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- 株式と債券の「逆相関」という前提は、崩れ始めている? 同時に売られる事態に IMFが警鐘を鳴らす

- 「株と債券を組み合わせて資産変動のリスクを和らげる」というのは、投資の教訓のひとつとしてよく知られている。
- しかし、IMF(国際通貨基金)は、この「株式と債券は逆相関」という通説が崩れ始めていると、警鐘を鳴らしている。
- 最新の報告書では2020年のコロナ感染以降、世界的に株と債券が同時に売られるリスクが高まっていることが示唆されているのだ。
金融市場では、投資の教訓のひとつとして「株と債券を組み合わせて資産変動のリスクを和らげる」と教えられてきた。典型的なのが、「株式50%・債券50%」や「株式60%・債券40%」といったポートフォリオにより、株価の下落局面では債券高となって資産全体の目減りを防ぐといったポートフォリオ選択だ。
しかし、2026年4月にIMF(国際通貨基金)から公表された最新の国際金融安定性報告書(Global Financial Stability Report、以下GFSRと略す)では、この株式と債券は逆相関(反対方向に動く関係)という、これまでの通説に対する警鐘が鳴らされている。以下では、このGFSRの分析内容について紹介していきたい。
株価と債券の逆相関の関係が薄れている
2000~2020年までの金融市場では、景気悪化局面となって株価が下落するケースでは、金利が低下する、すなわち国債価格が上昇するという傾向がみられた。株価がマイナスになっても、債券がプラスとなり、資産全体の大きな減少は避けられるため、「株と債券は逆方向に動きやすく、債券は安全弁」というイメージが定着した。
しかし、最新のGFSRでは2020年のコロナ感染以降、この前提が崩れ始めていることが分析され、世界的に株と債券が同時に売られるリスクが高まっていることが示唆される。例えば、Figure 1.19では、2020年以降の弱気相場(ベアマーケット、一般的には株価が大きく下落した局面)において、株式(S&P 500)が大幅に下落するのと同時に、従来は安全資産としてプラスのリターンとなっていた米国債の価格も下落している状況を、過去の期間(2000年以前や2009〜2020年)と比較して示している(下図)。2009年から2020年にかけては、ベアマーケット時に米国債は常にプラスのリターンを記録していたが、これに対して、2020年以降の局面では、米国債が株式と同時に売られるケースが頻繁にみられるようになったとIMFは分析している。
図表:弱気相場局面における、S&P500と米国債の騰落率%、IMFのGFSR April 2026より

株価と債券の逆相関の関係が薄れている背景にあるのは、インフレと考えられる。従来は、景気悪化によって市場がリスクオフとなる場合、モノやサービスに対する需要が低下して物価の伸びが低下し、中央銀行による金融緩和観測が高まり、実際に積極的な利下げなどが行われた。この場合、景気悪化によって株は下がるものの、利下げで債券価格は上昇するため、株と債券は逆相関を強める。
しかし、最近の弱気相場の場合は、需要ではなく供給面の制約による景気への悪影響が意識され、市場が悲観的となるケースが増えている。供給制約とは、原材料の調達難や人手不足などにより、モノやサービスの提供が困難となることを意味する。企業は原材料価格の高騰を販売価格に転嫁せざるを得ない。その結果、消費者の生活費負担が増加する。家計が余計な出費を切り詰めるようになり、景気は悪化していく。インフレによって景気が下押しされる一方で、中央銀行は物価上昇を抑えるため、利上げなどの金融引き締めを迫られる。この場合、景気悪化懸念で株は売られる一方、インフレ懸念で金利は上昇する(=債券価格は下がる)という「株安・債券安」が起こり、株と債券は順相関(同じ方向に動くこと)にもなりうる。
コロナ禍以降、中東情勢の悪化やエネルギー価格の上昇、地政学リスクの高まり、サプライチェーンの混乱など、供給面のショックが度重なった。その結果、FRBやECB、日本銀行など世界の中央銀行は、景気悪化懸念とインフレ上振れの中で難しい選択を迫られ、後者を優先して利上げを進めることも実際に多くみられた。
つまり、近年は景気後退が起こっても債券が防波堤になるとは限らない時代になりつつあるということだ。
IMFからの示唆をどうとらえるか?
それでは、GFSRの警告は「債券投資はするべきではない」ということなのだろうか?
筆者は、GFSRの分析結果から債券不要とまで断定できるわけではないとみており、GFSRにもそのような意図はないと推察している。あくまでも、通説とされる「株式と債券は逆相関」の関係が弱まっているという警鐘が鳴らされていると捉えるべきだろう。
債券は株と必ず逆方向に動き、値動きのリスクを抑えるという考え方が揺らぎつつあるという示唆は重要だ。しかし、債券が一定の利息収入を提供しつつ、景気やインフレ環境によっては分散効果も期待できる資産であることには変わりはない。実際、前述したGFSRのFigure1.19をもう一度見ると(上図)、過去と比べれば、2020年以降のベアマーケットでは、株式と債券の同時下落が起こるケースが増えているものの、米国債投資の平均リターン(平均値、中央値)がマイナスまで落ち込んでいるわけではない。
コロナ感染前の世界では、世界的なディスインフレ傾向により金利が上昇しづらく、債券投資の割高感はなかなか解消しなかった。しかし、足元では各国の金利が大きく上昇して債券の割高感が薄まった。そのため、株式との逆相関は弱まっているものの、利回り水準から鑑みれば、債券投資の妙味が出てきたとも言える。
GFSRの示唆からの教訓は、教科書で学ぶ相場の通説は時代とともに変化する、ということだ。実際、1970年代の高インフレ期には、物価上昇と金利上昇が続くなかで、株と債券が同時に下落する局面も見られた。GFSRの分析を見ても(上図)、1990年以前の弱気相場では、債券が下落するケースも存在したことが示唆される(最小値がマイナスになっているため)。その後、過去20年間の世界で続いた低インフレ・低金利という環境の中で、株と債券は逆相関という見方が強まり、定説として認識されるようになったのだろう。そして、コロナ感染拡大以降の世界は再びインフレ期を迎え、株と債券の関係性はまた再び変化しつつある。
株式と債券だけに限らず、様々な金融資産に対して、どの程度の割合で分散投資を行っていくべきなのか? 資産防衛のためには、「株60%・債券40%」といった過去の常識を固定的に信じるのではなく、インフレや金利環境の変化に応じて資産配分を常にファインチューニングしていく姿勢が重要ではないか。

























