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- RTOって何?…AIスタートアップの従業員は「在宅で勤務」せず、「職場で帰宅」している

- 創業者や職場環境の専門家によると、コロナ禍以降に設立されたAIスタートアップでは、既存の企業とは異なる働き方や職場文化が形成されているという。
- AIスタートアップの従業員は、オフィス復帰命令(RTO)を出されるまでもなく、自発的にオフィスへ出社し、長時間働く傾向がある。
- 創業者たちは、対面での勤務がイノベーションを促進する、信頼性の高い環境を育むと語っている。
「RTOって何?」
これは、クラウドコンピューティングのスタートアップ、トゥギャザーAI(Together AI)のCEO、ヴィプル・ヴェード・プラカシュ(Vipul Ved Prakash)が、Business Insiderから「従業員をオフィスに呼び戻すために、オフィス回帰(RTO:Return To Office)を促す社内メモを社員に送らなければならなかったことはあるか」という質問に対して返した言葉だ。
「みんな基本的に出社したがっている。こちらが強制したことは一度もない」とプラカシュは語る。
この彼の返答は、コロナ禍のロックダウン後に設立されたAIスタートアップと、歴史ある大企業との間にある際立った文化的な違いを浮き彫りにしている。スタートアップの従業員は、誰に言われるでもなく自発的にオフィスに行き、なかには週末に出社している者もいる。
スタンフォード大学の経済学教授、ニコラス・ブルーム(Nicholas Bloom)はBusiness Insiderの取材に対し、スタートアップ従業員の年齢層の若さと、彼らの多くが自社に対して持つ個人的な利害関係(ストックオプションの保有など)が相まって、「ほぼ完全な対面」かつ「100%仕事中心」という働き方を生み出していると語る。
「2000万ドル(32億円、1ドル=160円)相当の自社株を持つ独身の23歳であれば、週100時間オフィスで働くのは理にかなっている」とブルームは言う。
「彼らは在宅勤務をしている(work from home)のではなく、むしろ『会社で帰宅(home from work)』しているのだ」
AIスタートアップの強固な結束力
企業向けの生産性向上AIツールを手がけるグリーン(Glean)の創業者兼CEO、アルヴィンド・ジェイン(Arvind Jain)は、オフィス探しが面倒だったため、当初はチームメンバーをオフィスに呼び戻すことに「乗り気ではなかった」という。しかし、いざ蓋を開けてみると、全員が対面での勤務を望み、パンデミック直前の2019年に創業した当時の働き方に戻りたがっていた。
「当時は全員が狭い部屋に集まっていたため、どうやって在宅勤務すればいいのかまったく分からなかった」と、ジェインはロックダウン初期を振り返った。「以前はみんな隣り合って座り、何を作るかブレインストーミングしていた。だから在宅勤務をすることになって本当に大変だった」。
しかし、時間が経つにつれ、ジェイン自身はリモートワークを楽しめるようになり、家族と過ごす時間を大切にするようになった。それでも、チームは「また一緒にいたい」と心から望んでいたという。
「そこが(大企業との)違いだ。ここにはスタートアップのスピリットがある。わずか10人や15人という規模だからこそ、みんなで一緒にいたいんだ。互いを大切に思っていて、強い絆で結ばれている。一緒にゲームをすることもあったし、パンデミック前の親密なグループとしての素晴らしい思い出がたくさんあるから」と、ジェインは強調した。
ジェインによれば、グリーンがここ数年で急速に成長したため、広いオフィスに移転。現在は木曜日を在宅勤務の日に定めているという。
企業向けマルチエージェントAIシステムを開発するテックスタートアップ、リゾルブAI(Resolve AI)の創業者兼CEO、スピロス・ザンソス(Spiros Xanthos)も、自社には対面で仕事をするという「非常に強い文化」があり、誰かに出社を頼んだことは一度もないと語る。
「いまではかなり広いオフィスがあり、朝食・昼食・夕食を提供している。ほとんどの従業員が同僚と一緒にオフィスで昼食を食べ、そのまま残って夕食もオフィスで済ませている人も多い」とザンソスは語る。
2024年初頭の創業以来、会社にとっては従業員間の「結束・文化・友情」が極めて重要であり、チームの絆を深めるために、ニューヨーク在勤のメンバーを頻繁にサンフランシスコ・ベイエリアに招いてオフサイト合宿を行っているという。
「現時点で、メンバーは自ら進んでリモートワークを避けるようになっている」と、ザンソスは語った。
「特に、経験は浅いけれど過去にリモートワークを経験したことがある若手の多くは『以前とは雲泥の差だ』と言っている。いまの職場に信頼できる友人がたくさんいるという事実が、彼らにとって大きな変化だったようだ」
最先端の革新にはやはり「対面」が不可欠
都市研究の理論家でトロント大学教授のリチャード・フロリダ(Richard Florida)は、AIブームは過去のスタートアップブームとは異なる独自の特性を持っており、それが対面勤務の需要をより高めている可能性があると分析する。
AI業界でなぜ対面勤務が機能しやすいのか。その点について、フロリダは「イノベーターはエンドユーザーの近くにいなければならない。なぜなら、エンドユーザー自身がイノベーション・システムの一部を担っているからだ」と語る。
「AI企業では、そもそも技術自体が興味深く、自分たちで発明することもできる。しかし、本当の学びは、エンドユーザーとの対話や、顧客、クライアントとのやり取りを通じて得られるのだ」
ザンソスもまた、対面勤務が求められる理由は、突き詰めればイノベーション産業の性質に行き着くと語る。
「私たちは企業として非常に難解な問題に挑んでいる。その解決のためには、最前線で戦い続ける必要がある」とザンソスは指摘した。
「つまり、何度も何度も実験を重ね、失敗するかもしれないたくさんのことに挑戦し続けなければならないのだ」。
「そのためには、人々がボトムアップでイノベーションを起こせると感じられるような、心理的安全性が担保された信頼性の高い環境が不可欠になる。何をすべきかという指示を待たずとも動ける、コミュニケーションのスピードと十分な情報量が存在する。そういう場でなければならない」
だから、AIスタートアップの創業者に話す機会があっても、「RTOの進捗はどうか」などと尋ねないほうがいい。彼らはおそらく、全員をオフィスにどう詰め込むかを考えることで忙しすぎるからだ。




















