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- Apple Vision Proは車椅子操作をどう変えるのか。アップルが描くインクルージョンと身体拡張
「アクセシビリティは人権である」。アップルが40年近く掲げてきたこの考え方は、世界アクセシビリティ啓発デー(Global Accessibility Awareness Day、GAAD)15周年に発表された最新のアクセシビリティ機能にも色濃く表れていた。
アクセシビリティ機能を、より自然に、より直感的に
今回アップルが強化したのは、VoiceOverや拡大鏡、Accessibility Readerなど、多くのユーザーが日常的に利用しているアクセシビリティ機能だ。ユーザーが慣れ親しんだ体験をベースに、より直感的に情報へアクセスできるよう進化させた。
グローバル・アクセシビリティ・ポリシー・イニシアチブのシニアディレクター、サラ・ハンリンガーさんはこう語る。「私たちが苦労して学習しなければならないような、複雑な新システムを導入するわけではありません。すでに毎日信頼して使っているツールを取り上げ、その能力を劇的に向上させる。それがApple Intelligenceによって可能となることです」
この思想を象徴するのが、画面読み上げ機能のVoiceOverや拡大鏡アプリの進化だ。画面上の要素を説明することに加え、Apple Intelligenceの活用により、カメラが捉えた環境に対して「会話でさらに質問を投げかけ、リアルタイムに詳細を把握する」という双方向の視覚支援へと生まれ変わった。

例えば、エレベーターの故障案内にiPhoneを向けると、その内容を読み取り、「南側のエレベーターを利用してください」といった情報を音声やテキストで伝えてくれる。利用者はさらに質問を重ねながら、周囲の状況を把握できる。
また、「音声コントロール」も自然言語に対応した。画面上の正確なラベル名やグリッド番号を暗記せずとも、「あのオレンジ色のフォルダをタップして」「ビーチの写真をズームして」と見たままを口にするだけで操作できるようになる。

さらに、配信元に字幕がない個人動画であってもリアルタイムに字幕を生成する「自動生成字幕」を含め、今回発表された機能群はいずれも、人によって異なる見え方や聞こえ方、身体的な条件によって生じる情報アクセスの壁を取り除こうとするものだ。なお、Apple Intelligenceを活用した音声コントロールなどの一部機能は、提供開始時点では米国や英国などの英語環境のみの対応となる。

Apple Vision Proが広げる、新しい移動の選択肢
なかでも印象的だったのが、Apple Vision Proを活用した車椅子操作への取り組みだ。
ALSや脊髄損傷などにより、一般的なジョイスティックでの操作が難しい人々は、これまでも視線や頭の動き、呼気・吸気などを利用した代替入力装置によって電動車椅子を操作してきた。しかし、それらの多くはタブレット型の装置を固定して使用する必要があったり、屋外での利用に制約があるなどの課題も抱えていた。

今回アップルは、Apple Vision Proの高精度かつ応答性の高い視線トラッキング機能を車椅子の入力インターフェースとして活用する機能を発表した。ユーザーの視界には進行方向を示す矢印が表示され、視線によって移動をコントロールできる。顔に装着するデバイスであるため、体勢を変えても頻繁な再調整を必要とせず、屋内だけでなく一部の屋外環境でも利用できるという。
インクルーシブデザインは、美しく大胆であるべきだ
発表の最後には、iPhone向けのアクセシビリティアクセサリーも紹介された。これは、手の力や可動域に制約のあるユーザーでも快適にiPhoneを保持・操作できるよう開発されたもので、ユーザーコミュニティからのフィードバックをもとに設計されている。
これらの発表全体から感じられたのは、効率化だけではない、人間の可能性を広げる「身体拡張」という視点だった。
ハーリンガーさんは、「誰もが同じ方法でiPhoneを使っているわけではない」と語る。そして、インクルーシブなデザインは「美しく、大胆で、アイコニックであるべきだ」と説明した。アクセシビリティのための製品を、いかにも支援機器らしいものとしてではなく、誰もが使いたくなるプロダクトとしてデザインする。その姿勢にも、アップルらしさが表れているだろう。
テクノロジーによって何ができるかではなく、人々がどのように世界とつながれるか。その問いを出発点に製品を磨き続ける姿勢こそが、40年にわたりアップルのアクセシビリティを支えてきた思想なのかもしれない。
(文:Mashing Up佐藤)


























