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欧州で10万台売れた「変なSUV」がEV化。崖っぷちの日産が大胆すぎるデザインを選ぶ理由
山中将司 · 2026-05-01 · via Business Insider Japan
  1. LIFE INSIDER
  2. ライフスタイル
  3. 欧州で10万台売れた「変なSUV」がEV化。崖っぷちの日産が大胆すぎるデザインを選ぶ理由

連載

山中将司のカー・インサイト

矢印
日産は2026年4月14日、電動化戦略の一環として、3代目となる新型ジュークEVを公開した。
日産は2026年4月14日、電動化戦略の一環として、3代目となる新型ジュークEVを公開した。
日産公式メディアサイト

日産は2026年4月14日、電動化戦略の一環として、3代目となる新型ジュークEVを公開した。欧州で2027年春に発売予定とされる、ジューク初のバッテリーEVである。

まず目を引くのは、そのデザインだ。フロントは薄く、ライトは細い線のように処理され、ボディ全体は曲面というより大きな面で切り出されている。近年のEVに多い、空気抵抗を意識した滑らかな造形とは少し違う。ローポリゴンのCGモデルを現実のクルマに変換したような、どこか硬く、デジタルな印象がある。

この造形を見れば、テスラ・サイバートラックを連想する人は多いはずだ。あるいは、ジャガーが発表したType 00のような、面と塊で未来感を作る新しいEVデザインの流れにも見える。

固定費5000億円削減、生産拠点17から10への再編。Re:Nissanという緊縮計画の渦中にある日産が、量販コンパクトSUVをここまで癖の強い造形に振った。それはどういう判断なのだろうか。

普通なら、経営が厳しいメーカーほど商品は無難になる。開発費は抑えられ、売れ筋に寄せられ、デザイン上のリスクは減らされる。EVはただでさえ投資負担が大きく、価格競争も激しい。そこで量販クロスオーバーをあえて奇抜にするのは、合理的には見えにくい。それでも日産は、ジュークEVを「普通のEV」にしなかった。

ジュークは、もともと「変な量販車」だった

日産・ジューク(初代)
日産・ジューク(初代)
日産公式メディアサイト

2010年に登場した初代ジュークは、コンパクトSUVというより、スポーツカーとバギーと爬虫類を混ぜたような存在だった。二段構えのライト、盛り上がったフェンダー、妙に生き物めいた顔つき。実用車としてのSUVを想像していた人にとっては、かなり理解しにくいクルマだった。

だが、その理解しにくさこそが商品価値だった。ここでおもしろいのは、初代ジュークの顔つきが、単なる奇抜さの追求ではなかったことだ。

日産の説明では、上下に分かれたライト構成にはきちんと理由がある。下側の大きな丸型ランプが本来のヘッドライトで、低い位置に置くことでラリーカー的な力強さを作る。一方、ボンネット上端の細いスラッシュ状のランプはポジションランプとウインカーで、レンズが運転席から見えるため、車両感覚をつかむ補助にもなる。つまり、上のランプは機能のために、下のランプは造形のために、それぞれ理由を持って配置されている。

機能上の必然と、視覚的な違和感が重なった結果、初代ジュークの顔はあれほど記憶に残るものになった。狙って奇抜にしたというより、機能と造形がぶつかったところに生まれた違和感だった。そして結果として、この上下分割の構成は従来のクルマの顔を崩し、後にメルセデスやヒョンデ、シトロエンなどが採用する分割型ライトの流れを、十年以上先取りする存在になった。

Nissan Design Europeのマシュー・ウィーバーは、ジューク10周年を振り返る日産の企画で、電車内で見かけた若者の服装のミックス感をきっかけに「人が型にはまる必要がないなら、なぜクルマがそうでなければならないのか」と考えたと語っている。ここにジュークの本質がある。違和感は失敗ではなく、最初から狙われていた。ただし、その違和感は気分や感性だけでつくられたものではなく、機能の理屈と造形の意志がぶつかった場所に生まれていた。

ジュークは、きれいなクルマではなかった。だが、記憶に残るクルマだった。当時、コンパクトクロスオーバー市場は今ほど一般化していなかった。SUVはまだ、実用性や悪路走破性の延長線上で語られることが多かった。そこに日産は、SUVをキャラクター商品として投入。日産の公式リリースでも、初代ジュークは欧州市場に「それまで存在しなかった」大胆なコンパクトクロスオーバーとして説明され、2代目が登場する2019年までに150万台以上を販売したとされている。これは、奇抜なデザインが市場に拒否されたのではなく、むしろ市場を作ったことを意味する。

2代目は地味だった。だが、失敗ではない

日産・ジューク(2代目)
日産・ジューク(2代目)
日産公式メディアサイト

日本では販売されなかった2代目ジュークは、初代ほどの衝撃を持っていない。顔つきは整理され、プロポーションは整い、内装も量販車として分かりやすくなった。初代のような、見た瞬間に人を不安にさせるような強さは薄まった。

販売面で見ると話は違う。2024年度、日産の欧州販売は37万8900台。そのうちジュークは10万4000台を記録し、2010年の発売以来、過去最高の年間販売になったと発表されている。欧州日産の販売の約4台に1台がジュークという計算になる。キャシュカイの16万6800台と合わせて、この2車種で欧州日産の屋台骨が成立している。

つまりジュークは、日産にとって「失っていい車種」ではない。2代目はデザインの衝撃度では初代に劣ったが、ビジネスとしては十分に機能していた。初代は市場を作った。2代目は市場を維持した。では3代目EVは何を担うのか。おそらく、ジュークという名前をもう一度「変なクルマ」に戻すことだ。

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