- MONEY INSIDER
- マネープラン
- 会社員が「副業」をはじめる前に、確認しておきたい4つのポイント。不要なトラブルを未然に防ごう

- 副業の目的はさまざまだが、大きな動機付けになるのが「収入増」だ。
- しかし、事前準備を行わずにスタートして、後から思わぬ出費に気づくことがある。
- 会社員が副業をスタートする前に確認しておきたい4つのポイントを紹介する。
「副業を始めれば、手取りが増える」——副業の目的はさまざまだが、大きな動機付けになるのが「収入増」だ。しかし、事前準備を行わずにスタートして、後から思わぬ出費に気づくことがある。税金、社会保険料、年金、会社員の副業には、知らないと後から思わぬ出費につながるポイントが複数ある。
会社の就業規則で副業が禁じられていないか。確定申告は必要か。翌年の住民税はいくらになるのか。社会保険料への影響は——。
本記事では、会社員が副業をスタートする前に押さえておきたい4つの確認ポイントを、チェックリスト形式で紹介したい。今すぐ始めたい人も、いつか始めたい人にも、順に読み進めるだけで、典型的な「うっかり」を防げるだろう。
1. 勤務先の就業規則を確認する
第一のチェックポイントは、勤務先の就業規則だ。「働き方改革」の推進の流れに伴い、副業に対する意識は変化しているが、就業規則の規定は会社ごとに異なる。まずは副業に関する規定の有無を必ずチェックしよう。勤務先の許可なく副業を行った場合など、規定に反する場合は懲戒の対象になる可能性もある。
確認すべき3つのポイント
就業規則のうち、副業に関連する条項では、次の3点をチェックしておきたい。
- 副業を行う上で必要な手続きや要件
- 申請が必要な場合の手続きフロー(誰に・どのフォーマットで・いつまでに)
- 禁止される業務の範囲やルール(競業避止義務・利益相反となる業務の規定、守秘義務など)
厚生労働省は2018年にモデル就業規則を改定し、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という一律禁止規定を削除した。現在のモデル就業規則では、届出を基本として勤務時間以外の副業・兼業は従事可能で、競業や情報漏洩のリスクがある場合は副業・兼業を制限できるという考え方だが、あくまで「モデル」であり、すべての企業が同じルールとは限らない。
特に注意したいのが、本業との「労働時間の通算」だ。労働基準法では、複数の事業所で働く場合の労働時間は通算して計算するルールがある。副業先での労働時間が長すぎると、過重労働として本業側で問題視されることもある。
最新版のモデル就業規則には、「副業・兼業に関する裁判例」も掲載されているので、合わせて目を通しておきたい。
【チェックリスト】就業規則編
□ 就業規則の副業に関する条項をチェック
□ 許可制・届出制の場合、提出書類のフォーマットを入手
□ 副業関係先が競合他社・取引先に該当しないか確認
□ 守秘義務に抵触する内容を扱う副業ではないことを確認
2. 所得税(確定申告)の準備をする
副業による収入額によっては、所得税の確定申告が必要になる。事前に押さえるべきポイントを整理したい。
副業所得はどの区分に該当するか
給与所得以外の副業による収入は、基本的には雑所得に分類される。しかし内容や事業規模などによっては「事業所得」や「給与所得」となるケースもある。
- 雑所得:副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)、フリマアプリの売上、アフィリエイト収入など
- 事業所得:継続的・営利的に行う事業の所得。青色申告特別控除が受けられるなど節税メリットもある
- 給与所得:副業先と雇用契約を結んで給料として受け取るケース
国税庁の通達では、事業所得と雑所得の判断の基準として「所得に係る取引を帳簿書類に記録し、かつ、記録した帳簿書類を保存している場合」には、事業所得に区分されるという見解が示されている。逆に帳簿がなければ雑所得として扱われ、青色申告や損益通算などが行えない。
「20万円ルール」の2つの注意点
会社員の副業について、よく耳にするのが「給与所得者で副業による所得が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要」という、いわゆる「20万円ルール」だ。
ただし、ここには2つの大きな注意点がある。
- 「20万円」は所得額(収入から必要経費を差し引いた額):基準となる額は「収入」ではなく「所得」。副業の売上が30万円でも、必要経費として20万円が計上されていれば、所得額は10万円で確定申告は不要となる。
- 副業所得額にかかわらず、住民税の申告は必要:このルールは所得税に限った話で、住民税には適用されない点に留意しよう。つまり副業所得が1円でもあれば、住所地の自治体への「住民税の申告」が必要となる。詳細は次の項で解説する。
また、医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)などで還付申告をする際は、副業所得が20万円以下であっても合わせて申告する必要がある。
もし、副業での年間所得額が20万円を超える可能性があれば、青色申告の選択肢を確保するために「青色申告承認申請書」を副業開始直後に提出しておきたい。青色申告承認申請書の提出期限は、原則として「青色申告をしたい年の3月15日まで」または「新規開業の場合は開業日から2ヶ月以内」となっている。
青色申告承認申請書を提出して、白色申告を行うこともできるし、「20万円ルール」に当てはまれば確定申告そのものは不要になる。副業の規模が大きくなる見込みがあるなら、所轄の税務署へ、個人事業主として開業届と青色申告承認申請書を提出しておこう。
【チェックリスト】所得税編
