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- なぜ地方銀行は地域を元気にしているように見えないのか。成否を分ける“組織の熱量”
なぜ地方銀行は地域を元気にしているように見えないのか。成否を分ける“組織の熱量”

銀行は今や、「お金を貸すだけ」のビジネスでは成り立ちにくくなっている。とりわけ、人口減少が進む地方では尚更だ。
そうしたなか、地方銀行は近年、金融の枠を超えた新規事業に次々と取り組んでいる。人材紹介、観光、地域商社、スタートアップ支援、不動産、メディア運営……。地域経済を支える存在として、役割を広げようとしている。
一方で、こうした「非金融事業で存在感を発揮している地銀」は、まだ限られている。なぜ非金融ビジネスは伸び悩みやすいのか。
低い担当社員のエンゲージメント

ある地方銀行は、地元企業と連携しながら、再生可能エネルギー事業のサプライチェーンに地域企業を組み込もうとしている。再エネ関連のプレーヤーが都市部の大手企業に偏りがちななかで、地域企業にも利益やノウハウを還元しようとする、意義のある地域プロジェクトだ。
一方で、プロジェクトチームの様子を伺うと、事業に対する温度感にややばらつきも感じた。プロジェクトそのものは壮大だが、現場の熱量が必ずしも均一ではない。こうした現象は、地方銀行の非金融事業で少なからず起きているように見える。
要因の一つとして考えられるのは、銀行業界に長く根付いてきたキャリア観だ。銀行ではこれまで、融資や審査など「カネ」を扱う本流部門を歩み、融資課長や支店長を経験していくことが“王道キャリア”とされてきた。一方で、「コト」や「ヒト」を扱う非金融事業は、どうしても周辺領域として見られがちだった。
もちろん、すべての銀行がそうではない。だが、「エースが行く部署ではない」という空気感が、組織のどこかに残っているケースは少なくない。
これはデータにも表れている。実際、エンゲージメント調査結果を見ると、非金融事業を担う関連子会社のスコアは、母体となる銀行本体よりも顕著に低いことが多いのだ。地方創生や新規事業の重要性が叫ばれる一方で、それを担う組織や人材の位置づけが、必ずしも十分にアップデートされていない。そんな銀行業界の構造的な課題が、数字にもにじみ出ているように見える。
地域支援イベントに700人集客

では、非金融領域に関わる行員すべてのエンゲージメントが低いのかと言えば、決してそうではない。実際には、強い熱量を持って新規事業に取り組む現場も存在する。
2026年3月、島根県松江市で地方銀行の主催としては異例の規模となるイベントが開催された。山陰合同銀行(以下、ごうぎん)が主催した「ごうぎんスタートアップフェス」。全国からスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)、地元企業の経営者ら約700人が集結したのだ。
参加者は「松江でここまで多くの人が集まるイベントはなかなかなく、会場全体の活気に圧倒された」と語る。
島根県は人口約62万人と全国で2番目に少ない。人口減少が進む山陰地方で、これほど多くのスタートアップやVC、地元企業が集まるイベントが開催されたことは、参加者にも大きなインパクトを与えた。
この取り組みの背景には、ごうぎんによるVCとの継続的なネットワーク構築がある。同社は20社以上のVCにファンド出資(LP出資)を行っているほか、行員をVCに出向させ、ノウハウを吸収している。
会場内では「縁結びブース」と称して、ごうぎんの行員が会場内を回りながら、協業可能性のある地元企業とスタートアップを探し出し、決定権を持つ経営トップ同士を直接引き合わせる能動的なマッチングが行われた。結果、約50組ものマッチングが誕生し、地方でも大規模なオープンイノベーションが成立し得ることを示した。
イベントの参加人数やマッチング数は、地方銀行主催としては異例とも言える規模だ。単なる「地域支援」を超え、地域の未来づくりに自ら踏み込もうとする組織のエンゲージメントの高さがうかがえる。
銀行が「地域産業を作った」事例も

地方銀行が従来の「金融」の枠を超え、自ら事業を立ち上げ、地域課題の解決に踏み込んでいる先進事例として注目されているのが、鹿児島銀行による「オリーブ事業」だ。
きっかけは2012年、鹿児島県日置市から大手半導体工場が撤退したことだった。地域に大きな雇用喪失が生じる中、鹿児島銀行は日置市と協定を結び、新たな産業育成による雇用創出策として「オリーブ事業構想」を提案した。
この取り組みの最大の特徴は、銀行が自ら事業会社を立ち上げ、地域産業を生み出している点だ。同行では、行員2人をオリーブ産地のイタリアやスペインへ派遣して栽培方法などを直接調査したうえで、事業計画を策定。2014年には、地元企業などと共同出資して事業会社・鹿児島オリーブを設立した。さらに、国内業者から調達した苗木を農家に半額で供給し、収穫したオリーブは同社が全量買い取る仕組みを構築した。
現在は現役の銀行行員が代表取締役を務め、純鹿児島産オリーブオイルの製造・販売に加え、スキンケア商品なども展開する。欧州からの定温輸送や自社での手詰めといった徹底的な品質管理を強みに、BtoB取引を拡大させるなど、事業成長を続けている。
同行の取り組みを支えているのも、行員一人ひとりの当事者意識の高さだ。本来、金融機関が自ら事業会社を立ち上げ、栽培・加工・販売等まで担うことは、従来の銀行業務の延長線上にはない。新たな挑戦には、「やったことがない」「なぜ自分がやるのか」といった反発が生まれることも少なくない。しかし、同行では行員自らが産地に足を運ぶだけでなく、現場に入り込みながら事業を推進している。
2つの地銀が非金融事業で存在感を示せたわけ
山陰合同銀行の「ごうぎんフェス」の舞台裏では、行員たちが朝から晩まで企業同士のマッチングなどに奔走した。イベント終了後には「やり切った」と声を上げ、互いを讃え合っていたという。また、鹿児島銀行のオリーブ事業では、現役の行員が事業法人の代表取締役に就任し、自ら現場に出て顧客の声を拾い上げながら、改善を重ねる挑戦を続けている。
これらの銀行が、非金融領域の新しい事業で存在感を示せているのはなぜなのか。
先に述べた通り、地方銀行では長らく、融資業務を中心とした「銀行業」のキャリアが王道とされてきた。そのなかで、なぜ両行の行員たちは、従来業務の延長線上にはない事業に、ここまで高い当事者意識を持って関われるのか。





























