- BUSINESS INSIDER
- 最高のチームで、変革に挑む。
- 生成AIの次は「フィジカルAI」。アクセンチュアが挑む製造業変革の最前線
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2026年、日本の製造業は大きな転換点を迎えようとしている。その鍵を握るのが、物理世界を動かすAI、いわゆる「フィジカルAI」だ。
NVIDIAのジェンスン・フアンCEOも言及し、2025年頃から急速に注目を集めるこの領域は、製造や物流の現場を根本から変え、日本の競争力を左右する“次のテーマ”として期待されている。
すでに一部の国では、人が介在しない「ダークファクトリー(完全自動化工場)」の稼働が始まり、無人工程の実装が進む。さらに、ヒューマノイドロボットを生産ラインに配備し、実証実験を進める事例も増えてきた。
これらの技術の基盤となるフィジカルAIは、日本の現場にどのような可能性をもたらすのか。
その最前線で実装に挑む、アクセンチュアのフィジカルAIコンサルタント・野本裕輔氏に、次世代の現場のリアルと自身のキャリアについて聞いた。
生成AIとフィジカルAIの決定的な違い

「デジタルの枠を超えて現実空間に物理的な影響をもたらすAI」──アクセンチュアの野本裕輔氏は、フィジカルAIをこう説明する。
「LLM(大規模言語モデル)やVLM(視覚言語モデル)などの生成AIは、デジタル空間内で処理した結果を返す技術です。
一方フィジカルAIは、物理法則を踏まえてAIで計算した結果を現実空間のハードウェアにフィードバックし、物理空間のモノに直接作用できる点が特徴です。
自律的に動くヒューマノイドやアーム型産業用ロボット、自動運転車両、AMR(自律走行ロボット)などもこれに含まれ、製造・物流分野での深刻な労働力不足解消に貢献することが期待されています」(野本氏)
すでに現場では、工場内の自動化による省人化が進んでいるというニュースも多く耳にする。従来の自動化とフィジカルAIの違いはどこにあるのか。
「従来のロボットは、プログラムされた手順に沿って正確に動くのが強みでした。しかし、流れてくる部品の配置が少しズレていることなど例外的な事象には対応できず、ラインが止まってしまう。また、扱うパーツのサイズが変わるたびにチューニングが必要でした。
対してフィジカルAIでは、人の目のようにわずかな差分を認識し、自律的に判断して作業するなど、柔軟な動作が可能になります」(野本氏)
フィジカルAIを導入すれば、ロボットを完璧に動かすプログラムを構築できる専門人材がいなくても、ロボットが自ら学習し適応するようになる。野本氏はこれを「ロボットの民主化」と表現する。
「これにより、今まで自動化が難しかった少量多品種のものづくりにも柔軟に対応できるようになります」(野本氏)
「ロボットは作れるが、頭脳は他国頼り」日本が直面する危機

アーム型産業用ロボットの分野では、日本企業は主要プレイヤーとして世界市場で大きな存在感を放ってきた。特に、機械としての信頼性やモーション制御などの基盤技術に強みを持つ。
一方で、ロボットの認識・推論・学習を担うソフトウェア基盤やモデル領域では、NVIDIAやGoogle DeepMindなど海外勢の影響力が高まっている。
野本氏は、「もちろん日本にもMujinのような後者に優れたスタートアップはありますが、このままでは『ロボット本体は作ることができるが、動かす頭脳は他国』になりかねない危機感がある」と語る。
「特定工程・特定ラインにおける無人化や、ヒューマノイドロボットの活用は、世界中で着実に進展しています。
ボトムアップ型のアプローチが主流の日本では、更なる加速が必要。2026年は本格的な実証が進む“種まき”の時期です。その後も継続的に水をやらなければ、芽が出ずに決定的な遅れを取ってしまいます」(野本氏)
アクセンチュアの強みは「点ではなく面で捉える提案力」

このような状況下で、アクセンチュアは社内の専門家を集めたバーチャル組織「フィジカルAIチーム」を組成し、さまざまな領域でプロジェクトを推進している。
代表的なソリューションの一つが『フィジカルAIオーケストレーター』だ。NVIDIAとアクセンチュアのAIプラットフォームやAIエージェントを組み合わせて、ロボットや工場のレイアウトをデジタルツイン上にリアルタイムで構築し、実際の設備と連動させる。

