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- 仕事を辞め、大学をあきらめたデイトレーダーたちが語る「最大の後悔」とは?
仕事を辞め、大学をあきらめたデイトレーダーたちが語る「最大の後悔」とは?

- フルタイムを目指すデイトレーダーの中には、想像以上に過酷な現実に直面する者も少なくない。
- 不安定な収入とトレードによる精神的負荷に苦しんだという声は多い。
- キャリアと学業を手放した3人のトレーダーが、「いまなら何を変えるか」について赤裸々に語った。
クロアチア出身のマルコ・グレグリッチ氏(27歳)は、SNSのフィードにフルタイムのデイトレーダーを名乗る人物を初めて見たとき、完全に心を奪われたという。ネット上でよく見かける典型的なインフルエンサーだ。遊牧民のようなライフスタイルを送り、スポーツカーを乗り回し、インターネット環境さえあればどこでも稼げると豪語するタイプである。
グレグリッチ氏は次第に市場にのめり込み、大学院修了後、一般的なキャリアをいったん棚上げにして、彼らのような生き方に挑戦することを決意した。
それから数年が経ったいま、市場における彼のキャリアは想定とはやや異なる展開をたどっている。フルタイムでトレードを始めた最初の9カ月間、彼は損失を出すばかりだった。この暗黒期を、本人は「高い授業料を払っていた」と振り返る。
Business Insiderが確認した資料によると、2026年に入ってからの運用成績は3〜10%という控えめなリターンにとどまっている。この数字は多くのトレーダーの成績を上回るものではあるが、生活費を賄うには到底足りない。
「トレードを続ければ続けるほど、これで経済的自由を手に入れるのは非現実的だとわかってくる」とグレグリッチ氏は語る。現在、収入の大半は別の副業から得ている状況だという。
パンデミック期の投資ブームは多くの人を市場に引き寄せ、派手なライフスタイルや目を見張るようなトレード利益の画像がネット上に溢れるようになった。それ以来、短期間で富と自由を手にできるという夢は膨らみ続けてきた。
しかし、実際に挑んだ多くの人々にとっての現実は甘くない。Business Insiderの取材に応じたトレーダーたちは、資金面の制約と、トレードに伴う苛酷な精神的ストレスに苦しんだと口をそろえる。結局もとの仕事に戻ったり、別の収入源を見つけたりした者が多く、「踏み出すタイミングが早すぎた」「仕事の精神的なきつさを甘く見ていた」など、さまざまな後悔を抱えている。
フルタイムトレードの魅力は、近年の株式市場の上昇とともに高まってきた。トレンド分析ツール「Glimpse」のデータによると、「フルタイムトレード」に関する世界の検索動向はこの12カ月で684%も急上昇している。関心がピークに達したのは2026年3月。イラン戦争が勃発し、市場のボラティリティ(価格変動性)が急激に高まったタイミングと重なる。
過去5年間の「フルタイムトレード」に関する世界のGoogle検索動向
「自分が自分のボスになれる」という考えに惹かれたことも、トレードを始めた理由の一つだったと語るグレグリッチ氏は、会社勤めを手放すという夢は若者にとって「非常に危険」だと考えるようになったと語る。
「トレードを始めれば天国が待っている、人生が一変する、嫌な感情も全部消えると思い込んでいる人が多い。でも、現実はそんなことにはならない」
「最初はさぼっていた」
グレグリッチ氏によると、フルタイムのトレードを始めた当初は家族のサポートがあり、必要になればすぐに会社員の仕事に戻れるという安心感もあった。それがフルタイム・トレード特有のプレッシャーを和らげていた。それでも、このライフスタイルの現実には驚かされた部分もあったと明かす。
一つは孤独感だ。フルタイムのトレードは孤独になりがちで、トレーダーのコミュニティが比較的小さいクロアチアではなおさらだった。
「1日に少なくとも8時間から10時間、ほぼずっと1人でいる。友人やガールフレンドとは定期的に会っていたが、勝ち負けの感情を分かち合える相手はいなかった」と彼は語る。「社交的な性格の人にとって、毎日PCの前に座り続けるのはかなりつらいはずだ」。
また、市場がいかに精神的疲弊をもたらすか、特にドローダウン(資産の目減り)の局面で痛感したという。キャリアで最も苦しかった瞬間は、トレード仲間が全員乗っていた勝機に自分だけ乗り遅れたときだった。どれほど稼げたかを悟った瞬間、強烈なFOMO(Fear of Missing Out、乗り遅れることへの恐怖)に襲われた。

