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- 組織から個人、都市から地方へ。2026のDEIを考えるMashing Upボードメンバー会議

2026年4月、Mashing Upアドバイザリーボードミーティングが開催された。2018年の設立時より Mashing Upのプロジェクトに携わるビジネスリーダーらが、今の日本社会が直面するDEIの課題を議論。組織から「個」へ、そして都市から「地方」へと向かう、包摂的な組織と社会の潮流が見えてきた。
主語は企業から個人へ。個の可能性が競争力の源泉
数多くの企業で組織変革を支援する岡島悦子さん(プロノバ 代表取締役社長)は、グローバルな文脈で「DEI」という用語自体が置き換えられつつあると指摘。
「たとえば、リクルートでは『インクルーシブ推進室』という部署がインクルージョン・ビロンギングを推進しています。主語を『企業』から『個』へと移し、個の可能性を最大化させることが競争力の源泉になるという考え方が背景にあります」。また、ダイバーシティの論点はジェンダーだけだったのが、世代間の差異や若者への機会提供にも及んでいると言う。社内外のプロジェクト型組織や越境人材の活用が進んだ今、真のインクルージョン設計が鍵になる。
「個」へのフォーカスという考え方は、生成AIの台頭によってさらに重要性を増している。石井龍夫さん(C Channel 監査役/トレジャーデータ エグゼクティブフェロー)は、AIがもたらす「平均化のリスク」に警鐘を鳴らす。 「AIは既存のデータを学習するため、アウトプットが最大公約数や平均値に陥りやすい。だからこそ、AIには真似できない独自の視点や感性、つまり個の多様性が重要になります」
また、星野裕子さん(フィナンシャル・タイムズ 在日代表)は、小規模ながら強力な個が集まる組織のあり方を提示した。 「FTでは一人ひとりがブランドの価値を体現する『クオリティ・ディフェンダー』であることを求めています。リモート環境下で分散型組織を動かすには、リーダーシップの再定義が不可欠です」
地方のジェンダーギャップ、アトツギ世代と本気の自治体への期待

都市部の先進事例とは対照的に、地方や製造業の現場には依然として深い溝がある。浜田敬子さん(ジャーナリスト)は「2015年から製造業の女性管理職比率は13%で停滞している」と、その停滞状況に触れた。
「地方女子の流出は、地域に根強く残る性別役割分業、つまり『家事・育児は女性』という規範が原因です。これを解消せずに『女性活躍』を謳うのは空洞化でしかありません」
他方で、映画「女性の休日」の上映をきっかけに全国450拠点に広がったジェンダー平等へのアクションや、三菱UFJフィナンシャル・グループで男性管理職対象に行う男性の育児・家事の実践に関する研修など、ジェンダー平等に関する変革の兆しを共有した。
佐藤真希子さん(iSGSインベストメントワークス 代表取締役)も、地方の「アトツギ(後継ぎ)世代」の軽やかさに注目する。 「30代後半を中心とした後継ぎ世代は、留学経験を持つ人も多い。ダイバーシティを特別視せず、『できる人がやればいい』というフラットな感覚を持っています」企業や地域の課題を、女性が高度なデジタル技術や人工知能(AI)を生かして解決しようとする新潟県三条市の試みを紹介し、本気化する地方行政への期待を語った。
また、林千晶さん(Q0 代表取締役社長)は秋田での起業支援を通じ、若い世代に自立への意欲を見出している。 「100人の起業コミュニティを形成したところ、プロジェクト申請者の7割が女性でした。高校生や大学生も参加しています。企業を主語にするのではなく『個の自立と豊かさ』を掲げると、地方の女性たちは驚くほどの熱量で動き出します」。
さらに、夫馬賢治さん(ニューラル CEO)は成長戦略の「初期設計」にこそDEIが必要だと説く。 「新産業の洋上風力会議なども依然として男性中心。最初から多様な視点を組み込まなければ、地方の活性化は絵に描いた餅に終わります」
「聞いているつもり」の終焉。対話と発信の大切さ
議論の終盤、焦点は「組織文化のOS」をどう書き換えるかに移った。篠田真貴子さん(エール 取締役)は、日本企業に蔓延する「聞くふり」文化を打破する必要性を強調する。
「多くのリーダーにとって『聞く』は情報収集でしかありません。しかし、対話を通じて新たな考えが生成される場そのものが、真にインクルーシブな環境であるはず」
企業の「情報開示疲れ」に言及したのは、一木裕佳さん(日経BP総合研究所 人的資本経営フェロー)だ。
人的資本や気候変動対応などサステナビリティに関する取り組みの開示が義務付けられた後、多くの企業が情報開示に乗り出した。が、「プライム上場企業が、情報開示に疲弊しているように見えることも。開示情報のボリューム競争に終始し、メッセージが不明瞭になっている。本質的には、現場を支える実務知の標準化が急務ではないでしょうか」 (一木さん)。
これに対し、小木曽麻里さん(SDGインパクトジャパン 代表取締役)は、ジェンダー開示は他項目に比べれば整理されており、難易度は高くないとした上で、「開示疲れ」を歩みを止める理由にすべきではないと警鐘を鳴らした。
メディアの責任についても鋭い視点が示された。鈴木款さん(フジテレビ 解説委員)は「PDFの開示ではなく、番組(コンテンツ)そのものが変わることこそが本質だ」と語る。 「報道番組における被疑者・被害者の表現など、人権の捉え方と従来の指針とのギャップを現場で一つずつ埋めていく作業が求められています」
最後に、石井さんは日本企業の「発信不足」という戦略的機会損失を指摘した。 「良いことは言わなくても伝わるという文化が、AI時代には仇となる。AIが学習可能な形で外部に発信することは、企業の正当な評価、ひいては日本の国力を上げることにつながります」
今回のミーティングを通じて、AIによる情報の平均化や、都市と地方のギャップなどの課題が浮き彫りになった。形式的な制度を超え、多様な個人の力を、多様なままに組織の価値に転換できるかどうか。それを考える対話が、これからの企業の競争力を左右するだろう。
(文:Mashing Up)
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