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- 乱戦のリカバリーウェア市場。TENTIALの「高付加価値」は、ワークマン「物量作戦」に耐えられるか

新年度が始まって2カ月が経とうとしています。生活リズムの変化に寒暖差の大きさも相まって、疲れや眠りの質に悩みを抱える人は少なくないのではないでしょうか。そんな時のセルフケアの大きな味方になるのが「リカバリーウェア」です。
2024年頃にメディアやSNSを通じて広く知られるようになり、TENTIALといったIPO(新規株式上場)を果たす新興メーカーも出てきました。そして現在、ワークマンやイオンなどの大手企業がこぞって参入し、価格破壊とブランディングの闘いが過熱しています。本記事で主要プレーヤーを比較し、市場の行方を展望してみます。

フルカイテンCEO
瀬川直寛
慶應義塾大学理工学部を卒業後、外資系IT企業等を経てベビー服等のECを起業。在庫問題が原因で3度の倒産危機を経験したが、その過程で外的要因や予測不能な変化に強い小売経営モデルを創出した。そのモデルを「FULL KAITEN」として2017年にクラウド事業化。現在はEC事業を売却した。
同社の在庫分析サービス「FULL KAITEN」は中小から大手のアパレル小売、雑貨小売、スポーツ小売など累計約200ブランドが導入している。
製品届け出件数は46倍超に

リカバリーウェアの需要が本格的に膨らみ始めたのは2022年頃です。製品の多くは、繊維に特殊な鉱石(セラミックス等)が織り込まれていて、皮膚の熱を吸収して遠赤外線を肌に放射し返します。これにより血行が促進され、肩こりや腰痛、筋肉の張りを和らげ、リラックス状態がもたらされるといいます。
国は2022年、「家庭用遠赤外線血行促進用衣」という一般医療機器の分類を新設しました。こうした体熱を基に遠赤外線を放射する衣料を「リカバリー」を標榜して販売するには、厚生労働省所管のPMDA(医薬品医療機器総合機構)への届け出が必須になったのです。
リカバリーウェアの市場規模を示す公的な指標はまだありませんが、民間企業による推計はいくつかあります。日本能率協会総合研究所の調査によれば、2030年の市場は2024年(189億円)の9倍の1700億円規模となる見込みです。
また、市場規模を直接示す指標ではありませんが、PMDAに家庭用遠赤外線血行促進用衣として届け出られた件数は公開されています。

2023年の時点ではわずか4件でしたが、2026年4月までに届け出は185件に達し、46倍にも増えていることが分かります。これは、多種多様なメーカーが参入していることの裏返しです。次章から各社の特徴を見ていきましょう。
『BAKUNE』のTENTIALは驚異の粗利率

まずは専業メーカーのTENTIAL(テンシャル)です。2020年からクラウドファンディングを用いてリカバリーウェア(当時は「ウェルネスウェア」等と表記)『BAKUNE』シリーズの販売を開始し、2021年4月には一般医療機器認証を取得しました。長袖上下セットは約2万5千円と高価ながら、自家需要とプレゼント需要を捉えて成長。その後、2025年2月にIPOを果たしました。
近年の業績の伸びは目をみはるものがあります。
2025年2月の上場後、決算期をそれまでの1月から8月に変更したため、単純な比較は難しいのですが、売上高・利益ともに倍々ゲームで増加していることが分かります。この2026年8月期は、折り返しである中間期(2025年9月〜26年2月)の時点で2025年1月期(12カ月間)の売上高を約3割、営業利益に至っては約5割上回っています。通期では売上高2.5倍、営業利益2.6倍になる予想です。
それ以上に、目を惹くのが原価コントロールの厳格さです。上グラフと同期間の粗利率(売上総利益率)は次のとおりです。
- 2024年1月期(12カ月) :69.9%
- 2025年1月期(12カ月) :72.0%
- 2025年8月期(7カ月の変則決算) :72.6%
- 2025年9月〜26年2月期(上期=6カ月):72.7%
2025年1月期以降、72%台で推移しています。これこそが、TENTIALの収益力の源泉といえます。この水準の粗利率が、そのまま高い営業利益率の土台となっているためです。
背景には、商品のすべてを自社で企画・開発しつつ、製造を外部に委託するビジネスモデルがあります。付加価値は自社で取り込みながらコストを抑える設計が、高い粗利率の維持につながっているとみられます。
積極的な広告投資は粗利率が安定しているからこそなせる業です。同社は今期、売上高の26.9%を広告宣伝費に充当しており、国内外の主要なスポーツウェア・用品メーカー(高くて15%台)を大きく上回ります。競合の増加を背景に、広告投資をテコに成長を維持しようとする姿勢がうかがえます。その効果もあってか、増収によって広告投資を吸収するどころか、営業利益率も上昇する見込みです。
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