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- 原発新設なき15年、日本に原子力技術は残っているのか。採用回復も「技術」と「人」だけでは解決できない課題

気候変動対策やデーターセンター需要を追い風に、世界的に原子力発電への期待が高まっている。日本でも第7次エネルギー基本計画で原子力の持続的な利用が掲げられ、次世代炉の議論も進み始めている。2026年4月には東京電力柏崎刈羽原発6号機の営業運転も再開した。
一方で、東日本大震災以降の15年間、日本では新たな原発建設プロジェクトを一から立ち上げる機会がなかった。この間、原子炉の設計や施工経験を持つ技術者の高齢化は着実に進んでいる。
技術は一度失ってしまうと、再獲得するには大きなコストがかかる。大手メーカーはこの空白期間にどう備えてきたのか。そして、次の世代を担う人材は育っているのか。原子力産業の技術承継の現状を取材した。
「必要な技術、維持されている」

国内原子力事業大手の日立製作所(以下、日立)では、米GEベルノバとの合弁会社を通じて2025年5月からカナダで次世代炉とされる小型モジュール炉(SMR)の建設プロジェクトをスタートした。日立は2011年の東日本大震災の発生当時、国内で3基の原子力発電所のプロジェクトを進めていた※。日立としてはそれ以降、原子力発電所の新設プロジェクトへの関与は限られていた。
※当時建設中だった原発のうち、最も進んでいるのが島根原子力発電所3号機。2030年度の稼働を目指している。
ただ、日立で原子力部門の事業主管を務める吉村真人さんは、原子力に逆風が吹いていた中でも「必要な技術力は維持されており、継続的に蓄積が図られてきている」と話す。
震災前、日立は2007年に米GEと原子力事業のグローバル展開の拡大を目指して事業を統合。国内外にそれぞれ合弁会社を設立し、原子炉の新設や運転保守業務に取り組みながら、連携して次世代炉の研究開発に取り組んでいた。ただ東日本大震災後、日本側の合弁会社である現・日立GEベルノバニュークリアエナジーの業務の重心は、「原発の新設や保守」から「廃炉や新規制基準対応に必要な設備導入」などに少なからずシフトしていくことになった。
原発の新設と廃炉では、業務がまるで異なるように思えるかもしれない。ただ、実はここで求められる技術や知見は、かなり共通しているのだという。そういった意味で、「技術を培う場」はこの15年の間、形を変えながらも存在していた。吉村さんが「技術力は維持されている」と明かすのはこのためだ。

現場レベルでも、地道な技術承継の取り組みを続けてきた。2017年からマニュアルには記載されていないノウハウ・経験値の継承を目的に、原発の新設や保守などに関連する重要な技術項目を抽出し、文書化する取り組み(ナレッジマネジメント)を進めてきた。直近では、メタバース空間を活用したプラントの仮想体験、運転シミュレータによる研修など、技術研鑽できる場を確保するための工夫も凝らしている。
逆風下でも「あえて原子力」若手の選択
原子力業界に逆風が吹いていた15年の間に、あえてこの業界を選んだ若手もいる。
2015年に日立の原子力事業を担う日立GEベルノバニュークリアエナジー(旧:日立GEニュークリアエナジー)に中途で入社した皆川祐輔さんもその一人だ。
皆川さんは理系の大学院で修士まで進むと、2013年に非鉄金属メーカーに技術者として就職し、主に無線関係の研究開発を担当してきた。その後、2015年に日立に転職すると、原子力発電所の耐震基準・新しい安全規制への対応に関係する研究開発に携わってきた。
転職時には当然、原子力業界の先行きが不透明であることも考慮した。ただ、日立内外のさまざまな人に話を聞くなかで、原子力が不要と判断されるリスクへの心配よりも、カーボンニュートラルの実現を目指す社会において、原子力の分野で自分自身が挑戦したいという思いが勝った、と取材に語った。

転職から10年以上経過したいま、「海外でも原子力分野への期待が大きくなっているという実感があります」と話す。
グローバル企業である日立に加わったことで、海外のカンファレンスなどへの参加もできた。データセンター需要などもあり、世界で原子力産業への注目が増す中、国内だけではなく、海外も含めた多様なキャリアを描くことができる。「とにかく事業が大きいので、キャリアの幅も広い」と皆川さんは話す。
日立では震災以降も、原子力部門の採用人数を極端に減らすことなく採用を続けてきた。学生の志望理由も、廃炉プロジェクトやカーボンニュートラル社会のインフラに携わりたいという思いから、グローバルで活躍することを目指す学生まで多岐にわたる。
原子力事業に必要なのは、原子炉や放射線に詳しい原子力工学の専門家だけではない。機械工学や電気工学など、幅広い工学的知見が求められる。そうした多様な専門人材について、「重要な社会インフラとしての原子力分野を志望する学生は一定数いる」と吉村さんは話す。
特に第7次エネルギー基本計画が策定されてからは、他業界からも需要のある機械工学や電気工学などを専門とする人材の間でも「原子力に対する見方が大分変わってきていると聞いています」と吉村さんは語る。
日立では原子力事業の採用人数を2025〜27年度の3年間で2021〜24年度比の1.7倍にする計画だが、これも人手不足への対応ではなく、需要拡大を見越してのものだという。































