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- WEリーグ×クラシエ。女子サッカーと企業が共鳴した「誰もが主人公になれる」チームの作り方【クラシエカップ決勝】

どんなスポーツにもルールがある。それは単なる制約ではなく、フェアにプレーするための土台であり、一人ひとりの可能性を引き出すものでもある。
サッカーチームの中に、視覚障害のあるメンバーがいるとしよう。見える人も見えない人も、それぞれが力を発揮し、全員でサッカーを楽しむにはどんなルールが必要か——。
そんなスポーツ体験を通してDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)について考え、職場でのアクションにつなげる取り組みが始まっている。女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」とWEリーグシルバーパートナー、WEリーグカップ戦タイトルパートナーであるクラシエがコラボしたDE&I研修だ。
Mashing Up(マッシングアップ)×WEリーグによる連載、第3回目のテーマは「多様性の活かし方」。クラシエ×WEリーグによる研修の内容とそこから生まれた気づきを紹介する。
世界が注目するウォーキングフットボールを導入

今回初の試みとなるコラボDE&I研修で取り入れたのが、ウォーキングフットボールという競技だ。
発祥は、2011年にイングランドで行われた高齢者の健康増進を目的とした「歩くサッカー」。子どもからシニアまでさまざまな人が一緒に楽しむことができるスポーツとして、世界中で普及が進んでいる。
日本サッカー協会(JFA)は、サッカー未経験者や運動が苦手な人、障害がある人など誰もが安心してプレーを楽しめるよう、次のようなルールを推奨している。
- 全員歩いてプレー(速足禁止)
- 接触禁止(相手に触らない、ボールを取りに行かない)
- ヘディング禁止
- ボールの高さはゴールの高さまで(1.2m)
- オフサイドなし
通常のサッカーと比べてスピードはゆっくりだが、チームでうまくコミュニケーションをとってパスを回さなければ、試合はなかなか進まない。ルールを守りつつ戦略的に攻めることが勝負のカギを握る。
みんなで一緒に楽しむためのルールを考える
2025年7月にJFAサッカー文化創造拠点「blue-ing!」で実施された、クラシエ×WEリーグのコラボDE&I研修。
当日は、東京2025デフリンピックでも活躍したデフサッカー男子日本代表の林滉大選手と原口凌輔選手がゲストとして登場。社員19名が4チームに分かれ、ウォーキングフットボールにチャレンジした。

特別ルールとして設けられたのが、「視覚障害があるメンバーがプレーする時は相手チームも同じ人数がアイマスクをつけてプレーする」というもの。「みんなで楽しむためにはどうすればいいだろう」とその場で話し合い、ルールをつくり上げていった。

相手のためを思ってした配慮、でも本人は……
前半が終わり、ハーフタイムにはプレーして感じたことをチーム内で共有。
視覚障害のあるメンバーからは「指示を出す声があちこちから聞こえて分かりづらい」との声が。そこから「指示役は一人にする」という新たなルールが生まれた。
「ただルールを守ってゲームを楽しむだけでなく、必要なルールは自分たちで考えてつくっていけばいいんだと実感できました」
そう語るのは、研修に参加したクラシエD&C推進室の黄子綾さん。

「ハーフタイムで話し合ったことを後半に活かすことで、明らかにチームの動きが変わり、一体感が高まりました。
よかれと思ってしていた配慮が、実は相手を困らせていたり、それを本人も言い出しづらかったり。お互いに様子見していた前半から、本音の対話を経て、後半はゲームを楽しむ余裕が生まれ、『絶対に負けたくない!』と闘争心に火がつきました(笑)。
一人ひとりの違いを認識して、みんなで力を発揮しながら楽しくプレーするにはどうすればいいのか、全員で考えてアクションにつなげる貴重な経験になりました」(黄さん)
2021年に日本初の女子プロサッカーリーグとして開幕したWEリーグは、選手の行動規範として『みんなが主人公になるためにプレーする』というクレドを掲げている。

このクレドは、各クラブの代表選手が議論を重ねる中で生み出されたもの。制作過程では、「自分たちは何のために、誰のためにプレーするのか」「私たちのプレーでみんなに笑顔になってほしい」とさまざまな意見が交わされたという。
WEリーグ開幕から5年。これまで日本になかった「女子プロサッカー選手」という職業に就いたWEリーガーの活躍について、WEリーグ理事の村松邦子さんはこう話す。

「選手たちは『自分たちに一体何ができるのか』とはじめは悩み、戸惑う姿も見られました。それでも『みんなが主人公になるために』という想いを胸に努力を続け、強くしなやかに成長を続けています。WEリーグの歩みは、みんなが主人公になれる未来をつくるための挑戦のストーリーです」(村松さん)
スポーツを通して体感するDE&I
クラシエ×WEリーグのコラボDE&I研修では、ウォーキングフットボールの他にも、WEリーグによるトークセミナーとワークショップが実施された。
トークセミナーでは、サッカー日本女子代表として2011年FIFA女子ワールドカップドイツ大会優勝を経験し、現在はWEリーグ理事を務める海堀あゆみさんが登場。WEリーグの理念や女子サッカーを取り巻く環境を紹介した。
続いてWEリーグ理事の村松さんが「持続可能な社会とDE&I」「スポーツとDE&I」など、社会の現状と課題についてトークを展開。

