





















【5月26日 CNS】「蘇超」は、いつも人びとの予想を超えてくる。
昨年、江蘇省(Jiangsu)の草の根サッカー大会として大きな話題を呼んだ「蘇超」が、2026シーズンも予定通り開幕した。今年も、どこかまとまりがなく、それでいて独特の味わいがある「江蘇らしさ」は健在だ。
開幕戦は江蘇省常州市(Changzhou)で行われ、スタンドは満員となった。ネット上ではコメントやミームが飛び交い、「試合第一、友情は十四番目」といったジョークから、各都市チームのエンブレムの「間違い探し」まで大盛り上がりを見せた。蘇超はもはや単なるサッカーではなく、江蘇省全体を巻き込んだ注目度争奪戦となっている。
その中で、真っ先に新たな一手を打ち出したのが宿遷市(Suqian)だった。宿遷市の文化観光部門はこのほど、ドラマ『楚漢伝奇』で「西楚の覇王」項羽(Xiang Yu)を演じた俳優の何潤東(ピーター・ホー、Peter Ho)が、4月18日に行われる宿遷ホーム戦に登場すると発表した。
14年前のドラマの役柄がネット上で再び話題となり、宿遷市はその声に素早く応えた。ネット上で「ぜひ呼んでほしい」との声が上がってから正式発表まで、わずか1週間足らず。何潤東の「覇王が君たちを後押しする」という一言で、宿遷は一気にトレンド入りした。一地方の草の根サッカー大会に、なぜ何潤東まで呼べたのか。その背景には、江蘇省で最も新しい都市・宿遷の野心が隠されている。
「覇王」IPは、決して安くない観光資源カードだ。まず考えるべきは、何潤東は簡単に呼べる人物ではないという点だ。表面的には、これはネット上の反応を素早く取り入れた巧みなPR戦略に見える。ネットユーザーがアイデアを出し、行政がすぐに応じた形だ。しかし詳しく見ると、何潤東を招くには、地方の文化観光部門だけの力では難しかった可能性が高い。実際、本人のコメントにもそのヒントがある。
何潤東は「宿遷市と京東(JD.com)からの招待を受けた」と語っている。つまり今回、宿遷が何潤東を通じて「覇王」カードを打ち出した背景には、地方政府と企業による深い連携があることが分かる。
注目度という点で見れば、最大の勝者は間違いなく地元観光だ。宿遷市の項王故里は、中国でも重要な西楚文化のランドマークであり、千年にわたる楚文化の流れを受け継ぐ、宿遷を象徴する文化資源だ。今回、宿遷が掲げたテーマは「覇王帰還」。単に有名俳優を招くイベントではなく、歴史文化IPと地元スポーツ大会を深く結びつける試みなのである。
すでに多くのネットユーザーは、甲冑姿の何潤東が宿遷オリンピックスポーツセンターに登場し、14年前にスクリーンで演じた項羽と宿遷チームの歴史が重なり合うことで、この街の英雄の記憶が呼び覚まされる光景を想像していた。
では、何潤東が宿遷のホーム戦に現れることは、宿遷という都市にとってどんな意味を持つのか。
第一に、街の知名度を高め、宿遷の歴史や文化を分かりやすく伝えるきっかけになった。「バラバラな江蘇」と言われる中で、宿遷は省管轄の市でありながら、これまでは名酒「洋河大曲」や、劉強東(Liu Qiangdong)氏に代表される京東のECビジネスのイメージが強かった。だが今回の「覇王帰還」によって、宿遷には「項羽ゆかりの地」という分かりやすい物語が加わり、街の歴史的な魅力をより印象づけることになった。
第二に、スポーツイベント経済が本格的に「文化・観光・スポーツ・商業融合」の段階へ入ったことを意味する。宿遷にとって、この大規模な異業種連携は、単に歓声を集めるためではない。「蘇超」の大きな注目度を生かし、宿遷は交通、飲食、観光、消費など多分野にまたがる優遇策も同時に打ち出した。これは、試合をするだけでは内需拡大にはつながらないという現実を示している。観戦、グルメ、旅行、文化体験を深く結びつけてこそ、スポーツの注目度を都市経済の成長へと変えられるのだ。
第三に、江蘇北部の都市が脇役に甘んじることなく、追い上げを図っていることを意味する。この「蘇超版・スター対決」は、表向きは13都市による注目争いだが、実際には江蘇省内の各地域都市による健全な競争でもある。宿遷が大きな仕掛けを打ち出しただけでなく、ネット上では、項羽に関連する歴史上の人物になぞらえ、徐州や淮安でもゆかりの人物を演じた俳優を招いてはどうかという声まで上がっている。省内には強豪都市がひしめく中、宿遷は小さな力で大きな効果を生む文化的アイデアによって、激しい都市間競争では文化への自信と柔軟な企画力も欠かせないソフトパワーであることを示した。
4月18日、何潤東は宿遷オリンピックスポーツセンターに登場した。相手は南京チームだった。「西楚の覇王」と省都が対決するという構図だけでも、十分にドラマ性があった。サッカーの試合結果はともかく、都市PRという舞台では、宿遷はすでに大きな1点を奪ったと言える。ネット上で「十三妹(江蘇の十三番目の妹)」とからかわれるこの都市も、流れをつかみ、人びとの声に耳を傾け、柔軟に動くことができれば、大きなチャンスを前に、自分たちの存在感をしっかり示せるのだ。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News
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