- MONEY INSIDER
- マネープラン
- AIボット「ボビー」が、全米2万軒のガソリンスタンドに電話で価格を聞きまくるアプリが出来た。バイブコーディングで5日間で完成したという

- あるカップルが、クロード・コード(Claude Code)とAIエージェントを駆使して、全米2万軒のガソリンスタンドに電話をかけ、ガソリン価格を追跡するツールを開発した。
- このツールは、ガソリン価格をダンキン・ドーナツのコーヒーや大学フットボールのチケットなど、各地域の名物の価格と比較して表示する。
- この電話調査は、AIに遭遇した人間たちの反応をありありと映し出した。多くは普通に答えるが、戸惑う人もいれば、時には罵声を浴びせる者もいる。
「やあ、『ザ・ガス・インデックス(The Gas Index)』のボビーです。私はAIです。今日のレギュラーの価格はいくらですか?」
「もう1回言ってくれますか?」。マンハッタンのガソリンスタンドの店員はそう聞き返してから、店頭の電光掲示板に表示されていたレギュラー1ガロン(約3.785リットル)の価格は3.89ドル(619円、1ドル=159円)だとボットに伝えた。
「完璧です。ありがとう」。ボビーはそう言って電話を切った。
これは、マット・コートランド氏とジョン・フレミング氏が開発したAIエージェントと、ガソリンスタンド店員との間で交わされた、約2万件もの会話のひとつだ。ちなみに、「ボビー」という名前は、アメリカの人気コメディアニメ「キング・オブ・ザ・ヒル(King of the Hill)」のキャラクターに由来している。
ロンドン在住の既婚カップル、コートランド氏とフレミング氏は、4月6日月曜日、個人的なサイドプロジェクトとしてウェブサイトと電話ボットをリリースした。それが「ザ・ガス・インデックス」だ。
このプロジェクトには、いま世界で同時多発的に起きている複数のトレンドが凝縮されている。ソフトウェア開発を加速させるAIツール「バイブコーディング」、イラン戦争に伴う燃料費の上昇、そして現実世界で人間と直接コミュニケーションをとる新世代のボットだ。
「最新情報を入手する、比較的新しい方法だと思った」
ニュージャージー州に実家があり、コンサルタントとして働くコートランド氏はBusiness Insiderにそう語った。「『人々に本当に役立つものは何か?』と考えた。そしてたどり着いたのが、ガソリン価格だった」。
オックスフォード大学のポスドク研究員であるフレミング氏は、彼らのアプリによって、アメリカの規制がいかに(イギリスと)大きく異なっているかが浮き彫りになったと指摘する。
アメリカ自動車協会(AAA)によると、6日時点のレギュラーガソリンの全米平均価格は1ガロンあたり4.16ドル(661円)。だが、オクラホマ州の3.43ドル(545円)からカリフォルニア州の5.93ドル(943円)まで、地域によって大きなばらつきがある。対照的に、イギリスでは地域間の平均価格差はわずか3セント(約5円)に過ぎないことを、彼らは発見した。
「アメリカはそうした規制の差を埋めようとしている」と、フレミング氏は言う。「イギリスのシステムはまさに模範的だ。ガソリンスタンドのスタッフは30分ごとに価格を更新し、誰もがアクセスできるように公開することが義務づけられているからだ」。
ダンキンのコーヒー何杯分高騰したか?