一方、ワークショップでは「みんなが主人公になれる、を実現するために」をテーマにグループワークを実施。ウォーキングフットボールの振り返りが行われ「その場でルールを決められるのが楽しかった」「アイマスクを着けて指示の大切さに気づいた」などの意見があがった。
社内のDE&I推進状況や社内環境についての議論では「ダイバーシティの取り組みは5段階評価で3くらい」「忙しくて目の前のことしかできていない」など率直な意見が集まった。参加者全員でDE&Iをともに考え、体感する時間となった。

「動けない5秒間」が象徴するもの
ウォーキングフットボールの試合中、村松さんにとって印象的なシーンがあったという。
特別ルールとして、視覚に障害や制限があるメンバーの元へボールが転がっていった場合は、本人の状況把握のため他のメンバーは5秒間その場から動かないという決まりが設けられた。

これは当事者に配慮したルールだが、プレーを重ねるうちに「動けない5秒間」を使って次の作戦について話し合うなど、全員がルールを守りつつ、一人ひとりの特性を活かして結果を出そうというチームワークが見られたという。
「DE&Iは、個々が力を発揮できる環境をつくり、チームで成果を出すための取り組みです。お互いに遠慮し合っていては何も生まれません。相手を尊重し配慮しながら、どうすれば組織として最大の力を発揮できるのか、一緒に考えて行動することの大切さを身を持って感じてもらえたと思います」(村松さん)
研修後、クラシエ社内では意外な展開があったという。
研修に参加した手話を勉強中のメンバーを中心に社員が自主的に集まり、2025年11月に東京で開催されたデフリンピックを観戦。さらにその後、社内の部活動として「手話活」が発足し、入社1年目の聴覚障害のある社員も加わり、手話でのコミュニケーションを楽しんでいるという。
一方、黄さんも研修で得た気づきを活かしていると語る。

「部下との1on1では、今考えていることをフラットに話せる場をつくることをより意識するようになりました。
ウォーキングフットボールを通じて実感したのが対話の重要性です。試合と同じく、職場にも日々さまざまな動きがあり、状況は少しずつ変わっています。
人の気持ちも価値観もずっと同じではないからこそ、対話を継続して、その時々に必要なサポートにつなげたいと考えています」(黄さん)
夢中になって挑戦を楽しむ
コラボDE&I研修は、「WEリーグから学びたい」という黄さんの熱い思いから始まった。
クラシエは2023年7月にWEリーグとシルバーパートナー契約を締結。2024年よりWEリーグカップ戦タイトルパートナーとなり、WEリーグとともに多様な人が活躍する社会の実現を目指している。
WEリーグとの交流を重ねる中でウォーキングフットボールの存在を知った黄さんは、これまでにない体験型のDE&I研修がつくれないかと考えた。
「クラシエは『夢中になれる明日』を合言葉に、挑戦する企業風土の定着を目指して『CRAZY KRACIE』というビジョンを掲げています。WEリーグには女子サッカーやスポーツの域を超えた生きた学びがたくさんあります。それをぜひ当社で展開したいとご相談しました」(黄さん)
黄さんの熱意を受け、WEリーグはすぐに動き出した。WEリーグが主体となり、企業向けにDE&I研修を実施するのは初めてのことだった。
「WEリーグは歴史が浅く、挑戦の枠組みを広げている段階です。今回のコラボDE&I研修は私たちにとっても大きなチャレンジ。クラシエさんと一緒に、夢中になってつくり上げてきました」(村松さん)
何度もミーティングを重ね、アイデアを交換する日々。「クラシエさんはとにかくスピーディー。『こんなアイデアどうでしょう!』『これもやってみませんか』と黄さん自身が“CRAZY”を体現されていてWEリーグのメンバーもどんどん熱が高まっています」と村松さんは笑う。

DE&I推進のほか、挑戦する社内風土を目指す「CRAZY KRACIE」の社内浸透にも注力する黄さん。「課題はありますが、だからこそ挑戦しがいがあります」と意気込む。プライベートではバックパック一つで海外旅行を楽しむアクティブ派だ。
「社会に出るとジェンダーや年齢、これまでの経験を理由に、無意識に自分にバイアスをかけてしまうことがあると思います。でも、本当にやりたいこと、なりたい自分を実現するにはバイアスを外して、想像を広げて思いきって行動することが大切です。誰もが自分らしく生きられる、一人ひとりが強みを活かして輝ける、そんな未来をつくることができたらいいなと思います」(黄さん)
長くダイバーシティ推進に携わってきた村松さんは、「自分を知り、相手との違いを知ることがDE&Iの第一歩」と続ける。
「ウォーキングフットボールでも職場や地域のコミュニティでも、一人ひとりに違いがあり、大切にしていることがあります。それが何なのかは対話してみなければ分かりません。
そして、『これをやっていれば大丈夫』と思考停止せず、常に考え続けることが重要です。その積み重ねが職場を変え、組織を変え、社会を変える。そんな良い流れをつくっていけると信じています」(村松さん)

[WE リーグ]
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