「アクセンチュアのイノベーション創発拠点『アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京(東京・麻布十番)』では、仮想空間上に工場のラインを設計し、VRゴーグルでロボットの動きを確認したり、操作したりできます。
ここではお客様に未来の世界観を具体的に提示しながら、自動化のステップを提案しています」(野本氏)
他社もフィジカルAI領域への参入を狙う中、アクセンチュアの優位性は「点ではなく面で捉える提案力」だと野本氏は話す。
フィジカルAIの議論は、「どのAIモデルを実装するか」という局所的な点に終始しがちだが、アクセンチュアは、投資対効果を含めた経営的視点から、全体最適化を見据えて導入をデザインしていくという。
40代、技術営業からコンサルの道へ

現在、フィジカルAIコンサルタントとして活躍する野本氏は、キャリア採用でアクセンチュアに入社した。
半導体メーカーの開発エンジニアからキャリアをスタートし、エレクトロニクス商社でNVIDIA製品担当の技術営業を務めた。これが現在の専門性へとつながっている。
「NVIDIAのビジネスは、半導体業界の中でも特殊です。多くのメーカーがハードウェア起点で提案を行うのに対し、NVIDIAはソフトウェアやアプリケーションが起点。
GPU(Graphics Processing Unit)そのものよりも“どんな問題を解決できるのか”といったアプリケーションやユースケースの説明に多くを費やしていました。
課題解決のためのソリューションを設計し、その手段としてGPUが必要、といったストーリーです。技術営業とソリューションアーキテクトの中間のような役割でした」(野本氏)
そうやって企業の課題解決を起点にした提案を重ねる中で、戦略の描き方や課題解決のプロセスそのものにもっと深く関われる環境で、自身のスキルを広げていきたいという思いが強くなり、転職を意識するようになった。
「前職も本当にいい会社でかなり後ろ髪をひかれた」というが、年齢的にも大きなチャレンジをするなら今だと思い、テクノロジーへの造詣も深いアクセンチュアへの転職を決意した。
「冷たい人ばかり?」不安を払拭した、ピープルリード制度
とはいえ、40代前半で未経験であるコンサルへの転職には不安もあった。
「ドライで冷たい人が多いのではないか」「論理的な思考や資料作成についていけるか」といった懸念だ。
「入社してみると、人間味にあふれた温かい職場でした。自分のように40代で転職した人も多く、壁を感じることはありませんでした。
コンサルタント特有の思考法や資料作成も、コツや考え方を理解すれば踏襲できるスキルだと気づき、周囲の強力なサポートを受けながら学ぶことができました」(野本氏)
このスムーズな適応を支えたのが、アクセンチュア独自のサポート体制、『ピープルリード制度』だ。
直属のプロジェクト上司とは別に、客観的な立場でキャリアや悩みの相談に乗り、最終的な評価も担当するメンター制度だ。
野本氏は、「直接の上司には相談しにくいプロジェクトの悩みや働き方、今後のキャリアプランなどを気軽に相談でき、とても助かっている」と話す。
「一足飛びにはいかない」からこそ、やる意義がある

事業会社からアクセンチュアへと移り、コンサルタントとして活躍する野本氏。
「調査などの川上段階から入り、お客様と一緒に実装まで考えるプロセスは非常に面白くてやりがいがある」と語る。さらに、社内に多種多様な専門家が揃っていることも大きな刺激になっているという。
「最新のAI開発を展開している部署があったり斬新な視点を持つデザイナー集団がいたりと、とにかく色々な専門家が集まっています。
また、海外のアクセンチュアが手掛けるグローバルなユースケースを提案に活かせるのも強み。受ける刺激や新鮮な気持ちになる度合いは格段に大きいと感じています」(野本氏)
クライアントとともに未来を描き、次の一歩を踏み出すことで、日本の製造業に元気になってほしい──それが野本氏の原動力だ。
「日本の製造業はハード面により強みを持っていますが、ソフトウェア面でも海外に遅れを取らず、そのポテンシャルを発揮してほしいと感じています。
フィジカルAIは、その変革を後押しする『新しくきた強力なツール』です。私は、フィジカルAIを通して、日本の製造業が強くなることに貢献したいと思っています。
とはいえ、どんな企業も一足飛びに導入できるわけではありません。だからこそ、地に足のついたDXから始め、ステップバイステップで着実に進めていく必要があります。
今後もクラウドや生成AI、そしてフィジカルAIを自在に組み合わせて課題に合わせた適切なソリューションを提案し、確実な実装へとつなげていきたいと思います」(野本氏)

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