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- 創業120年、DNAは「チャレンジ」。白洋舍が脱炭素で描く未来
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創業120周年を迎えた白洋舍が、次の100年に向けて事業の軸を進化させている。同社はこれまでも、時代の変化に合わせて事業の形を変えながら成長してきたが、いま成長領域と位置づけるのがユニフォームレンタル事業だ。この事業を単なる衣類管理サービスにとどめず、企業の脱炭素経営を支えるインフラへと役割を広げようとしている。
サステナビリティ情報開示の義務化が進み、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope3)の把握が求められるなか、ユニフォームレンタルは企業のサプライチェーン戦略に組み込まれる存在へと変わり始めている。白洋舍はライフサイクルアセスメント(LCA)によるCO2排出量の一次データ算定を実施し、顧客企業に提供できる体制を整えた。
ユニフォームレンタルの価値はどう変わるのか。そしてこの取り組みは、100年企業の競争力をどこまで拡張するのか。執行役員の菊池雄太郎氏、ユニフォームレンタル事業部長の浅子高弘氏、同部営業係長の三浦美咲氏に話を聞いた。
時代の変化とともに、ユニフォームレンタル事業が拡大
1906(明治39)年に東京・日本橋呉服町で創業した白洋舍は、日本で初めてドライクリーニングを実用化。個人向けクリーニングから法人向けレンタルへと事業を拡大してきた。1964年の東京オリンピックを契機にリネンサプライ需要が高まり、ユニフォームレンタルへと領域を広げていった。
ユニフォームレンタル事業を取り巻く社会背景としては、90年代以降、食品工場の増加と衛生意識の高まりにより、ユニフォーム管理の重要性が増してきた。2013年の農薬混入事件や翌年の大規模食中毒などもあり、その関心は一段と強まった。
「作業着を各家庭に持ち帰ることから、家庭から営業施設にノロウイルスを持ち込む恐れがある」。保健所によるこの指摘に、食品製造関係者は危機感を抱く。「衛生」と「セキュリティ」の両面で食品工場の意識が大きく変わっていくなか、白洋舍は2011年6月に食品安全マネジメントシステムの国際規格ISO22000を取得。業界に先駆けた対応だった。

「2010年頃に、ある食品企業によるクリーニング工場の全国視察を受けました。その時に『この蛍光灯は飛散防止タイプか』『なぜ窓は開けっぱなしなのか』『なぜ帽子をかぶらないのか』といった思いもよらない指摘を受け、食品工場との大きなギャップを感じたのです。これからは食品工場の衛生常識に沿った設備を整え、運用しなければならない。そう考えて、ISO22000を取得しました」(菊池氏)
同社はこうした顧客要求の変化にいち早く対応することで、事業の信頼性を高めてきた。
「省エネ」から「脱炭素」へ――若手社員の声がきっかけに
こうして食品工場の衛生面およびセキュリティ面での意識は高まったが、顧客企業から脱炭素に関して要望が寄せられることはなく、社内でもことさら議論されることはなかったという。同社が環境に配慮した活動として注力していたのは、いわゆる「省エネ」だったからだ。
白洋舍グループはこれまでも設備更新や運用改善を通じて省エネを進め、電気・ガス・水使用量の削減を実現してきた。しかし「脱炭素」という観点では、動きは限定的だった。

取り組みの背景には、現場から上がった問題意識があった。年間100トン近くのユニフォームが産業廃棄物として処理されている現状に対し、若手社員から「このままでいいのか」「リサイクルできないのか」という声が上がったという。こうした議論をきっかけに、廃棄だけでなくライフサイクル全体で環境負荷を捉える必要性が社内で共有されていった。
「すでに明石工場や横浜工場などではカーボンフリー電力への切り替えを進めています。工場ごとの事情はありますが、ユニフォームレンタルを主とする拠点から順次移行を進めているところです」(浅子氏)
こうした問題意識を背景に、ユニフォームレンタル事業ではライフサイクルアセスメント(LCA)による算定に踏み出した。
「ユニフォームレンタルは、お客様にとってスコープ3に該当します。一般的な原単位では活動量(購入量)を減らすしかなくなりますが、一次データを使えば現実的な削減の道筋が見えてくる。業界初の試みとして大きな意味があると考えました」(菊池氏)
未知の領域となるLCA評価プロジェクトを担うことになったのが、産休明けで復帰したばかりの三浦氏だった。
一次データで算出すると、CO2排出量が半減するケースも
ユニフォームのライフサイクルフローは、原材料調達にはじまり、製品製造、流通、使用、廃棄・リサイクルまで多岐にわたる。同社のレンタルおよびクリーニングサービスは使用パートにあたるが、三浦氏は2025年5月から手探りで調査していった。なかでも大変だったのが、サプライチェーンが複雑な原材料調達の情報収集だ。

「ユニフォームを製造するアパレルメーカー3社にご協力いただいたわけですが、海外生産が多いので、メーカーさんから資源採掘・紡績・製織・染色といった各工場に問い合わせていただき、回答をもらうまでが一苦労でした。なかなか返事が来ないこともあり、ミャンマー語で書かれた請求書など現地資料がそのまま送られてきたこともありました」(三浦氏)
幸いなことに、すでにLCAに取り組むアパレルメーカーがあり、対話を通して重要ポイントや質問の仕方を押さえて、未経験のメーカーに応用。導き出された数字をさまざまな角度から検証し、一次データを提供する体制を整えた。

