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『GIFT』山口智子はなぜ“浮いて”見えるのか 賛否を巻き込み...
折田侑駿 Follow on SNS · 2026-05-31 · via リアルサウンド

 “常人には理解しがたいユニークな感性をもつアート作家”ーー。

 これは、放送中のドラマ『GIFT』(TBS系)で山口智子が演じる坂本広江という登場人物の設定である。“車いすラグビー”に打ち込む者たちの姿を描く本作には個性的なキャラクターが数多く登場しているが、その中でもとりわけ広江は目立つ存在で、ときには観ていてびっくりしてしまうことがあるほど。それくらい、彼女はエキセントリックな人物として映る。このドラマにおいて、彼女はどのような役割を担っているのか。

 本作は、注目のパラスポーツである“車いすラグビー”に材を取ったドラマだ。物語の主人公は天才的な宇宙物理学者・伍鉄文人(堤真一)であり、彼と車いすラグビーチーム「ブレイズブルズ」の奮闘を、「日曜劇場」らしい骨太な展開の連続で描き出してきた。彼らが目指す“日本一”の夢も、少しずつ現実味を帯びてきたのではないだろうか。そんな物語に途中から絡んできたのが、山口が演じる広江である。

 伍鉄が率いる物語と広江の接点が生まれたのは、ごく最近のこと。これまでの彼女は車いすラグビーにまつわるメインストーリーとは別に、サイドストーリーを展開させ続けてきた。ときにはまったく無関係の人物にも思えたものだが、山口が演じるキャラクターとあって、さすがにそれはないはずだと多くの視聴者が確信していたはず。伍鉄と広江が元夫婦だと明かされたとき、「ブレイズブルズ」の誰もが大いに驚いた。しかし、視聴者は誰も驚かなかったのではないだろうか。広江は最初から、只者ではなかったのだから。

 彼女のことを“エキセントリック”だと先述したが、これには多くの視聴者が賛同してくださるに違いない。というより、このエキセントリックさ加減はかなり度を超えている。視聴者の中にはネガティブな反応も多いのだが、これは生まれて当然の、とても自然なものだと思う。

 自分たちの日常を思い返してみればいい。場の空気を乱すような人物というのは、普通は煙たがられてしまうものだ。広江が登場すると、「ブレイズブルズ」の面々が作り上げた空気は大きく乱れる。それは『GIFT』という作品が持つ空気をかき乱しているともいえるだろう。これに対して視聴者が眉をひそめるというのは、ごくごく自然な反応なのである。

 しかしこれは、ドラマの製作陣の狙いどおりに違いない。天才的な宇宙物理学者と車いすラグビーチームの組み合わせは意外だが、しだいにひとつのチームとして、一致団結するようになった。本作のヒロインにあたる霧山人香(有村架純)などの周辺人物もそうだ。人々が一丸となる試合のシーンは、まさに骨太な展開の連続。手に汗握るほど激しい。だが、それ以外の会話がメインとなるシーンは、ゲームの描写とは対照的で静的なものだ。これはこれで作品のメリハリになるとも思うのだが、ここに広江が絡むことで、何でもない会話のシーンにもダイナミズムが生まれる。自由奔放な性質を持つ、彼女だけに許されているポジションだ。

 この役どころを担うことができる俳優は、山口以外にいないのではないか。思い返せば山口はいつも、個性の際立つ自由奔放な女性を演じてきた。彼女の代表作にして平成の名作ドラマのひとつである『ロングバケーション』(1996年/フジテレビ系)の葉山南がそうだし、朝ドラ『なつぞら』(2019年前期/NHK総合)でヒロインの恩人となる岸川亜矢美もそう。『監察医 朝顔』(2019年/フジテレビ系)で主人公と師弟関係にある夏目茶子もそうである。これらを踏まえると、山口が得意とする役どころに配されている『GIFT』には、大いに狙いを感じるというものだろう。

 広江のような振り切れたキャラクターというのは、ほかの登場人物たちの可能性を拡張することにもなる。『GIFT』という作品全体のテンション感やリアリティの上限を、広江の存在が押し広げるのだ。彼女の存在があれば、ある程度は何が起きても視聴者は許容できるというわけである。こんなポジションを担うことのできる俳優は、そう多くはない。ネガティブな反応が生まれているのも、このドラマの注目度の高さと、山口智子という俳優の大きさの証明になっているといえるのではないだろうか。

■放送情報
日曜劇場『GIFT』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堤真一、山田裕貴、有村架純、本田響矢、細田善彦、細田佳央太、円井わん、越山敬達、八村倫太郎、やす(ずん)、水間ロン、冨手麻妙、ノボせもんなべ、杢代和人、宮﨑優、生越千晴、町田悠宇、澤井一希、中山脩悟、田口浩正、西尾まり、真飛聖、麻生祐未、菅原大吉、吉瀬美智子、玉森裕太、安田顕、山口智子
脚本:金沢知樹
企画・演出:平野俊一
演出:加藤尚樹、伊藤弘晃
プロデューサー:宮﨑真佐子、内川祐紀
協力プロデューサー:中澤美波
監修・協力:一般社団法人日本車いすラグビー連盟
製作著作:TBS
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/GIFT_tbs/
公式X(旧Twitter):@gift_tbs
公式Instagram:gift_tbs
公式TikTok:@gift_tbs

折田侑駿

1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、文学、服飾、酒場など。敬愛する映画監督は増村保造。

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