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- 「30代・英語力ほぼゼロ」でオランダへ。現地で4年暮らして感じた「日本とのギャップ」
藤井そのこ(編集:中島日和)

「オランダでは、たとえ英語がカタコトでも、異文化への理解やリスペクトを感じます」
こう話すのは、4年前にオランダへ移住し、仲間とともにソフトウェアの研究開発を行う会社を起業した岸正太さん(35)。
実際に暮らし、仕事をする中で衝撃を受けたのは「オランダのインクルーシブ(包摂的)なカルチャー」だと話す。
オランダといえば教育先進国としても知られているが、その根幹にある個々を尊重する意識は、どのように根付いているのか。また、それは暮らしのどういった場面で実感するのだろうか。
オランダ生活でのエピソードから、おおらかなオランダカルチャーを紐解いていく。
移住時、英語力は“ほぼゼロ”だった

“海外移住”と聞いて、まず思い浮かべるのは言語の壁だ。
オランダの首都・アムステルダムでは、母国語のオランダ語に加えて、国民のほとんどが英語話者。英語でのコミュニケーションも一般的だ。
しかし岸さんの移住当初の英語力は、本人曰く“ほぼゼロレベル”。
伝えたいことをうまく話せず、会話の半分ほどしか理解できない状態だったそうだが、それから4年、今ではビジネス会話や会計士との専門的なやりとりまでそつなくこなしている。
「もちろん、最初はかなり苦労しました。
でもオランダで暮らし始めて感じたのは、英語をどれだけスムーズに話せるかといった技術面ではなく、伝え合うことを尊重している、ということでした。
アメリカでビジネスをしていた友人によると、ビジネス会話で文法を間違うと笑われたり、英語ができない=何もできないと捉えられたりすることもあると聞きました。
オランダではそういったことを感じたことはなく、たとえ言語が拙かったとしても、相手に対するリスペクトのあるコミュニケーションをしてくれる人が多いんです」(岸さん)
「間違えてもいい、伝えたいことを言葉にしていいという大前提があるから、思い切って話せるし自ずと話す頻度も上がる」と岸さんは続ける。
「英語が上達できた理由は、オランダのやさしさとコミュニケーションのハードルの低さがあったからだと思います。
英語に対する恐れやネガティブな感情になることが少なく、良いステップを踏むことができました」(岸さん)
雇用形態で賃金の差がない。決定権は「自分」にある

日本のジェンダーギャップ指数は、146カ国中118位(2024年6月発表)。対してオランダは28位だ。
上位とは言えないまでも日本よりははるかに順位が高く、実際に現地でも日本と比べて男女平等の意識を感じるという。
「まず報酬や昇進面では、同じ職業で男女の差をつけることが法律で禁止されています。
実際に街の中で働いている人たちも、男女半々の印象ですね。例えば、日本では男性の割合が高いイメージがありバスや電車の運転手、警察官、自転車の修理屋なども、オランダではむしろ女性の方が多いかもしれません」(岸さん)
家庭内でも、家事や子育てはできる人がやるというスタンスで、子どもをもつ家庭では共働きも多い。
「雇用形態による賃金の差があまりないのも特徴の一つ」と岸さん。オランダでは、正規雇用(社員)と非正規雇用(アルバイト、パートタイマーなど)で賃金格差はさほどなく※、1人当たりの労働時間は少なくても、労働者数が多い特徴があるという。
子育てがあるから働くことは諦める、一度非正規雇用で働いたら正規雇用になることは難しい、といった懸念は少なく、仕事・人生の決定権は自分にあることが想像できる。
※オランダでは、1996 年に制定された「労働時間による差別禁止法」により、労働者の時間当たり賃金が同一と規定され、手当や休暇についても労働時間に比例した権利が認められている。
「日本は夢の国だ」

“日本は、海も山も川もある。四季もある。食もエンターテイメントも優れている。夢の国だよ”とは、岸さんのオランダ人の友人の言葉だ。
岸さんは、日本を離れたことで、改めて実感する日本の良さもたくさんあると話す。
「食に関して言えば、日本はすごくこだわりがあり、質の高い国だったのだと思いました。
外食をすればまず外れがないし、2000円払えばちょっと贅沢なランチを食べられますよね。オランダでは2000円で美味しい外食はなかなか難しい(笑)。
驚くのは、日本のお弁当やお惣菜のバラエティの豊かさです。こちらではフランスパンをリュックにそのまま入れている人や、外でりんごを片手に歩いている人もよく見かけます」(岸さん)
円安であること以外に、日本の食は観光客が押し寄せる理由の一つだろう。さらに海外からは、“街が寝ない”という印象も持たれているそうだ。

「オランダでは、365日24時間営業の店はほぼありません。
そもそも夜通し誰かが動き、働くという思考がないんだとも思います。観光客にとって、昼夜問わず楽しめる場所が沢山あり、街が賑やかで、どんな料理も美味しい日本は、確かに“夢の国”だと思えるのかもしれません」(岸さん)
海外から優秀な起業家が集まる国

オランダで起業した岸さんは、「オランダは移住者へのスタートアップ援助金もあることから、起業においてもコスパがいい国」だと話す。ここ数年、日本人の起業家も増えているそうだ。
「スタートアップを始めたいときに、1年間のスタートアップ準備用のビザがおります。その1年の間でオランダに事業を登録することによって、起業ビザへの移行ができるんです。
正式なビザがおりた5年後にオランダ語の試験を受けて、そこを通過すると永住権を取得できる仕組みです。
ステップアップの段階が用意されていて、高すぎるハードルを設けないところにも“海外の優秀な起業家を集めたい”という国としての意志を感じますね。
フリーランスビザの形態で来ている日本人の方々も多いです。ライター、美容師、ワインの買い付けなど……一人分の給料を稼げる職業であれば、ビザはおりるようです」(岸さん)
日本人がオランダで起業をする際にハードルになりそうなのが、やはりオランダ語での申請関連だ。そこは文明の利器、AIの力で乗り越えられると岸さんは話す。
「言語理解のためのAIやサービスはたくさんあるので、意外とクリアできますよ。オランダには、一歩踏み出そうとする人をあたたかく受け入れてくれる環境が整っていると思います」(岸さん)
コニュニケーションにおいて「対等」の意識が根付いていて、さまざまな仕組みも整っているオランダは、日本からの移住でも暮らしやすい国と言えそうだ。
(執筆:藤井そのこ、編集:中島日和)
※本記事は、2024年8月1日に初出した記事の再掲です。
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