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『豊臣兄弟!』“半兵衛”菅田将暉が体現した“青い炎” 小一郎...
渡辺彰浩 Follow on SNSFollow on SNS · 2026-06-15 · via リアルサウンド

 半兵衛(菅田将暉)は秀吉(池松壮亮)、小一郎(仲野太賀)たち多くの仲間に見守られながら、ゆっくりと目を閉じる。満開の桜、花吹雪がひらひらと舞う美しい幕引きだった。

 NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』第23回「さらば半兵衛」では、そのタイトルが示す通りに、半兵衛が息を引き取る。戦に生きた男の最後の戦い――第23回で描かれるのは、「半兵衛 VS 小一郎」というまさかの構図だ。

 官兵衛(倉悠貴)の嫡男・松寿丸(森優理斗)を始末せよという信長(小栗旬)の命。それは、荒木村重(トータス松本)の謀反に対して説得に向かった官兵衛にもまた裏切りの嫌疑がかかったことへの判断だった。半兵衛は小一郎らに病で亡くなった子を身代わりに松寿丸を救うという策を出す。しかし、半兵衛は信長の責めから羽柴家を守るため、本当に松寿丸を手にかけるつもりではないか、と小一郎は疑念を抱いていた。

 松寿丸は長浜城にて寧々(浜辺美波)が預かっており、慶(吉岡里帆)やなか(坂井真紀)たちも一緒になって松寿丸を匿う。隠れ部屋に抜け道、案山子、いがぐり……といったように半兵衛を阻む様々な罠が仕掛けられている長浜城は、まるで“からくり屋敷”。半兵衛の“読みを読む”、小一郎の嫡男・与一郎(高木波瑠)の力も借りた小一郎なりの替え玉作戦など、武力ではなく、知略による頭脳戦が展開される。だが、半兵衛の家臣が松寿丸を捕らえ、半兵衛は「私の勝ちでござりまする」と小一郎に宣言した。

 そこで突如、慶が産気づく。半兵衛と小一郎は一旦の休戦。慶は元気な女の子を出産した。小一郎は我が子を抱き、離れた場所で見ていた半兵衛にも抱いてほしいと声をかける。「子は多くの者に抱かれると幸せになる」と慶。戸惑いながらも半兵衛は赤子を抱き、やがて自分でも理解が追いつかぬ感情、涙が込み上げてくる。命の誕生を目の当たりにし、人を慈しむことを知った半兵衛に、松寿丸を殺めることはできるはずもなかった。「私の負けでございます」と半兵衛は当初の予定通り、替え玉作戦の実行を決意する。

 松寿丸に見立てた子の首を信長に差し出す半兵衛。「今まで戦った中で最も手強き相手でござった。そして最も面白き戦でござりました」と半兵衛は小一郎との戦を笑顔で振り返る。死期を悟っている半兵衛の別れの挨拶に、信長は「大義であった」と参謀、軍師としての功績を讃える。この第23回では、菅田将暉と縁の深い浜辺美波、そして小栗旬と対峙する共演シーンも実現している。特に大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)、映画『銀魂』シリーズなど、多くの作品で共演している小栗からの「大義であった」というセリフは、役を超えた菅田への労いの言葉に思えてならない。

 三木城を攻める秀吉の陣にいる病床の半兵衛は、「私も、戦場に出とうござる……私が風向きを変えてみせまする」とつぶやいた。すると、宇喜多直家(緋田康人)が織田に寝返ったことで、毛利軍は敗走。半兵衛の調略により、戦の風向きは変わったのだ。

 担架に乗った半兵衛は薄れゆく意識の中で「死にとうないのう……お前らのせいじゃぞ」と小一郎たちを見つめていた。静かにその目を閉じ、彼のトレードマークでもある扇子が地面に落ちる。

 かつて庵に閉じこもり、ひとりぼっちだった半兵衛を外に連れ出したのが小一郎と秀吉だった。短い生涯ではあったが、彼は兄弟と出会い、幸せで楽しい青春を謳歌することができたのだ。半兵衛が本格登場したのは、第9回「竹中半兵衛という男」。そこから菅田による半兵衛としての変化、芝居のグラデーションは見事だった。オタク気質なユーモラスさと病弱ではあるが天才的な軍略家としての闘志、野心を内に秘めている。それはまるで“青い炎”のように。この第23回では生まれたばかりの小さな命を前に咽び泣く姿を、そして戦場で命を賭す美しい死に際を演じ切った。半兵衛の吹かせた風は小一郎や秀吉、そして官兵衛へと受け継がれていく。

■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
公式X(旧Twitter):@nhk_toyotomi
公式Instagram:@nhk_toyotomi

渡辺彰浩

1988年生まれ。福島県福島市出身。リアルサウンド編集部を経て独立。荒木飛呂彦、藤井健太郎、乃木坂46など多岐にわたるインタビューを担当。映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、福島市開催の音楽フェス『LIVE AZUMA』ではオフィシャルライターを務める。

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