□ 副業での所得が年間で20万円以上になる可能性がある
□ 売上と経費を記録する仕組み(会計ソフト・スプレッドシート等)を用意
□ 確定申告が必要となる場合は、申告期間を確認(例年:2月16日ごろ〜3月15日ごろ)
3. 副業で1円でも所得があれば「住民税の申告」は必要
会社員の副業で「うっかり」が起きやすいのが、住民税。仕組みを把握していないままだと、副業をした翌年の家計を直撃してしまう可能性も高い。
住民税には20万円ルールがない
先ほどの「20万円以下なら申告不要」というルールは、所得税だけに適用される。住民税には同様の特例がなく、副業による所得が1円でも発生すると、原則として住民税の申告が必要だ。
所得税の確定申告をすれば、その情報は自治体にも自動的に共有されるため、改めて住民税の申告は不要。しかし、副業所得が20万円以下で確定申告をしなかった場合は、住所地の自治体の役所に直接、住民税の申告をする必要がある。
「e-Tax」では住民税申告はできない
住民税申告も、電子申告に対応している。使用するのは地方税ポータルシステム「eLTAX」。おなじみの「e-Tax」は所得税申告のみに対応したシステムになるため、住民税の申告には使えないのだ。
「eLTAX」には、Web版、スマホ(iOS、Android)版アプリ、PC(Winodws)版アプリがあり、個人でも利用可能。自宅などから役所に出向かず行える電子申告をするなら、副業開始前に利用届出や利用者IDの取得、証明書のインストールなどの準備を行っておこう。
もちろん、役所の窓口での申告も行える。初年度は窓口での申告を選び、必要書類や段取りを把握してから、次年度以降は「eLTAX」にするのもいいだろう。
住民税の納付は「翌年6月以降」に来る
住民税の納付タイミングは、確定申告が終わってひと息ついた毎年6月ごろ。例えば、2026年中の副業所得は、2027年の3月までに確定申告し、2027年6月から1年かけて納付することとなる。この納付までのタイムラグを意識せずに、副業収入を生活費に組み込んでしまうと、住民税の納税資金が足りなくなってしまいかねない。
対策はシンプルだ。副業収入の20〜30%程度を目安に「翌年の納税準備金」として別にプールしておくこと。
副業分の住民税は「普通徴収(自分で納付)」に切り替え
会社員の場合、住民税は給与から天引きされる「特別徴収」により会社経由で納付される。これを自分で納付する「普通徴収」に切り替える方法は2つある。
- 確定申告時に「普通徴収」を選択:確定申告書の第2表の「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」欄で「自分で納付(普通徴収)」をチェックして提出する。
- 確定申告を行わない場合は、住民税申告書で「普通徴収」を選択:確定申告が不要の場合は、住民税の申告窓口(自治体の納税窓口)で、住民税申告書に「普通徴収」をチェックして提出する必要がある。住民税申告書は自治体の公式ページでダウンロードするか、窓口で請求して入手できる。
【チェックリスト】住民税編
□ 住民税は副業所得20万円以下でも申告が必要
□ 住民税の納付は、翌年6月以降となるため納税準備金を準備
□ 確定申告書または住民税申告書にて「普通徴収」を選択して提出
4. 健康保険料と厚生年金への影響を確認する
フリーランスのように業務委託で働くのか、副業先と雇用契約を結ぶかで、社会保険料負担への影響が変わる。
業務委託・個人事業の副業では影響なし
クラウドソーシングのライティング、講師業、ハンドメイド販売など、雇用契約を伴わない副業の場合は、副業先で社会保険に加入する義務は発生しない。本業の健康保険・厚生年金がそのまま適用されるため、社会保険料の追加負担はない。
雇用契約を伴う副業は要注意
一方、副業先でアルバイトやパートとして雇用契約を結ぶ場合は、その勤務先での社会保険加入要件を満たすかどうかがポイントとなる。加入用要件は厚生労働省のサイト「社会保険加入の要件」で確認しておこう。
「週の所定労働時間が20時間以上」「月額賃金が8.8万以上」など、会社員の副業としてはハードルが高い要件になるが、社会保険加入義務がある場合は、被保険者本人が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を、加入条件を満たした日から10日以内に提出する必要が生じる。
提出先は、主たる事業所(本業)の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所。また、本業となる企業が加入している健康保険組合へも手続きが必要となる。
【チェックリスト】社会保険編
□ 副業先との契約形態が、雇用契約か業務委託かを確認¥
□ 副業先と雇用契約を結ぶ場合、社会保険の加入要件に該当するかを確認
□ 二以上事業所勤務に該当する場合は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所と、本業先の健康保険組合へ自ら届け出る
まとめ
副業に対するハードルが下がった一方、税金等の処理をスムーズに運ぶ準備はまだまだ煩雑だ。所得税だけでなく、住民税そして社会保険料についての影響を踏まえておけば、想定外の支出に苦しまされることもなくなるだろう。副業のスタートと同時に「納税準備資金」を確保する習慣を身につけておきたい。
なお、本記事は2026年5月時点の制度に基づいて執筆している。実際の確定申告や届出にあたっては、最新の情報を国税庁・厚生労働省・日本年金機構の公式サイトで確認するか、税理士・社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめする。
