「ザ・ガス・インデックス」は、複数のデータセットを組み合わせることで、全米50州、17万軒以上のガソリンスタンドを追跡している。ベースとなるのはGoogleの位置情報と価格データだ。開発した2人によれば、同社のデータセットがカバーしているのは全米のガソリンスタンドの約半分に過ぎず、大手チェーンに情報が偏っている。
そのため、彼らはGoogleの価格API(Pricing API)がカバーしきれていない店舗のデータを確認し、情報の“穴”を埋めることを目指している。
具体的には、「ザ・ガス・インデックス」アプリはユーザーが投稿した給油機やレシートの写真に加え、どこにも価格を公開していないスタンドに対し、生成AIによる電話調査を行うことで、より多くのデータを収集している。
コートランド氏とフレミング氏によると、彼らは「クロード・コード(Claude Code)」を使ってウェブサイト本体を3日間で構築。もう2日かけて、「イレブンラボ(ElevenLabs)」「トゥイリオ(Twilio)」「スーパベース(Supabase)」といったツールを使って、電話ボットとデータ管理システムを開発した。サイトの残り10%を仕上げる最終段階の作業は「非常に過酷なものだった」と2人は振り返った。
このプロジェクトにかかったAIのトークン費用は、3000〜5000ドル(47万7000〜79万5000円)と彼らは見積もっている。
「電話を1回かけるたびに料金が発生する」とコートランド氏は言う。「これだけ大量に電話をかければ、費用は当然跳ね上がっていく。イレブンラボから助成金を得て、大量のクレジットを提供してもらった。それがなければ、費用はもっと高くなっていただろう」。
また、「ザ・ガス・インデックス」は高騰するガソリン価格を、誰もが日常感覚で理解できるような指標で伝えようとしている。
例えば、マサチューセッツ州エールワイフ在住のトヨタ・カムリのオーナーの場合を考えてみよう。ユーザーが車種と現在地を入力すると、満タンにするために以前よりどれだけ多く支払ったか、その金額が、ダンキンドーナツのアイスコーヒーやフラッファーナッター(マシュマロクリームとピーナッツバターを挟んだサンドイッチで、マサチューセッツ州の名物)といった、その地域の名物で換算されて表示されるのだ。

ネブラスカ州のガソリン価格の場合は、ネブラスカ大学のアメフトチーム「ハスカーズ(Huskers)」のカレッジフットボール観戦チケット代で換算する。ルイジアナ州なら「カフェ・デュ・モンド(Cafe Du Monde)」のベニエ(揚げドーナツの一種)の値段で、ニューハンプシャー州はメープルシロップ1パイント(約473ml)の価格と比べていくらか、といった具合だ。
とはいえ、データの精度にはバラつきがある。こうした価格比較はユーザーが投稿したデータに依存しているからだ。そのため「ザ・ガス・インデックス」には、ユーザーからの「不正なデータ(ノイズ)」を排除するチェック機能が組み込まれており、2人は「精度は時とともに向上していく」と語った。
Business Insiderはサイトに掲載されたスタンド10店に直接電話をかけ、抜き打ちチェックを行った。その結果、4軒はサイト上の価格と一致したが、1軒は15セント(約24円)の誤差があった。ガソリン価格は1日に複数回変動することもあるため、データ収集のタイミングによってそうしたズレにつながるのだ。
AIボット「ボビー」の電話にどう反応したか

ボビーは膨大な数のスタンドに電話をかけた。店員たちの反応はさまざまだった。
コートランド氏とフレミング氏が提供した通話記録によれば、テキサス州のあるレジ係は、ボビーに「ちょっと外に確認しに行ってきます」と言い、次のように答えた。「いま外に出て歩いているところ。ええと…レギュラーはいま1ガロンあたり3.49ドル(約555円)、ディーゼルは1ガロン4.99ドル(793円)ですね」。
しかし、協力的ではない人も少なからずいた。コートランド氏によると、700件に1件の割合で、通話中に罵声を浴びせられるという。
この電話調査は地域差も明らかにした。2人によると、全米で最も電話がつながりにくかったのはテキサス州だった。ニュージャージー州では、電話に出たあとに価格を教えてくれたスタンドはわずか20%だったという。
また、現在のガソリン価格を最も積極的に開示してくれたのは、(チェーンではなく)独立系のスタンドだったそうだ。
戦争が燃料費に与える影響

「ザ・ガス・インデックス」サイトは、価格高騰の背景にはイランとの戦争があると位置づけており、ホームページ上でもその点に繰り返し言及している。
実際、サイトのトップページには「この戦争は、あなた個人にどれだけの犠牲(コスト)を強いているか?」という一文があり、トップページの上部には次のように表示されている。
「イラン戦争が始まって以来、ガソリン価格は1ガロンあたり1.13ドル(約180円)上昇している」
ただ、コートランド氏とフレミング氏の2人は、このプロジェクトをあらゆる人に使ってもらいたいと考えており、露骨な政治色を帯びているようには見られたくないと言う。
「このアプリの目標はただ、人々に少しでも良い価格で物を手に入れられるようにしたいということだ」とコートランド氏は語る。「誰にとっても役立つツールだから、民主党支持の州の人にも共和党支持の州の人にも使ってほしい」。























