサインの機会を提供するなど、キャリア開発に具体的に関わるのが特徴だ。2025年4月時点で、事業部長・本部長級で女性が4名に増加という成果も出ており、参加者からは「味方ができた」「孤独感が払拭された」という声が上がっている。

一社では変えられない。社会全体で設計を
数字が示す通り、同社のジェンダーダイバーシティは着実に前進している。
だが、喜多さんは「自社だけが変わっても限界がある」と指摘。取引先やサプライヤーも含めた企業同士が互いの働き方や制約を理解し合うことで初めて、多様な人材が活躍できる環境が社会全体に広がるという考えから、パーソルは自社の研修プログラムを外部企業にもオープンに公開している。
さらに、異業種14社が参加する女性リーダー向けの「クロスカンパニーメンタリングプログラム」も展開し、企業の枠を超えた人材育成にも取り組んでいる。
採用を増やすだけでは構造的な人材不足には対応できない。「いる人」が活躍し続けられる組織をつくること、そのヒントが今回のブリーフィングに詰まっていた。


