連敗が数カ月に及んだときは特に堪えた。
「トレードしたくない日もある。ただ、ベッドから起き上がりたくない——そんな気持ちになることもある」とグレグリッチ氏は打ち明ける。
やがて市場の感覚をつかみ、月1〜3%の利益を出せるようになったが、最初の数年間の月収に換算するとわずか約100〜300ユーロ(約1万8500円〜約5万5500円、1ユーロ=185円)に過ぎなかった。
振り返ってみると、相場に飛び込んだ当初は「学習が圧倒的に不足していた」と感じている。金利変動に市場がどう反応するかといった基礎知識を、早い段階でもっと学んでおくべきだったという後悔は尽きない。
規律の欠如も反省点だ。始めたばかりの頃はオンラインのトレード「グル(指南役)」に心を奪われ、市場の研究には1日3〜4時間程度しか費やしていなかった。いま思えば、それでは到底足りなかった。
「最初のうちは少しさぼっていた」と、グレグリッチ氏は振り返る。自分のエッジ(優位性)を見つけるまでに、本当に長い時間がかかってしまった」。
踏み出すタイミングが早すぎた
オーストラリア在住のジェレミー・リム(31歳)氏は、KPMGでシニアコンサルタントとして働きながらフルタイムのトレードに転身することを決断した。
Business Insiderが確認した給与明細によると、彼は直近のポジションで6桁(10万ドル台)の年収を得ており、その収入を手放すのは容易ではなかった。それでも、その時点ですでに4年間にわたって市場に深く入り込んでいた彼は、当時の仕事に心底嫌気が差していた。
トレード専業になった1年目について、リム氏は「複雑な気持ちだった」と語る。毎月の収入が激しく乱高下するのを目の当たりにし、大きなストレスを抱えたからだ。Business Insiderが確認した証券口座の明細によると、2024年から2025年にかけての月平均利益は約3300ドル(約52万4700円、1ドル=159円)だったが、最悪の月には6000ドル(約95万4000円)ものの損失を出していた。

証券会社の書類を確認したところ、彼は直近の会計年度に20万ドル(約3180万円)以上を稼いでいた。しかし、本人はフルタイムに転身するのは「少し早すぎた」と話す。パフォーマンスに関するプレッシャーにどう対処するかといった準備が追いついていなかったからだ。
後悔していることは何かと問うと、彼はこう答えた。「フルタイムの仕事を続けながらでも、副業でトレードすることは十分可能だ。必ずしも仕事を辞める必要はないし、それでもしっかり稼ぐことができる」。
また、仕事を辞める前に、少なくとも半年から1年間はトレードでプラスの実績を積み重ねておくことを勧めると語った。
「旅行しながら大金を稼いでやろうという、完全に的外れな期待を抱いていた。でも数カ月後には、そんなハネムーン期間はとっくに終わっていたことに気づいたよ」
資金の枯渇という現実
イギリス在住のジェームズ・シェムウェル(27歳)氏がフルタイムのトレードに踏み切ったのは、Aレベル(イギリスの大学入学資格試験)を終えた直後のことだった。在学中にSNSでトレード関連のコンテンツに出会い、経済的自立という考え方に強く惹かれるようになっていた。
もともと大学に進学しないことは決めており、別の道を切り開こうと意気込んでいた。その後、イギリスの大手スーパーマーケットチェーン「テスコ(Tesco)」の仕事を辞めて、フルタイムのトレードに専念することにした。市場でわずかでも利益でも上げられれば、より良い生活を維持するには十分だという算段だった。
彼は当時の心境についてこう語る。「ちょっとでも上を目指せる可能性があるかもしれない、自分にもっと合った場所に移れるかもしれない——という考えが気に入っていた。やらずに後悔するより、やってみて後悔するほうがいいと思ったんだ」。
しかし、シェムウェル氏はすぐに行き詰まった。仕事を辞めた途端、それまで月に数百ポンド(数万円〜約10万円前後、1ポンド=213.5円)あったリターンがほぼゼロ、あるいはわずかにマイナスになったのだ。
成績が落ち込んだ最大の要因は、パフォーマンスに対するプレッシャーだったと彼は分析している。安定した収入がなくなったことで、その重圧はいっそう増した。有望なトレードのチャンスが見つからないときの焦り、ポジションを翌日に持ち越す際の不安……当時のネガティブな感情をいまも鮮明に思い出すという。
そうしている間にも貯蓄はみるみる減っていった。フルタイムのトレードを始めて数カ月後、シェムウェル氏は飲食・宿泊業のパートタイムに戻ることを決断した。現在は週3日働き、残りの日にトレードを行っている。
彼もまた、フルタイムへの転身が早すぎたことも後悔していると言う。フルタイム・トレードの実態をもっとよく理解していれば、また取引に回せる資金がもっとあれば、道は違っていたかもしれない。手元資金が多ければ多いほど、より大きなリターンを上げなければというプレッシャーが和らぐからだ。
「これは完全な成果主義の世界だ。すべてを正しくこなすことだってできるはずなんだ」と彼は語る。「でも、私はプレッシャーに飲み込まれてしまった」。
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