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- なぜ個人投資家は、うまく売れないのか? 39万人のデータが示す、売却とリターンの意外な関係

- 相場を予測し、売買で成功し続けるのは、プロでも難しいことだと言われている。
- そんななか、個人投資家が「売る」ことが、長期的に見て本当に得になっているのか?
- 「長期・積立・分散」の資産運用のデータ等を用いて考える。
「安く買って、高く売る」は、投資の世界では有名な言葉ですが、実行するのは難しいものです。相場を予測し、売買で成功し続けるのは、プロでも難しいことだと言われています。
今回の記事では、個人投資家が「売る」ことが、長期的に見て本当に得になっているのかについて、「長期・積立・分散」の資産運用のデータ等を用いて考えます。
「売却経験がある人」のリターンは平均的に低かった
筆者が勤務するウェルスナビにはサービス開始から現在まで、多くのお客様の資産運用のデータがあります。このデータを用いて、今回は「売る」ことと投資のリターンの関係を分析しました。具体的には次のような分析です。
2025年12月31日時点で自動の資産運用サービス「ウェルスナビ」で3年以上運用している約39万人を、一度も出金せず運用を続けている「運用継続グループ」と、1円以上の出金をしたことがある「出金ありグループ」(※1)に分け、同日時点での「1年あたりのリターン」(※2)を比較しました。
その結果、「出金ありグループ」は、一度も出金していない「運用継続グループ」に比べて、1年あたりのリターンが低い傾向にありました。運用継続グループのリターンが14.6%だったのに対し、「出金ありグループ」のリターンは9.9%にとどまり、4.7ポイントの差がありました。
なお、ウェルスナビの投資一任サービスでは、利用者が「出金」指示を行うと必要に応じた資産の売却が行われるため、「出金する」ことが「資産を売る」ことに相当します。また、投資一任契約に基づきウェルスナビが運用を行うため、利用者のリターンの違いには銘柄選択による差はなく、主に入金や出金のタイミング、リスク許容度の違いが反映されます。
出金した人のほうがリターンが低い傾向があった

※ 当該リターンは過去データに基づき計算されたものであり、将来の運用成果等について示唆・保証するものではありません。
これは、投資行動の違いがリターンに与える影響を分析するため、利用者ごとの入出金額と入出金タイミング、運用中の資産の含み益に将来かかる税金を考慮した「1年あたりのリターン」(円建て)により評価しています。このため、元本に対するトータルの増減率を示すホーム画面の損益率とは異なります。
さらに、リターンの分布にも違いが表れています。「出金ありグループ」の1年あたりのリターンは、「+0〜10%」の範囲に約4割が集まっています。この結果から、まだ利益が少ない状況で出金したことで、より大きなリターンを逃したケースがあると考えられます。
少ない利益で出金し、より大きなリターンを逃したケースがある

※ 当該リターンは過去データに基づき計算されたものであり、将来の運用成果等について示唆・保証するものではありません。
※10%きざみのリターンは「超~以下」で区切っており、たとえば「+0~+10%」は「0%超~10%以下」となります。
このような傾向が生じた要因としては、利益が出たら早めに利益を確保したくなるという、投資の世界では以前から知られている心理的なバイアス(専門的には「気質効果」と呼ばれます)が働いた可能性が考えられます。
一方で、「出金ありグループ」には、1年あたりのリターンが20%を超える利用者が「運用継続グループ」よりも多くいることも事実であり、一部の方々は良いタイミングでの売却もできていることがわかります。
このことから分かるように、「売る」から必ずリターンが下がるということではありません。「安く買って、高く売る」を実践できれば、何もしなかった場合よりもリターンが高くなる可能性はもちろんあります。そして、基本的には誰もが、より良い(高い)リターンが得られるタイミングでの売却を望んでいると思います。
ただ、こうしたデータ全体を見ると、運用の途中で「売る」ことを行った場合のリターンが、何もしなかった場合に得られたであろうリターンを超えることは簡単ではないことが分かります。
「長期・積立・分散」の資産運用(※3)では、10年、20年と長く続けることで、短期的な値動きの影響を乗り越えて、世界経済の成長から得られるリターンを積み重ねていくことを目指すものです。まとまったお金をすぐに使う予定がなく、将来に向けた資産形成を目指すなら、途中で利益確定などははさまず、長い目で淡々と資産運用を続けるのが合理的と言えるのではないでしょうか。
とはいえ、いざ実際に上下する相場を前にしたら、資産運用を中断したい気持ちになる場面も少なくないでしょう。こうした心理に振り回されず、長期的に資産形成を進めるにはどうすればいいのでしょう。
相場と上手に向き合うための3つの対策
1. 生活資金と運用資金を分ける
まずは基本的なことですが、生活資金と運用資金を分けることです。生活資金まで投資に使ってしまい、資金繰りを理由に不本意なタイミングでの売却をしてしまうことは避けたいです。生活費の3〜6カ月分は生活資金として確保しておきましょう。そして運用資金は、それとは別に当面使うことのない資金を用いましょう。これにより、予期せぬ事態になったときでも、運用資金を切り崩す状況に陥るのを防ぎます。
2. 売却時期は「目的」で判断する
長期投資では、「利益が出たから」「相場が下がったから」といった相場の動きを、売却の判断軸にしないようにします。「将来、資金を何のために使うか」という投資の目的を事前に決め、その目的のためにお金が必要なときが来たら売却するなどの計画をあらかじめ決めておきます。
3. 時間をかけて行動する
相場の変動直後は、どうしても感情が揺さぶられがちです。冷静な判断ができるように、「相場の変動が大きな時期に一定期間は売買しない」というルールを設けてはいかがでしょうか。また、計画的なものでも、資産の売買は段階的に行うことがおすすめです。まとまった資金が手元にあったとしても、一度に投資にまわさず分けて投資する積立投資をしても良いですし、逆にお金が必要で資産を売る場合には、一度に売らず、徐々に売っていく方法もあるでしょう。
長期投資に大切なのは「続ける仕組み」
日々動く相場の中で「早くリターンを得て安心したい」という気持ちは、資産運用の中で誰もが向き合う自然な心理といえるでしょう。こうした心理を個人の意志だけで抑え込むのは簡単ではありません。
そのため長期投資で重要なのは「相場に合わせて売買する技術を持つこと」よりも、投資のルールを事前に決め、感情や相場に流されず実行し続ける仕組みを作ることだと言えるでしょう。「言うは易く行うは難し」ではありますが、ご自身の仕組みづくりに、今回ご紹介した分析結果や3つの対策が参考になれば幸いです。
※1 ここでの「出金」は、ウェルスナビの運用者が自らの意思により、出金メニューから一部または全部の出金(1円以上)依頼を行い、出金が完了した場合を指します。
※2 投資行動の違いがリターンに与える影響を分析するため、利用者ごとの入出金額と入出金タイミング、運用中の資産の含み益に将来かかる税金を考慮した「1年あたりのリターン」(円建て)により評価しています。このため、元本に対するトータルの増減率を示すホーム画面の損益率とは異なります。
※3 ウェルスナビは世界約50ヵ国・約12,000銘柄への分散投資を自動化しています。
参考資料:牛島祐亮・枇々木規雄「売却(出金)行動と運用利回りの関係―ロボアドバイザーの利用者データを用いた運用利回りの要因分析―」(2026年2月16日(改訂版))























