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- AIは雇用を奪うのか、増やすのか…エコノミストが指摘する「パラドックス」と人員削減の真実

- 「AIはむしろ雇用を増やす可能性がある」と考えるエコノミストが増えている。その代表的な人物のひとりが、アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミストであるトルステン・スロックだ。
- スロックは、「労働コストの低下によって需要が拡大し、結果として雇用も増える可能性がある」と指摘している。
- 一方で企業は現在も、人員削減の理由としてAIを挙げることは続けている。
AI(人工知能)が社会を大きく変える存在として登場して以来、最も大きな懸念が雇用への影響だ。悲観的な未来の予想では、機械が大量の仕事を奪い、多くの労働者が職を失う状況が広がると考えられてきた。
しかし、こうした見方に対しては、逆の考え方を示す人も増えている。AIは特定の産業の成長を後押しし、雇用機会を増やすだけでなく、賃金の上昇にもつながっていくというものだ。
アポロ・グローバル・マネジメント(Apollo Global Management)のチーフエコノミスト、トルステン・スロック(Torsten Slok)は、「AIは人間の仕事を奪うのではなく、むしろ経済や雇用を押し上げる存在だ」と強く主張している一人だ。実際、過去1週間だけでも、彼はこのテーマについてブログ記事を5本書いている。
スロックの考え方の中心にあるのが、ジェボンズのパラドックス(Jevons Paradox)と呼ばれる理論だ。これは、労働コストが下がることで、その仕事を利用できる市場全体が拡大するという考え方だ。

スロックは、この「ジェボンズのパラドックス」が実際に起きている代表例として、放射線医療の分野を挙げている。10年前には、AIによって放射線科医の仕事はなくなると考えられていた。しかし実際には、放射線科医の年収は現在50万ドル(約7850万円)を超え、雇用も増え続けているとスロックは述べている。
「画像診断は、放射線科医の仕事の一部にすぎない。そして、その作業をAIによって効率化できれば、医療全体の需要が増え、結果として放射線科医の需要も高まる」と、彼はブログに書いている。
5月7日、スロックは新たな根拠を示した。今回はAIの登場による変化を、過去に実際に起きた大きな経済変化と比較し、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した2000年代初頭の状況を取り上げている。
当時、中国のWTO加盟によって、アメリカの雇用が大きな打撃を受けると懸念されていたとスロックは振り返っている。ただ、影響を受けると考えられている仕事の種類には違いがある。「中国ショック」では製造業の仕事が脅かされると考えられていたのに対し、AIは、主にホワイトカラーの職種に逆風になると見られている。
中国のWTO加盟後、実際には何が起きたのか。失業率は低い水準にとどまり、生産性の向上によって、失われた仕事を上回る数の新たな雇用が生まれた。懸念されていた最悪のシナリオは現実にはならなかったのだ。スロックによると、アメリカは現在、AIについても同じ道をたどろうとしているという。
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