では実際に、一次データを使うことによって、どれほどの違いが生まれるのか。
顧客となる企業がスコープ3を算定する際、ユニフォームの購入やクリーニングによるCO2排出量はカテゴリー1にあたる。どの費目にするかは企業によって異なるが、仮にユニフォームを「織物製衣服」、クリーニングを「洗濯業」とし、同社ユニフォーム3タイプの平均値を、〈環境省データによる算定〉と〈白洋舍の一次データによる算出〉で比較すると、織物製衣服を選定した場合は50%削減、洗濯業を選定した場合でも12%削減することが明らかになった。
また、今回のLCA算定は、副次的に同社のクリーニング技術を証明することにもつながっている。当然ながらユニフォームは、使用やクリーニングによって劣化する。一般的にユニフォームの寿命はクリーニング50回分と考えられているが、同社実績は100回と判明。これは以前からユニフォームにICタグを取り付けていたから検証できたことだが、「洗濯科学研究所」が長年にわたり、ユニフォームを痛めることなく、汚れをきれいに落とす最適なクリーニング方法を研究・開発してきたことが貢献しているようだ。
加えて、高いクリーニング技術で洗濯することは、ユニフォームの「長寿命化」にも影響を及ぼす。売り切り型(食品工場向け白衣、50回洗濯で廃棄)のCFPが1枚当たり31.5㎏ーCO2であるのに対し、同社レンタルユニフォーム(同白衣、100回洗濯で廃棄)は20.9㎏ーCO2と、51%のCO2削減効果がある。そして資源循環効果という点でも、レンタルユニフォームは売り切り型と比べ、資源投入量・廃棄物排出量は50%削減される。

顧客との関係が変わり始める IR室やサステナビリティ推進室との対話
ユニフォームレンタル事業部ではこれまで、工場長や品質管理部門との取引が中心だったが、LCAの一次データ提供をきっかけに、IR部門やサステナビリティ推進室など経営戦略に関わる部署との対話が増えている。
「これまでユニフォームレンタルは、衛生管理やコスト削減のための業務として見られることが多く、事業の存在価値を十分に認めてもらえていないと感じていました。そこにサステナビリティという視点が加わることで、お客様のビジネスにとっての価値を改めて示せるのではないかと考えています」(菊池氏)
白洋舍では今回の取り組みを通じて、ユニフォームレンタル事業の位置づけそのものを見直そうとしている。従来は衛生管理やコスト削減を目的としたサービスとして展開してきたが、現在はサステナビリティや脱炭素への対応を通じて、企業のサプライチェーン全体の価値を支える役割を担い始めた。
こうした変化の中で、ユニフォームレンタルは単なる業務委託ではなく、企業の脱炭素経営に関わるインフラとしての意味を持ち始めている。
業界の垣根を超えた「仲間づくり」が急務
今回のLCA算定を通じて明らかになったのが、環境負荷低減には白洋舍だけでなく、サプライチェーン全体での連携が不可欠だということだ。菊池氏は、これからの展開を「仲間づくり」という言葉で表現する。
「今回のLCA算定の結果、原材料調達が全体の50%を占めることが判明しました。そうなると、原材料調達のところでの仲間づくりが必要になってくる。理解ある脱炭素貢献型のユニフォーム開発ができるアパレルメーカーさんとの連携が重要です」(菊池氏)
同時に、廃棄段階でのリサイクルについても、単独では実現不可能な取り組みがある。
「ユニフォームアパレルに関しては現在、選定を進めている段階です。ケミカルリサイクルで原料まで戻す水平リサイクルが望ましいというのが業界の流れですが、その力を持っているところはどこなのか、そして世間的な打ち出しも一緒にやってくれるところを探すこと。これも仲間づくりの一つです」(菊池氏)
ユニフォームレンタル市場 広がる事業機会

国内ユニフォームレンタル市場は現在、約900億円規模(※)とされるが、対象は食品工場向けに限らない。医療・介護や製造業など、自宅洗濯が主流の分野も多く、大きな潜在需要があると見ている。
※矢野経済研究所調査
浅子氏は、いまでもユニフォームレンタルの6~7割が自宅で洗濯しており、福利厚生としてのニーズは大きいと見る。菊池氏も市場の可能性を強調する。
「クリーニングやユニフォームレンタルは、どこに頼んでも同じと思われがちです。しかし安全や衛生に加えて、サステナビリティという視点を取り入れることで、ユニフォームレンタルのビジネス価値をもっと認めてもらえるようになると思っています」(菊池氏)
今回のLCA算定を通じてサプライチェーン全体で環境負荷を捉える重要性が明確になった。関係企業との連携を深めながら、環境負荷を低減する仕組みづくりを進めていく考えだ。また社内では、サステナビリティを軸とした新たな体制づくりも検討されている。
100年企業の総合的価値提案へ
三浦氏は、今回のLCA算定を通じてユニフォームレンタルの価値を改めて実感したと語る。
「ユニフォームは企業の顔とも言えるもので、ユニフォームレンタルは衛生管理・従業員満足・脱炭素の3つを同時に解決できるサービスだと思っています。今回の取り組みを通じて、その価値をより明確に示せるようになったと感じています」(三浦氏)
浅子氏は、自分たちのアプローチを次のように要約する。
「大きなことを言うよりも、できることを一つずつ積み重ねていくのが白洋舍らしさだと思っています。まずは実績をつくり、その結果として信頼を得ていきたい」(浅子氏)
同社は脱炭素を軸に、次の100年に向けた新たな挑戦に取り組んでいる。

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